Jリーグは終盤に入っているが、アジアでは新シーズンがスタートした。アジアの頂点を争うAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)が開幕したのだ。大会は、今シーズンから「新方式」を採用しているが、その仕組みは複雑怪奇。サッカージャーナリ…

 Jリーグは終盤に入っているが、アジアでは新シーズンがスタートした。アジアの頂点を争うAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)が開幕したのだ。大会は、今シーズンから「新方式」を採用しているが、その仕組みは複雑怪奇。サッカージャーナリスト大住良之は「アンチ・サッカー的だ」と、警鐘を鳴らす。その意味するところとは?

■全22節のリーグ戦を「8節で打ち切る」に等しい

 その最初の大会となる「2024/25シーズン」、日本からは、「ACLエリート(ACLE)」に2023Jリーグ優勝のヴィッセル神戸天皇杯優勝の川崎フロンターレ、そしてJリーグ2位の横浜F・マリノスの3クラブが出場、Jリーグ3位のサンフレッチェ広島は「ACL2」に出場している。

「ACL2」は東西それぞれ4クラブ4グループによるホームアンドアウェーのリーグ戦(各クラブ6試合)で、各組上位2クラブがノックアウトステージに進むという、従来と同じ方式である。問題は「ACLE」だ。

 24クラブを東西12クラブずつに分け、それぞれ12クラブが「1つのリーグ」を構成する。だが全クラブが互いにホームアンドアウェーで対戦するわけではない。そうなると全22節ものリーグ戦になってしまうからだ。国内リーグと並行して、こんな試合数の大会を戦うことは不可能だ。では、どういう方式になっているのか。

 12クラブは、それぞれ8試合、ホームで4試合、アウェーで4試合を戦う。ひとつの相手とは、「ホーム・オア・アウェー」で、1回しか対戦しない。一度も対戦しないクラブも3つあることになる。そして、その8試合で得られた勝点、得失点差などで順位をつけるのである。

 なんという「アンチ・サッカー的」な方式! 実例を考えてみよう。1992年までの日本サッカーリーグ1部は12チームで構成され、全22節だったが、その第8節終了時でリーグ戦を終わらせてしまうに等しい乱暴なものなのだ。これが、いかに不公平な方式であるか、誰もがわかるに違いない。

■「相手」や「日程」はどうやって決まったか

 では、その対戦相手や日程はどうやって決まったのか。ここが複雑怪奇である。一応、解説するが、以下の2段落は読み飛ばしてくれてもかまわない。

 東西とも、クラブを出せるのは、これまでのAFCのクラブ大会の成績をポイント制にしたランキングの6位までの国。東では、日本、韓国、中国、タイ、オーストラリア、マレーシア。各国出場権首位(日本で言えばJリーグ優勝)6クラブを「ポット1」とし、他の6クラブを「ポット2」として抽選、12クラブを3つの「グリッド」に分ける。その結果、日本の3クラブはすべて同じグリッドに入った。

 各クラブは、他のグリッドの8クラブと試合をする。また、同じ国同士の対戦はない。その結果、日本の3クラブは、すべて蔚山HD、浦項製鉄、光州FC(いずれも韓国)、セントラルコースト・マリナーズ(オーストラリア)、上海海港、山東泰山、上海申花(いずれも中国)、そしてブリーラム・ユナイテッド(タイ)との対戦となった。同じ「グリッド」のジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)との対戦はない。

■横浜FM×蔚山戦後「必要な勝点」を聞くと…

 第2節を終わって東地区の首位は2連勝(7-3横浜FM、1-0川崎)の光州。2連勝は他にはなく、1勝1分(0-0ブリーラム、2-1山東)の神戸が4位、1勝1敗(3-7光州、4-0蔚山)の横浜FMが6位で「勝ち抜き圏内」。同じ1勝1敗(1-0蔚山、0-1光州)ながら得点数の少ない川崎は「圏外」の9位となっている。

 しかし「12チームのリーグ戦」の「第8節終了時」に8位以内に入るには、実際のところ勝点がいくつ必要なのか、誰も経験したことがないため、よくわからない。

 ちなみに、1991/92シーズンの日本サッカーリーグ(全12チーム、22節)の第8節終了時の8位は松下電器(現在のガンバ大阪)で、2勝3分3敗、勝点9だった。なお松下はその後成績を持ち直し、最終順位は5位となった。

 興味を持ったジャーナリストの轡田哲朗さんが、10月2日の横浜FM×蔚山の試合後に両チームの監督に「グループステージを突破するのに、いくつの勝点が必要と考えているか」と質問した。

 蔚山の金判坤(キム・パンゴン)監督は、「4勝が必要だと思う」と、正直な回答をした。川崎と横浜FMに連敗というスタートになったが、残り6試合のうち4試合勝てばいいという余裕が感じられた。一方、横浜FMのジョン・ハッチンソン監督は、「逆に教えてほしい」とジョークを飛ばした後、「ホームゲームをすべて勝てばいけるのではないか」と、金判坤監督と同じ内容の見解を示した。

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