サッカーの試合は、雨が降ろうとも行われる。だが、それにも「程度」というものがある。蹴球放浪家・後藤健生も大概の厳しい気…

 サッカーの試合は、雨が降ろうとも行われる。だが、それにも「程度」というものがある。蹴球放浪家・後藤健生も大概の厳しい気象条件では取材を中止しないが、驚くような環境に出会うことがある。あるときは南米で、あるときはアフリカで…。

■トルシエ・ジャパンが「日本初」快挙

 もう一つ、ホテルの窓からの光景で忘れられないのが、ナイジェリア最大の都市ラゴスでの雷です。

 1999年にワールドユース選手権(現U-20ワールドカップ)観戦のためにナイジェリアに行きました。フィリップ・トルシエ率いるU-20日本代表FIFA主催の世界大会で初めて決勝に進出した記念すべき大会です。小野伸二稲本潤一、高原直泰、遠藤保仁などがいたチームでした。決勝では、チャビ・エルナンデスのいたスペインに0対4で敗れてしまいましたが、ラウンド16でポルトガル、準々決勝でメキシコ、準決勝ではウルグアイを破っての堂々たる決勝進出でした。

■ゴゴォーン、ゴゴォーンという「雷鳴」

 その大会の開幕戦を見るために、ラゴスに到着しました。僕は、海岸近くのフェデラル・ホテルという大きなホテルに宿泊していました。なにしろ、治安が悪いという評判のナイジェリアですから、緊張のしっぱなしです。

 しかも、日本人記者団は日本の初戦が行われる北部のカノに入っているので、ラゴスには日本人は誰もいません……。

 そんな心細い思いをしながら、フェデラル・ホテルのベランダから、僕は景色を見ていました。ラゴスの「ラゴ」とは、スペイン語で湖のことです。つまり、大西洋とラゴス市街の間に海とつながった湖(潟湖)がいくつか点在しているのです。英語で言えばラグーンですね。

 そのラグーンに地元の漁師たちの船が行き来していました。岸辺にはヤシの木が連なり、とてものどかな光景でした。

 しかし、のどかさは長くは続きませんでした。雲が湧き出したと思ったら、たちまち空は黒い雲で覆われてしまいました。そして、ゴゴォーン、ゴゴォーンという雷鳴が轟きわたり、稲光が見えてきました。

■ラゴスと同じ「雷光」が鹿島で走った

 稲光というのは、落雷とともに雲から地表に向かって走るものと思っていました(実際は、上から下、下から上へと何往復もしているらしいのですが、肉眼ではそれは見えません)。

 いずれにしても、稲光(稲妻)というのは上下方向に現われるものと思っていました。

 ところが、ラゴスでは、稲光は水平方向に走っているのです。こちらの雲と、隣の雲の間を稲妻が行ったり来たり。そのうち、あちこちの雲を稲光が結んで、網状になってしまいました。

 これを見て、僕は「やはり、雷にしても、アフリカ大陸の雷はすごいものだなぁ」と感心していたのです。

 しかし、その後、日本でも網状の雷を見かけました。

 カシマ・サッカースタジアムで鹿島アントラーズの試合を見ていたら、雷がやってきて試合は中断(中止)になってしまいました。コンコースに出て、空を見上げたら、あのラゴスでの光景さながらに雲と雲を結んで網状に稲光が行ったり来たりしていたのです。ラゴスほどの密度ではありませんでしたが……。

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