今季終盤を迎えて、J1残留争いも熾烈を極めている。数字的にはまだまだ多くのチームにJ2降格の可能性がある。厳しい戦いのなかで勝ち点を積み重ね、J1に生き残るのはどのチームなのか。逆に、J2降格となるのはどのチームなのか。Jリーグに精通する識…
今季終盤を迎えて、J1残留争いも熾烈を極めている。数字的にはまだまだ多くのチームにJ2降格の可能性がある。厳しい戦いのなかで勝ち点を積み重ね、J1に生き残るのはどのチームなのか。逆に、J2降格となるのはどのチームなのか。Jリーグに精通する識者3人に予想してもらった――。
18位のジュビロ磐田はこのままJ2に降格してしまうのか...
photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images
あくまで現状の成績を踏まえれば
鳥栖、札幌、磐田以外が降格なら「波乱」
小宮良之(スポーツライター)
降格候補:サガン鳥栖、北海道コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田
残り5節、数字上、J2降格がこの3チーム以外になることは「波乱」と言える。サガン鳥栖は最低でも4勝以上、北海道コンサドーレ札幌も3勝以上と、負けは許されない。それだけの成績を叩き出しても、あくまで他力である。18位のジュビロ磐田は6試合を残し、15位~17位とは勝ち点6差だけに逆転はあり得るが、逆転を予想するほどの根拠もない。
鳥栖、札幌、磐田が降格すべきで、他の京都サンガF.C.、柏レイソル、湘南ベルマーレが降格すべきではない、というわけではなく、あくまで現状を踏まえた話だ。
鳥栖は監督交代後、3分け5敗と一度も勝っていない。「クラブマネジメントでミスをした」と言わざるを得ないだろう。降格圏の淵では戦っていたが、主力選手が次々に有力チームに引き抜かれていったことを思えば、前任の川井健太監督の功績は動かしがたかった。彼らの今シーズンに関しては、改めて書くことになるだろう。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いる札幌は、否定されるような戦いをしていない。サッカーをする、という点で、全力を尽くしてきた。選手たちが明らかにうまくなっているし、その点では優勝を争うFC町田ゼルビアよりもスペクタクルだった。そのボールゲームを勝利に還元する効率があまりに低く、成績は低迷しているが......。
磐田は、昇格クラブとしては健闘しているが、サッカーの質は川井監督が率いた鳥栖、ペトロヴィッチ監督の札幌と比べれば、"順当な順位"と言える。昨シーズンも勝負強さは感じたが、ボールを持った時のプレーの質は平凡だった。今シーズンも前半戦はFWジャーメイン良の奮戦はあったが......。
もっとも、残留戦は最終節まで持ち込めば"どんなことでも起こり得る"。最後まで目が離せない。
鳥栖と札幌のJ2降格は不可避
残り1枠は得点力のないチームが沈む
原山裕平(サッカーライター)
降格候補:サガン鳥栖、北海道コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田
現実的に考えれば、残り5節で残留ラインとなる17位の京都サンガF.C.に12ポイント差をつけられるサガン鳥栖と、9ポイント差の北海道コンサドーレ札幌の降格は不可避だろう。しかも、京都は消化試合数がひとつ少ない状況だ。2012年の昇格以来、J1の舞台に留まり続けてきた鳥栖だが、次節にもクラブ初のJ2降格が決定する可能性がある。
では、残りひとつの降格クラブはどこになるのか。その危険性があるのは、18位のジュビロ磐田(勝ち点32)、17位の京都(同38)、16位の柏レイソル(同38)、15位の湘南ベルマーレ(同38)の4チーム。現状では磐田が苦しい立場にあるが、京都、柏と同じく消化試合数がひとつ少ないため、逆転残留の可能性は残されていると考える。
残留争いでポイントになるのは、やはり得点力だ。守りを固め、慎重な戦いを見せても、得点を奪えなければ当然ながら勝利は手にできない。1ポイントを3ポイントにできるかどうかが肝である以上、得点力のないチームが沈む可能性は高いだろう。実際に昨季降格した横浜FCはリーグ最少得点で、17位の柏はワースト2位だった。
磐田、京都、柏、湘南の4チームのなかで、現時点で得点の数が最も少ないのは35点の柏で、続いて37点の磐田となる。京都は今夏に加入し、10戦10発のゴールを量産するラファエル・エリアスの存在が心強く、湘南は得点源のルキアンの負傷離脱は痛手ながら、成長目覚ましい鈴木章斗と福田翔生の若き2トップの勢いが備わる。
柏にも細谷真大の存在があるが、今季はここまでわずか4得点と結果を出せておらず、磐田にはシーズン前半にブレイクしたジャーメイン良がいるものの、終盤に来て勢いが止まっている。両チームともに得点力不足に悩まされるなか、勝負どころで勝ちきれない試合が出てくる可能性がありそうだ。
最終的には柏と磐田の争いになると予想するが、現在の順位を踏まえ、磐田が一歩及ばないか。
大勢が決した感がある残留争い
唯一磐田はわずかな可能性を残しているが...
浅田真樹(スポーツライター)
降格候補:サガン鳥栖、北海道コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田
シーズンが終わりに近づくにつれ、むしろ混迷の度合いを深めるのが残留争いの恒例だが、あと5節を残すだけとなった今季は、大勢が決した感がある。
最下位のサガン鳥栖と19位の北海道コンサドーレ札幌は、もはやJ2降格は免れがたい。鳥栖、札幌と17位の京都サンガF.C.との勝ち点差は、それぞれ12と9。残り5試合での逆転残留は絶望的な状況にある。
わずかに残留の可能性を残すのは18位のジュビロ磐田だが、17位との勝ち点差は6。磐田はまだ6試合を残している分、より多くの上積みが期待できるとはいえ、それは17位の京都、16位の柏レイソルも同じことだ。奇跡の残留をあと押しする材料としては少々弱い。
磐田にとって唯一の救いは、15位の湘南ベルマーレから17位の京都まで、3クラブが同勝ち点で並んでいること。すなわち、残留圏内に滑り込むための対象がひとつではなく、3つのうちどれかひとつが落ちてきてくれればいい、ということなのだが......。
現実的な可能性はかなり低いと言わざるを得ない。