石川雄洋氏が振り返った2016年の球団初CS「雰囲気が異常だった」 DeNAは球団創設5年目の2016年にリーグ3位に入り、初のクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。チームは広島とのファイナルステージで敗れたが、横浜時代から16年間…

石川雄洋氏が振り返った2016年の球団初CS「雰囲気が異常だった」

 DeNAは球団創設5年目の2016年にリーグ3位に入り、初のクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。チームは広島とのファイナルステージで敗れたが、横浜時代から16年間ベイスターズ一筋で過ごした石川雄洋氏も計5試合に出場するなど貢献した。

 巨人を撃破したファーストステージは球団史においても伝説的な戦いとなった。だが、石川氏にとっては「プロ16年間で一番の心残り」を痛感する出来事になったという。

 2016年はアレックス・ラミレス新監督のもと、11年ぶりのAクラスとなる3位に入り2位・巨人とのCSファーストステージを迎えた。敵地ながらも左翼席から三塁側、バックネット裏近くまでDeNAファンが“占拠”。東京ドームの半分が青に染まる異様な光景が広がっていた。

「雰囲気が異常だった。すごく鮮明に覚えています。1番印象に残っていると言ってもいいくらい」

 1勝1敗で迎えた第3戦。引き分けでも敗退となるなか、チームは延長11回に決勝点を奪って、広島とのファイナルステージの出場権を得た。第4戦で敗退したが、石川氏も計5試合に出場した。歴史的なCSに充実感を覚えながらも、複雑な思いを抱いたのも事実だった。

「贅沢をいうなら僕がキャプテンの時にCSに行きたかった。DeNAに変わって、主将になって、僕も成長できて、チームも強くなり始めていたタイミングでした。2016年はキャプテンはゴウ(筒香嘉智)で、監督もラミちゃんだった。僕は中畑さんをCSに連れて行きたかった」

「出られて嬉しかったけど、すごく悔しかったのも覚えている」

 石川氏は球団が横浜DeNAベイスターズに変わった2012年から3年間主将を務め、中畑清監督のもとで「暗黒時代」とも言われた苦しい時期を戦い抜いてきた。チームは少しずつ力を付け、石川氏は2015年から主将を筒香に譲った。そして就任から4年連続でBクラスだった中畑監督は責任をとって同年のシーズン限りで退任していた。

「正直、あの時期がなかったら2016年のCSもなかったと思う。だから、出られて嬉しかったけど、すごく悔しかったのも覚えている。自分がキャプテンのときに行けなかったので。キャプテンをやっていた3年間でCSに行けなかったのがプロ16年間で一番の心残りです。間違いないです。現役生活で優勝できなかったり、暗黒時代でヤジを浴びたことよりも悔しい。これ初めて言います」

 チームの低迷期でも必死に前を向き、主将として戦う姿で仲間を鼓舞。「勝つためのミーティングはいっぱいやってきた」と振り返る。歯を食いしばって苦難の道を歩いてきたからこそ、主将の“集大成”として、中畑監督とCSを戦いたかったという。

 当時を語る石川氏の口調は熱を帯びていた。今でも強く心に刻まれているプロ16年での最大の心残りだった。(湯浅大 / Dai Yuasa)