中学硬式野球・江東ライオンズは体験会から「日本一を目指すチーム」と説明 高校で活躍できる選手を育成するため、あえて「日本一」を目標に掲げる中学硬式野球の強豪チームがある。ポニーリーグに所属する「江東ライオンズ」(東京・江東区)は、入部前から…

中学硬式野球・江東ライオンズは体験会から「日本一を目指すチーム」と説明

 高校で活躍できる選手を育成するため、あえて「日本一」を目標に掲げる中学硬式野球の強豪チームがある。ポニーリーグに所属する「江東ライオンズ」(東京・江東区)は、入部前から「勝つ」ことを強く意識づけさせ、全国3連覇を成し遂げた実績を誇る。Full-Countでは小学生・中学生世代で日本一を成し遂げた監督に取材。1976年創部から半世紀近くが経過しても、なお強さをキープできる秘訣を探った。

 江東ライオンズの部員数は3学年で90人を超える。大所帯の強みを生かし、「江東タイヨー」「江東ポニー」「新砂ポニー」「コルト江東ライオンズ」と最大5チームを形成して大会にエントリーすることもある。部員全員に共通しているのは「覚悟」だと田本剛監督は言う。

「ウチは体験会の段階から『日本一を目指すチーム』だという説明をしています。子どもたちも日本一を目指すという覚悟を持って入部届を出します。指導でもそういった言葉がけは常日頃から行っています」

 江東ライオンズOBでもある田本監督はコーチを12年間務め、2021年秋に監督に就任。全日本選手権で2連覇を達成した後のチームを引き継ぐことになったが、「重圧はありませんでした」と振り返る。

「私も監督1年目で、新チームの子どもたちも優勝を目指して初めてトライしていくので、一緒にチャレンジしていくという考え方でした。ただ、手応えは正直なくて、秋の段階では、ちょっと厳しいかなという感じはありました」

 それでも選手たちには「3連覇をしなければならない」と言い続けてきた。ポジションや打順を毎試合変更して競争意識をあおると、2022年春先には「勝ち方が変わってきた」と成長を実感。その結果、3学年全てが関東大会で優勝、トップチームは夏の全国選手権で3連覇の偉業を達成した。

挨拶なども口酸っぱく指導「礼儀や思いやりが、日本一になる資格」

 田本監督が指導をする上で大切にしているのは、「選手の声を聞くこと」。特徴的なのは、1年夏から計5度行う進路指導だ。一般的には2年冬頃から行うチームが多い中、江東ライオンズでは入部間もない部員にヒアリングシートを渡し、どの高校でどのような生活を送りたいか、寮生活の可否などを細かにイメージさせ、記入させる。野球の実力や学力も加味しながら、じっくりと3年間をかけ、選手、保護者、指導者が三位一体となって理想の進路先を決定していく。

「1年生のうちから進路先のヒアリングを行っているチームは少ないと思います。高校で野球をやるために今野球をやっているのだということを再確認してもらう意味でも、早い時期から進路指導はやっています」

 野球の技術だけではなく、挨拶や礼儀の練習、落ちているゴミを拾うなどの「思いやり行動」も口酸っぱく指導している。全ては、上のステージで通用する人間に育ってもらうためだ。

「我々は高校野球に通ずる選手の育成を第一に掲げています。靴は、バッグはきれいに並んでいるのか、人がどう感じるかを考えた時に、今の返事は、挨拶は、態度はそれでいいのか、などを繰り返し言ったりします。こういった礼儀や思いやりがあるチームが、日本一になる資格があるチームじゃないかと私は思っています」

 日本一を目指すための指導が、高校野球、そしてその先の人生へとつながる。田本監督は今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定だ。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)