サッカーの試合は、雨が降ろうとも行われる。だが、それにも「程度」というものがある。蹴球放浪家・後藤健生も大概の厳しい気…
サッカーの試合は、雨が降ろうとも行われる。だが、それにも「程度」というものがある。蹴球放浪家・後藤健生も大概の厳しい気象条件では取材を中止しないが、驚くような環境に出会うことがある。あるときは南米で、あるときはアフリカで…。
■10月の中旬になっても「まだ夏日」
地球温暖化のせいか、今年はいつまでも暑い日が続いています。さすがに、朝晩は涼しくなったものの、10月中旬になってもまだ夏日が続いているんですから……。それが、どこまで人間の活動の影響なのかは別として、異常なことは明らかです。
サッカージャーナリストというのは、農業や漁業に携わる人たちと同じくらい(?)天気や気候について関心が高いものです。別に、雨が降ったらどっちのチームが有利か、選手のコンディションがどうこう、とかという意味ではありません。
なにしろ、1月に高校選手権のときには気温が10度もない中で、2試合、つまり4時間近く座っているわけです。
あるいは観戦中に雨が降ってきたら、ずぶ濡れになってしまうかもしれません。イングランドのサッカー場などは、雨が降り込まないようにうまくできていますが、日本のスタジアムの屋根は飾りのようなものなので、風が吹けば役に立たなくなってしまいます。
はたまた夏場には、スタンドに屋根がついていない場合は、炎天下で日焼けして真っ赤になってしまうこともあります……。
天気に敏感になるのは当然でしょう。
■退任発表の鬼木達監督が「後半」も?
そもそも、異常気象による雷雨や豪雨のために中止になったり、キックオフ時間が変更になったり、試合途中で中断になったりといった試合が多くなっています。今年の夏には、僕がスタジアムに見に行った試合だけでも、そうした影響を受けた試合が15試合ほどありました。
そういえば、11月にはハーフタイムで中断になった浦和レッズ対川崎フロンターレの試合の後半戦が行われます。こういう中断試合は、メンバーなどは中断前のままで再開されることになっているのですが、浦和のほうは監督が交代してしまっています。それとも、中断前のヘグモ監督を連れてくるのでしょうかね? 川崎のほうも、鬼木達監督の退任が発表されましたが……。
異常気象、地球温暖化は今後も続くわけですから、夏場の試合ではこうした影響が増えることはあっても、なくなることはないのかもしれません。8月はシーズンオフにすべきでしょう。あるいは、雷雨になっても安全に試合ができるような設備を開発できないものでしょうか……。
■灼熱のUAE、氷点下のフランス、嵐の…
僕は世界中でいろいろな気象条件を経験してきました。いちばん暑かったのは、1997年のフランス・ワールドカップ・アジア予選のアラブ首長国連邦(UAE)対日本の試合でしょうか。場所はアブダビです。寒かったのは、フランス北部のボーヴェーで見たリーグ戦。気温は氷点下に下がっていました。
試合中ではありませんでしたが、南米パラグアイの首都アスンシオンで、大平原のかなたから雨雲(嵐)が近づいてくる光景は忘れられません。
当時は、アスンシオンに行くと、パラグアイ河の近くの「アルメレ」というホテルによく泊まっていました。ある日の夕方、そのアルメレの部屋の窓からパラグアイ河の向こう側に広がる森のほうを見ていると、周囲は晴れているのに、遠くに雲が一つあり、その雲の下だけが暗くなっているのが見えました。雲の下は強い雨が降っているようなのです。
どうやら、その雲はアスンシオン市街に向かってくるようです。
次第にホテルの周辺でも風が強まってきました。ゴォーッという音も聞こえてきました。腹に響くような極低音。旋風です。そして、ついに強い雨が叩きつけるように、ザァーッと降ってきました。しばらく、そんな荒れた天気が続いた後、雨の塊はどこかに去って行ったようで、すぐに周囲は元の静けさに戻りました。
その後、夜中にも同じようにゴォーッという音が遠くから聞えてきたことがありました。
夜中でしたが、やはり雨の塊が近づいてきているんだなとよく分かりました。
雲があって、その下だけに雨が降っている光景は日本でも見かけますが、アスンシオンは大平原の中の街だけあって、その規模が大きく、また、周囲に山もなければ、大きな建物もないので、遠くから雲の動きがよく見えるというわけです。