中後雅喜監督、羽田憲司・本山雅志コーチが加わった新体制で一歩を踏み出した鹿島アントラーズ。だが、この体制はあくまで暫定。それは19日のアビスパ福岡戦後に中田浩二新FDが明言したことだ。「僕も10年近く、チームに関わっていろいろ見てますけど…

 中後雅喜監督、羽田憲司・本山雅志コーチが加わった新体制で一歩を踏み出した鹿島アントラーズ。だが、この体制はあくまで暫定。それは19日のアビスパ福岡戦後に中田浩二新FDが明言したことだ。

「僕も10年近く、チームに関わっていろいろ見てますけど、クラブとしてどう戦っていくか、どういうスタイルでやるのかというのがないなと感じている。それは中長期的にやっていかないといけない。それが言語化できれば、見合った監督や選手を補強すればいい。『アントラーズはこう戦う』『こういうサッカーをやっていく』というのがあれば、一貫したサッカーができる。まずはそれを作ることが大事だと思います」と彼は語ったのだ。
 上記スタッフのうち、中後監督だけは来季、再びコーチに就任するというが、羽田コーチは去就未定で、本山コーチは従来のアカデミースカウトに戻るという。そのうえで、新たな監督を招聘し、スタッフも増強することになる見通しだ。
 新聞報道では、川崎フロンターレ鬼木達監督、あるいはパリ五輪の日本代表を指揮した大岩剛監督らの名前が挙がっているが、それについて中田FDは「言えることはない」と言葉を濁した。彼らのいずれかが指揮官になるのか、それとも全く別の人材を招聘することになるのかはまだ分からないが、重要なのは今、中後新体制で進めている攻守の方向性を生かしたサッカーを進めていくこと。そうしなければ、この3か月間は無意味なものになってしまうからだ。

■「クラブとしてどういうサッカーを今後、展開していくか」

「このクラブは勝たなきゃいけない。ただ、勝つために目先のことだけやってればいいかと言われれば違う。そこを中長期的な視点でやらないといけないと思います。勝つための最善はもちろん尽くしますけど、多少の我慢も必要になる。我慢できるか、その先にね、何が見えるかっていうのを考えながら、まずは自分たちがどういうスタイルでやっていくのかをまず示さないといけないですね。
 自分の中ではそのイメージは多少ありますけど。僕だけが決めるものでもない。クラブとしてどういうサッカーを今後、展開していくか。その先にタイトルがあると思う。そのために、いろんな人とコミュニケーションを取らないといけない。経営陣とも話さないといけないし、サポーターの意見も必要かもしれない。僕らがやってた時と現代のサッカーは違うわけだし、それも加味しないといけないと思っています」
 中田FDは神妙な面持ちでこう語っていたが、目指すべきスタイルを明示するという作業はそう簡単なことではない。鹿島のように過去5年間で5人も監督が代わっているクラブはなおさらだ。
 2022年夏~2023年にかけて指揮を執った岩政大樹元監督も「自分たちのスタイルの重要性」を強調していたが、無冠に終わったことを重く見られ、結果的に解任されている。そういうことを繰り返さないように、クラブの体質改善を含めて、さまざまな角度から再出発をしなければならないだろう。
 中田FDは10月5日のアルビレックス新潟戦の後、小泉文明社長から直々にこの重責を託されたという。彼ほどのレジェンドであっても、仮に結果が出なければ凄まじい批判にさらされる。それが鹿島のFDという仕事だ。

■示されるべき“中田ビジョン”

 それを覚悟で彼は大勝負に出た。ならば、思い切ってリーダーシップを示せばいい。まだ強化担当としての経験値が少なく、人脈やネットワークも他クラブのGMに比べると乏しいかもしれないが、鈴木満アドバイザーらの助けを借りながら、迅速にアクションを起こすべきだ。
 さしあたって、鹿島が目指すべき方向性をいち早く定め、クラブ内外に共有することが最優先課題。引退後、長くマネージメント畑を歩んできた中田FDにはそれができるはず。「中田ビジョン」が我々に示される日が早く訪れてほしいものである。
(取材・文/元川悦子)

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