【過去20年の血統から見る狙い目は?】 現地時間10月6日(日)、フランスのパリロンシャン競馬場で3歳以上馬によるGⅠ凱旋門賞(芝2400m)が行なわれる。 世界最高峰のレースとして名高いこの一戦。今年は日本調教馬の悲願達成へ、シンエンペラ…
【過去20年の血統から見る狙い目は?】
現地時間10月6日(日)、フランスのパリロンシャン競馬場で3歳以上馬によるGⅠ凱旋門賞(芝2400m)が行なわれる。
世界最高峰のレースとして名高いこの一戦。今年は日本調教馬の悲願達成へ、シンエンペラーが坂井瑠星騎手とともに参戦。武豊騎手は愛国のJ・オブライエン厩舎に所属しているアルリファーに騎乗を予定している。
血統的視点からこのレースを占っていこう。別表に「過去20年の凱旋門賞勝ち馬の血統」をまとめた。オレンジ色で表したのがサドラーズウェルズ系で、直近12年で10勝するなど、この直系が20年で11勝している。母の父を見ても、4頭がこの血を持っている。父も母の父もこの系統であるエネイブルを含めて、20頭の勝ち馬のうち13頭がこの血を持っているのだ。
さらに見ると、水色で表したダンチヒの影響力もなかなかのもので、過去20年の勝ち馬で4頭が直系に、さらに4頭が母の父にその血を持っている。凱旋門賞馬の血統を分析してみると、サドラーズウェルズとダンチヒが重要な血であることは明らかだ。
これらを踏まえて、今年の出走馬の血統を見ていこう。最優先すべきは、過去12年で10勝しているサドラーズウェルズ系だろう。今年の出走馬は6頭のため、この時点でかなり絞られる。さらに、血統表の奥の血も総合して分析した結果、筆者が本命に推したいのがロスアンゼルス(牡3歳、愛・A.オブライエン厩舎)だ。
同馬は今年のGⅠ愛ダービー馬で、前走のGⅠ愛チャンピオンSではシンエンペラーに続く4着に入ってここに臨む。父は英ダービーを勝ったキャメロット。キャメロット自身は凱旋門賞で7着に敗れたが、その父モンジューは1999年の凱旋門賞で日本のエルコンドルパサーを破って勝利。モンジューは直仔にハリケーンラン、孫にトレヴと、直系から2頭の凱旋門賞馬を輩出している。
母の父ダンシリは、デインヒルを経由したダンチヒの孫。2006年の凱旋門賞馬レイルリンク、2014、15年の2着馬フリントシャーの父でもある。牝系を遡ると4代母でアレグレッタに辿り着くが、同馬は1993年の勝ち馬アーバンシーの母で、同時に2009年の勝ち馬シーザスターズの祖母。さらに2021年の勝ち馬トルカータータッソの4代母でもある。
また、直系ではないが、昨年の勝ち馬エースインパクトはこの名牝アレグレッタの血を5×4でクロス(近親交配)している。アレグレッタは凱旋門賞において最も重要な"牝馬の血"と言えそうだ。
また、過去のモンジュー系の勝ち馬3頭はすべて、ロスアンゼルスと同じ3歳時に勝利(トレヴは4歳時にも勝利)している点もポイント。ハリケーンランはロスアンゼルスと同様に愛ダービーの勝ち馬だった。前走の愛チャンピオンSでは勝負どころで離されたように一瞬のキレに欠けるが、距離10F(約2000m)から愛ダービーとほぼ同じ2400mに延長されるのは間違いなくプラス材料。また、2歳時の仏GⅠクリテリウムドサンクルー(芝2000m)では重馬場で勝利しているように、馬場が渋ればさらに有力だ。
【対抗馬、日本馬シンエンペラーの期待度は?】
もう1頭は、アヴァンチュール(牝3歳、仏・C.フェルラン厩舎)を推す。同馬は父が2009年の勝ち馬シーザスターズで、サドラーズウェルズ系に次いで相性がいいダンチヒを父系祖先に持つ血統。シーザスターズの産駒は凱旋門賞の勝利はないが、2014年にタグルーダが3着、2017年にクロスオブスターズが2着、2018年にシーオブクラスが2着、クロスオブスターズが3着に入っている。
母の父シングスピールはサドラーズウェルズの直系の孫で、祖母の父レインボウクウェストは1985年の凱旋門賞馬だ。さらに牝系を遡ると、4代母レイディベリーが2011年の勝ち馬デインドリームの3代母。デインドリームは3歳時に11番人気でこの凱旋門賞を勝利しており、GⅠ勝ちのないアヴァンチュールも人気はなさそうだが、デインドリームのような大駆けに期待したい。
最後に日本馬シンエンペラー(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)にも触れておこう。
日本調教馬の初勝利を目指すシンエンペラー
photo by Sankei Visual
同馬は全兄ソットサスが2020年の勝ち馬なので、当然、血統的相性はいい。父系を遡ると4代父でヌレイエフに辿り着くが、ヌレイエフの産駒は1997年にパントレセレブルが5馬身差のレコード勝ちで圧勝している。
この馬の血統でもうひとつの大きなポイントが、父シユーニの母の父デインヒル。この血は前述のように、ダンチヒを父に持つ凱旋門賞と相性のいい血脈だ。凱旋門賞の勝ち馬のなかでは少数派のヌレイエフ系ながら、兄が凱旋門賞馬となったのは、このデインヒル血の影響も大きかっただろう。あらためて、血統表を隅々までチェックすることの重要さを思い知る。シンエンペラーも当然、実力的にも血統的にも有力馬の1頭という見解で間違いないだろう。
以上、今年の凱旋門賞はロスアンゼルス、アヴァンチュールを中心に、シンエンペラーの好走も期待したい。