サッカー日本代表は現地時間の10月10日、アウェイでワールドカップ最終予選のサウジアラビア代表戦に臨み、2-0で勝利し…
サッカー日本代表は現地時間の10月10日、アウェイでワールドカップ最終予選のサウジアラビア代表戦に臨み、2-0で勝利した。「最大のヤマ場」とみられていたこの一戦を、日本代表はどのようにして乗り切り、同15日の「ライバル」オーストラリア代表との一戦へとつなげたのか。ベテランのサッカージャーナリスト大住良之と後藤健生が、語り明かした。
■森保監督のさすがの手腕「半年でものに」
――後藤さんはオーストラリア戦でも無失点に期待とのことで、セリエAパルマ所属のGK鈴木彩艶の成長も頼もしい材料かと思います。
大住「そうなんだけど、彩艶にはひとつ引っかかることがある。もうちょっと早くボールをさばけそうなときに、余裕の表情でボールを持ちすぎるんだよね」
後藤「この間のボローニャ戦でも、余裕を見せつつパスをしようと思ったら相手に詰められて、あわや、という場面があったよ。今のうちに直しておいてほしいよね」
大住「ワールドカップ本大会でやられたら困るよ」
後藤「アジアカップの頃は、1試合で2回くらいは危ない場面があったなあ」
大住「なんでもないクロスを落としたりね」
後藤「パンチングしても、相手がいるところに弾いてしまったりね。でも、そういうミスはなくなったよ」
大住「アジアカップのときは、悪い流れにはまっていたからね」
後藤「僕は当時、ワールドカップ本大会に間に合うように森保一監督が今から起用しているんだと彩艶の起用を擁護していたんだけど、半年でものになってきた。これも、森保一監督のさすがの手腕だね」
■代表選手の変化「今ならブラジルにも…」
――チーム全体的にもここまであまりに出来過ぎで、ピークに早く到達するのではと心配になります。
後藤「早くワールドカップをやってくれ! 今ならブラジルにも勝てる!」
大住「2014年のブラジル・ワールドカップを目指していたアルベルト・ザッケローニ監督のチームは、2012年にピークが来ちゃったんだよね。最終予選の最初の2試合くらいが、あのチームのピークだった。だけど、森保一監督の経験や、これまでやってきたことを見ると、そういうことも織り込み済みで競争させているように見える。当時は攻撃陣が1セットしかなかったけど、今は2チーム分ある。第2FWを出しても、十分戦えるくらいのものはあるんだから」
後藤「何しろ、選手があれだけ本気でやっているんだから、すごいよ。落ちていくような雰囲気がない」
大住「代表選手は真面目になったよね」
後藤「これまでは、本大会前に期待が高いと結果が出なくて、下馬評が低いときには好結果を残すということを繰り返してきた。でも、今のチームはそのどちらのパターンにも当てはまらないと思う。これだけ強いチームがあれだけ真剣に取り組んでいるなんて、あり得ないことなんだから」
大住「その原因のひとつには、森保監督がワールドカップでの優勝という言葉を口にしたことが大きいと思うよ。優勝すると言っているのに、こんなところでこんな程度じゃダメだろ、と皆が思っているよね。だから、あれだけのプレーができるんだと思う」
後藤「今なら、ワールドカップ優勝もあり得ないとは言えないよな、と思わせてくれる」
大住「だけど次の大会で優勝するには、ノックアウトステージに入ってから5試合勝たなければいけなくなっちゃった。これは、最終予選で無失点で10戦全勝するより大変だよ。だからまず、次のオーストラリア戦をどうしようか」
■「見てみたい」1点先制されてからの…
後藤「とりあえず、サウジアラビア戦に出ていなくて、調子が良い人を出すことが優先だよね」
大住「けっこう疲れがあるだろうからね」
後藤「そりゃあ、相手もそれなりに強い上に、気温30度を超えるところであれだけハードワークしたんだからね。試合に出ていないけど調子が悪い選手もいるだろうし、それをうまく見極めて、調子の良さそうな選手を先発させてほしい」
大住「そうしたことも理解した上で、オーストラリア戦もさらに期待だね。何か、他の言葉に言い換えられないかな。ゴールを奪っても、4点までにしておいてやる、とかさ」
後藤「いや、3点でいいんじゃない。3-0で勝つのが完璧なゲーム運びだと、僕は思っているんですよ。ウノ・ゼロ(1-0)というのは危険でしょ。ひとつ事故が起こったら同点にされてしまう。2-0でもいいんだけど、前半2-0、後半1-0とか、前後半ともに点を取って、3点取って勝つというのが完璧な試合だと思う」
大住「後藤さんは、最終予選全10試合を無失点で突破するのが目標、と言っていたけど、1点先制されて逆転で勝つ試合を見たいな。そういう状況でこそ、チームの本当の力が見られると思う」
後藤「それは来年の秋にとっておきましょう。予選突破を決めて、強いチームと親善試合をするまで。そこでそういう厳しい試合を経験して、ワールドカップ本大会に臨めばいいじゃない」