「ほぼほぼ完璧な試合でしたが……」 マイクを持つサッカー元北朝鮮代表の鄭大世氏は、IAIスタジアム日本平の記者会見室で秋…
「ほぼほぼ完璧な試合でしたが……」
マイクを持つサッカー元北朝鮮代表の鄭大世氏は、IAIスタジアム日本平の記者会見室で秋葉忠宏監督に最後の質問を投げかけた。J1昇格を懸けて挑んだJ2リーグ第35節において、J2清水エスパルスが先制しながら逆転負けを喫した直後の監督会見でのことだ
鄭大世氏が聞いたのは、次の試合に向けての1週間で何を落とし込むのかというもの。秋葉監督は回答に間を置かない。「最後、どう点を取るかだと思いますから、まず単純にボックス周りの崩しと、ボックス内からいかにシュート数を増やせるかどうか」と答え始める。
それだけでは終わらず、「80%、90%がボックス内からのシュートになると思いますから、ワンタッチのゴールを含めて、ボックス内からいかにその回数を増やせるか、再現性高く何度もその崩しができるかだと思います。まずはアタックのところでどう点を取るか、また1週間、突き詰めながら、その中でやっぱり2失点してしまいましたので、もう一度90分間(守備も)やり続ける。一瞬の隙を見せないようなまたそういう守備も含めて準備していきたい」と一気に言葉を放出した。その言葉は努めて明るく、自らを、そしてチームを勇気づけるかのようだった。
■秋葉監督「やはりフットボールは甘くない」
清水にとっては悪夢のような展開だった。前半からチャンスを多く作りながら前半をスコアレスで折り返す。そして後半30分、待望の先制点をゲット。しかも、それを決めたのが下部組織出身のキャプテン・北川航也だったのだから、この時点ではサッカーの神様もできすぎたシナリオを用意したかに思われた。
しかし、結末は違ったものとなった。後半35分に同点弾を浴びると、同42分には勝敗をひっくり返すゴールを喫する。勝てば他会場の結果にかかわらず昇格という試合で、終盤での逆転負けに終わったのだ。秋葉忠宏監督が「やはりフットボールは甘くないなと。一筋縄ではいかないなという、簡単に昇格はさせてもらえないんだなっていうのを痛感するゲームでした」と話すような展開となった。
当然、選手の受け止め方にもそれは現れる。試合を終えた乾貴士に率直な思いを聞けば、「情けないですね。はい。その一言です」と悔しさを表情に見せる。
その乾は試合後の場内1周でチームの最後尾を歩いており、その表情と視線の向かう先からは、さまざまな思いが去来していることが感じられた。
どんなことを思っていたのか――。
そう尋ねれば、「うーん、何してるんやろなっていう。去年と全く変わってないなっていう感じですかね」と言葉にする。
乾が話す“去年”とは、2023年10月28日のロアッソ熊本戦のこと。第38節の静岡ダービーを制した清水は順位を2位に上げており、その勢いのままにJ1昇格を手にすると思われた。事実、同39節でいわきに7-1で圧勝していたが、同40節の熊本戦で1-3の敗戦。しかも、先制しながらその後、3失点して逆転負けしたのである。その影響もあって、最終節終了時点での順位は4位。目前としていたJ1復帰を最低でも1年、先延ばしせざるを得なかった。
■乾貴士がチームに呼びかけるもの
乾が話す“去年と変わっていない”とは何を指すのか。さらに聞けば、「チームとしても、個人としてもだと思います」と話し、「同じ失敗をまたこうやって繰り返しているので。自分自身もそうですし、こういう試合で結果も出せないですし、本当に、さっきも言いましたけど、もう情けないですね。はい」と肩を落とす。
しかし、「だからこそ、今、チームメイトに呼びかけたいことは何か」と尋ねれば、一気に言葉に力を入れてこう語る。
「いや、もう死ぬ気でやろうってことだけですよね。もうそこで、絶対勝って。まず昇格を決めることだけですかね」
去年の悔しさはいまだ癒えない。昨年終盤戦での苦しみを知っているからこそ、それを繰り返さないために、百戦錬磨の背番号33が気持ちの強さを訴えようとしている。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)