今週末は、第85回菊花賞(GI、京都芝3000m)が行われる。
エピファネイア産駒のダービー馬・ダノンデサイル、セントライト記念を制したスワーヴリチャード産駒アーバンシック、神戸新聞杯を逃げ切ったゴールドシップ産駒メイショウタバルをはじめ、多彩な血統構成の馬が集結。
ここでは、馬券検討のヒントとなる「血統」で本競走を攻略する。
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■菊花賞を苦手とする血統は
JRA唯一の3000mのGIとあって独特の適性が求められる菊花賞。リアルシャダイ、サッカーボーイ、ダンスインザダークなど、菊花賞巧者の血筋が存在するのはその影響だろう。その一方で、このレースを不得手とする血があるのも当然の話だ。
菊花賞を苦手とする血のひとつがデインヒル。過去、京都開催の菊花賞におけるデインヒル内包馬の成績は【1.0.2.21】で、複勝率12.5%に留まる。スタミナ血統ヒズマジェスティこそ抱えるものの、デインヒルには快速血統ダンジグや北米屈指のパワーを誇るバックパサーなどが入るため、3000mへの適性を強化するのとは別の方向を向いてしまうということだろう。
確かに昨年の菊花賞はデインヒル内包馬のドゥレッツァが勝ち、同じくデインヒルを内包するソールオリエンスが3着に好走したが、レベルに疑問が付くレースであり、例年の傾向と異なるイレギュラーな菊花賞だったと考えたい。菊花賞の上位馬が翌年(=今年)の春天で揃って返り討ちにあったあたり、いわゆる「菊らしさ」とは遠い質のレースだったと見る。
なので、今年の予想のテーマは「デインヒルにキツい菊花賞が帰ってくる」ということで。デインヒル内包馬の評価を下げるのを立脚点に予想を始めたい。仮に今年もデインヒル内包馬が好走するようであれば「昨年から潮目が変わった」と整理し、来年の予想に活かせば良いだけなのだ。
■メイショウタバルの血には仕掛けが満載
今回注目したいのは、ゴールドシップ産駒。ここでは該当馬のメイショウタバルをピックアップする。
父は2012年の菊花賞馬ゴールドシップ、牝系からは京都大賞典を制したメイショウカンパクなどが出る。
そのメイショウカンパクもそうだったが、この牝系は直線平坦巧者、下り坂巧者が多いのが特徴。同牝系のワールドスケールは小倉や福島といったローカルを中心に活躍し、ロンもローカル函館と3角から下り坂の中京でレコードを記録した。そのうえ父はプリンスリーギフト5×5のゴールドシップとくれば、淀の坂下りはメイショウタバルにとって最適の条件に見える。
祖母の父は菊花賞の特注血統ダンスインザダーク。ゴールドシップ×フレンチデピュティの組み合わせからはタバルの他にステイヤーズS2着のプリュムドールが出た配合で、ステイゴールド系種牡馬と母父フレンチデピュティの組み合わせからは天皇賞春を制したレインボーラインも出ている。
フレンチデピュティと聞くと3000mは長いようにも聞こえるが、ステイゴールドとの組み合わせであれば距離をこなして不思議ない。このあたり、デピュティミニスターに薄くではあるがドナテッロが入るため、それがディクタスやメジロマックイーンに入るドナテッロと脈絡するのが良いのかも?
確かにメイショウタバルの牝系はメイショウクリフトのような短距離馬も出るので、タバル自身も京都外の2200mくらいがベストなのかもしれないが、この配合であれば3歳の3000mなら十分にこなせると見る。
逃げてバタバタになった皐月賞のイメージがあるため、暴走気味の逃げ馬と見る向きもあるものの、つばき賞では控えて勝っているし、前走の神戸新聞杯も先頭に立ってからはアタマの位置こそ高かったがしっかり折り合って走れていた。
ノーザンテーストにヴァイスリージェントを合わせるパターンは重馬場やダートなど力の要る馬場への適性をUPさせる仕掛け。毎日杯の大楽勝を見ても馬場が渋るのは歓迎だろう。
その毎日杯が優秀なパフォーマンスだったのも注目に値する。毎日杯を1分46秒5以下の勝ちタイムで制した馬は、ディープスカイ、キズナ、アルアイン、ブラストワンピース、シャフリヤール、そしてメイショウタバルの6頭で、タバルを除く5頭はいずれも後にGIを制しているように打点の高さは保証済み。
調教師になった石橋守が騎手時代に獲り逃した菊花賞のタイトルを当時と同じメイショウ冠の馬で獲りに行くというのも良くできたストーリーだ。その意味でも注目したい。
あとは枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論に至りたい。
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著者プロフィール
ドクトル井上 【重賞深掘りプロジェクト】血統サイエンティスト。在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。