読者のみなさん、こんにちは!ぼくはOne arm surferのけんたろうと言います。突然ですが、サーフィンの世界大会である「WSL(World Surf League)」はご存じでしょうか。ぼくのように何らかの障がいを抱えているサーファー…

読者のみなさん、こんにちは!ぼくはOne arm surferのけんたろうと言います。突然ですが、サーフィンの世界大会である「WSL(World Surf League)」はご存じでしょうか。ぼくのように何らかの障がいを抱えているサーファーが参加するアダプティブサーフィン(パラサーフィン)にも、WSL同様に賞金が与えられる「AASP(Association of Adaptive Surfing Professionals)」というプロトーナメントがあります。今回は、9月5日から9月8日にかけてカリフォルニア州のオーシャンサイドで行われた「U.S. Open Adaptive Surfing Championships」というアダプティブサーフィンのプロトーナメントに初めて出場してきましたので、ぼくなりの大会レポートをお伝えしたいと思います!


アダプティブサーフィンについて

「アダプティブサーフィン(Adaptive Surfing)」は、身体的障がいや特別なニーズを持つ人々が参加するサーフィン活動を指します。「パラサーフィン」と言ったほうがイメージしやすいかもしれませんが、ぼくは「アダプティブサーフィン」という呼び方に誇りを持っています。

なぜなら、アダプティブサーフィンには、『アダプト(adapt):適応する』という概念が含まれており、個々の特徴を活かした装備や技術で波を乗ることに適応し、すべての人がサーフィンを楽しむことができるように工夫しているという意味が含まれるからです。

週末サーファーも遠方から来るサーファーも、大人になってから始めたサーファーも、何かしら「アダプト」して工夫しているはずで、ぼくたちはみんなアダプティブサーファーといえるかもしれません。

U.S. Openについて

「U.S. Open Adaptive Surfing Championships」は、「アダプティブ・サーフィン・プロフェッショナルズ協会(Association of Adaptive Surfing Professionals, AASP)」が主催するAASPツアーの最終戦を締めくくる、カリフォルニア州オーシャンサイドで開催されている伝統ある大会です。


AASPツアーについて

AASPツアーは、世界の4都市で開催されるアダプティブサーフィンのプロトーナメント大会です。2024年には、オーストラリア、ハワイ、コスタリカ、カリフォルニアで開催されました。プロトーナメントなので、賞金も設定されています。各大会の優勝者には約1,000ドルの賞金が授与されます。さらに、年間を通じて最も多くのポイントを獲得した選手がグランドチャンピオンとして選ばれ、約4,000ドルの賞金が授与されます。

今回のUS OPENについて

オーシャンサイドは気温約40度とここ数年で一番暑い日となりましたが、カラッと乾燥した気候で爽やかに過ごせました。
アダプティブサーフィンの選手たちやライフセーバーをはじめとする大会スタッフは、世界ツアーを共に回っているため、まるでファミリーのような一体感と温かい雰囲気が感じられました。一方、競技が始まると、すべての選手がプロアスリートとして妥協なく高いレベルのサーフィンを披露しました。
また、オーシャンサイドでシェイパーをしている「KODAI」さんをはじめ、6人の日本人サポーターが応援に駆けつけてくれました。


日本人出場選手について

日本人選手はぼくを含め4名が出場しました。ぼくは世界トップのOne arm surferの洗礼を浴びて4位。

ニーボードクラスの小林 征郁(こばやし まさふみ)選手は激戦の末6位となり、年間ランキング5位に。また、膝下スタンドクラスの伊藤 建史郎(いとう けんじろう)選手は僅差で2位。去年につづき年間ランキング2位に輝きました。

膝上スタンドクラスの勝倉 直道(かつくら なおみち)選手は堂々の1位。年間1位でグランドチャンピオンを獲得しました。日本人選手はそれぞれ大健闘でした!

印象に残った選手紹介

今回のUS OPENで最も感銘を受けた選手、それはブラジル出身のマイク・リチャード選手、42歳です。マイクは十数年前にバイク事故で右腕を負傷し、肩から手先まで自由に動かすことができないという上肢障がいを抱えています。

マイクのサーフィンスタイルは、右腕をボードのノーズに置き、左手一本でパドルします。ライディングに入ると、自由が利かない右腕も含めて体の軸を使って豪快なターンを繰り出します。波を読む力、スプレー、ターンの切れすべてがエキスパートで、まるでガブリエル・メディーナのサーフィンを見ているようです。

それもそのはず、事故前のマイクは、ブラジル国内のチャンピオンとして君臨していた実力者で、将来はチャンピオンシップツアー(CS)やチャンピオンシップツアー(CT)を目指していたそうです。しかし事故により、その夢は一旦途絶えました。それでもサーフィンへの情熱は消えることなく、彼はハワイのノースショアに移住しました。そこでビッグウェーブを楽しむと同時に、アダプティブサーフィンのプロトーナメントでグランドチャンピオンとしての地位を確立しています。

困難な状況にも屈せず、波にも人生にも適応し最大限に楽しむ姿勢を持つマイク・リチャード選手。彼のような生き方を見習いたいと強く感じました。


最後に

今回のUS Openでの経験は、SNSで憧れていた世界トップのOne arm surferと同じヒートで戦うことができ、ぼくにとって非常に価値のあるものでした。アダプティブサーフィンの魅力や奥深さをより多くの人に知ってもらえるよう、これからも積極的に活動を続けていきたいと思います。応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました!

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