『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(1)サントリーサンバーズ大阪 鬼木錬(c)古舘春一/集英社 門前に立ちふさがる…

『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(1)

サントリーサンバーズ大阪 鬼木錬



(c)古舘春一/集英社

 門前に立ちふさがる金剛力士像のような風体である。迫り来る敵を、すさまじい膂力(りょりょく)と強い意志で跳ね返す。身長204cmの大きな体躯に、封じ込められない覇気がじんわりと滲む。

「中学3年まではサッカーのGKをしていましたが、続けるにはシューズがなかったんです(笑)。バレーか、バスケはシューズがあったので、高校の先生に誘ってもらっていたバレーにしました」

 鬼木錬はそう言って笑い、大きな体を揺らす。バレーに巡り会うタイミングは決して早くなかったが、それは運命だったのかもしれない。

バレー初心者が、たった3年にして全国区で高い評価を受けた。進学した日体大では後輩の髙橋藍とトップレベルを争い、ユニバーシアード代表に入った。そして2024年度は日本代表メンバーにも登録されている。

「中3の時にバレー部体験に行かせてもらい、何もできなかったですけど、楽しかったですね」

 鬼木は言う。

「少しパスができるようになって......何よりスパイクが楽しかったですね。身長はあったんで、跳ばなくても打てなくはなかったですけど、力はなかったです。(GKをやっていたのもあって)ジャンプのイメージはできていたので、タイミングの感覚を掴んでいって打てるようになりました。大きな挫折ですか? ......今のところないですね」

 少し考えてから、彼は答えた。巨人の大らかさがある。焼肉店に行くと、肉は何人前になるかわからない。大好きな白いご飯をかきこむ。大盛りで5杯、ビビンバ丼を間に挟み込み、うどんも平らげるという。

 ミドルブロッカーとして、巨躯は強力な武器だろう。特にブロックでは、絶対的に身長差がモノを言う。ただ、その高さや強さに頼っていないことが、彼の非凡さだ。

「プレーのなかでは、ブロックは好きかもしれません。ひとりでシャットするのもそうですけど、やっぱり、トータルディフェンスが面白いですね。自分のブロックだけじゃなく、リベロとの関係性を含めて、チームで取った1点が最高です」

 昨シーズンは、チームのVリーグ制覇にも貢献した。決勝で勝者になる経験は何ものにも代えがたかった。

「これから自分が見たい風景ですか? それは、やっぱりオリンピックの舞台に立った景色ですね。パリオリンピックを見ても、20点以降は本当に難しい。そこで(得点を重ねるために)何ができるのか。それを意識してずっと練習していくことが大事ですね」

 そこで、最後に聞いた。

――タイムマシンで中3の錬くんに会いに行ったら、なんと告げる?

 彼は律儀に手をヒザにやったまま、大きな体を小さくして答えた。

「『(やるのはバスケより)バレーにしたほうがいいよ』と伝えますね。『きっと、いい人生が待っているよ』って。当時の自分もきっと、『やるよ』と答えるはずです」

 鬼木の今は約束されたものだ。

【鬼木が語る『ハイキュー‼』の魅力】

――作品の魅力は?

「『ハイキュー‼』は高校生の頃も流行っていたので、最初はみんなにつられて読みました。それでハマって、アニメも見てって感じですね」

――共感したことや学んだことは?

「学んだことで言うと、烏野の烏養繋心コーチの『下を向くんじゃねえ!!! バレーは常に上を向くスポーツだ』ですかね。たしかにそうだなって。ミスをしたあと、どうしても落ち込んでしまい、下を向いちゃうんです。そこで顔を上げて、チームメイトと目を合わせるのが大事だって参考になりました」

――印象に残った名言は?

「トータルディフェンスのところで、音駒のクロ(黒尾鉄朗)が、『チームワークが"ハマる"瞬間ってのは 多分お前が思ってるよりずっと気持ちいいぞ』と言う場面があるんですけど、そこは好きですね。自分もミドルブロッカーとして(スパイクを)止めるのは好きだけど、全部を止められるわけではない。だから、コースを絞って後ろの選手に拾ってもらう。チームで止める大切さを大学で学んでから、それが面白いと思っているので」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位はクロですね。周りとうまく接しているし、とにかくなんでもできる。もちろんブロックがうまくて、レシーブなども器用にこなせる。漫画のキャラですが、自分にとって理想のミドルです(笑)。

2位は烏野の西谷夕で、3位は田中龍之介ですが、ほぼ同列。どちらも、普段はおちゃらけているのに、試合で高いパフォーマンスを発揮できる。そのギャップというか、そういうキャラは好きですね」

――ベストゲームを選ぶとしたら?

「烏野vs音駒でしょうか。お互いが拾い合ってバテバテになるところにグッときますね。自分がプレーしている時は、長いラリーは早く終わってほしいですけど、見る分には続いているほうが楽しいです(笑)」

(連載2:サントリー染野輝が貫いてきたエース道 『ハイキュー‼』の好きなキャラ1位も「小さなエース」>>)

【プロフィール】
鬼木錬(おにき・れん)

所属:サントリーサンバーズ大阪

2000年8月28日生まれ、福岡県出身。204cm・ミドルブロッカー。中学までサッカーをやっていたが、バレーボール部の監督に誘われて祐誠高校1年からバレーを始める。その後、日体大を経て2023年にサントリーサンバーズ大阪に入団。10月にVリーグデビューを果たした。同年にはユニバーシアード日本代表、翌年にはシニア日本代表に登録された。