五十嵐亮太が占うMLBポストシーズン展望(後編)前編:五十嵐亮太が指摘するドジャースの不安要素はこちら>>design by Unno Satoru 【同地区のライバル・パドレスに要注意】── ドジャースはシード権を得ているので、ポストシー…
五十嵐亮太が占うMLBポストシーズン展望(後編)
前編:五十嵐亮太が指摘するドジャースの不安要素はこちら>>
design by Unno Satoru
【同地区のライバル・パドレスに要注意】
── ドジャースはシード権を得ているので、ポストシーズン初戦は10月6日(日本時間)になります。五十嵐さんもNPBでクライマックス・シリーズを経験されていますが、選手はどのような心境で待つのでしょうか。
五十嵐 その期間は休むだけではなく、実戦向けの練習をして試合に臨むんですけど、実際「よーい、ドン!」で対戦が始まる際には、やはり勝ち上がってきたチームのほうが勢いはあると思います。もちろん待っているほうが嫌かなとは思うんですけど、さすがにドジャースも慣れていると思うんですよ。過去に経験したベテランたちによる雰囲気づくりがすごく大事になってきます。そのなかで、ここまでドジャースに流れをもたらしてきた大谷選手が、ここでもチームに勢いをつける役割が求められる。逆に、それがないと今のドジャースは苦戦するのではないかと思います。
── 当然、大谷選手もそのことは理解しているでしょうね。
五十嵐 間違いなく理解しているはずなので、WBCのようなチームを引っ張る大谷選手の姿が想像できますよね。ポストシーズンを戦うことが大谷選手にとっての目標でしたし、ここでも同じように結果を残し続けるのかなと思います。
── ナ・リーグは、今季最終戦でポストシーズン進出のチームが決まったように大混戦でした。最終的にアトランタ・ブレーブスとニューヨーク・メッツがワイルドカード進出を決めました。
五十嵐 メッツは頑張りましたよね。今シーズン、あれだけ主要メンバーを放出して、千賀(滉大)投手も離脱して、「もう無理だろ」と思っていたら、最後の最後で進出。
── 6月12日のホーム戦で、マクドナルドのキャラクター「グリマス」が始球式を務めてから、驚異の勝率を挙げたみたいです。
五十嵐 選手たちの仲もよさそうで、モチベーションも高くなったんでしょうね。でもこの戦力で勝ち残ったのもすごくないですか? アトランタもケガ人がたくさん出ているけど、結局残っていますし。
自身初のMLBポストシーズンに挑むドジャースの大谷翔平
photo by Getty Images
── 大谷選手は初めてのポストシーズンになるわけですが、対戦する可能性のあるチームのなかで今シーズンの成績を見たところ、サンディエゴ・パドレスの投手陣、とくに先発陣はやや苦手にしていて、フィラデルフィア・フィリーズの二本柱であるザック・ウィーラーは得意だけど、アーロン・ノラは苦手。また、ミルウォーキー・ブルワーズの投手陣に対しては、総じて得意という感じです。
五十嵐 後半戦に調子上がってきたピッチャーもいるから、その数字が100%信用できるわけではないと思うんですけど、やはりパドレスの投手陣はいいですね。移籍してきた左投手のタナー・スコットに抑えられていますし(通算9打数1安打)、絶対的な左投手がいると「ここぞ!」という時にぶつけてくることができるじゃないですか。パドレスが調子のいい時期に対戦しているから強く見えるということもあると思いますが、ドジャースにとっては戦いづらい相手であることは間違いありません。
── ドジャースは、パドレスとブレーブスの勝者と戦うことになります。
五十嵐 勢いをつけて勝ち上がってきたチームに、去年ドジャースは負けています。では今年はどうなるのかというと、やはりカギを握るのは大谷選手だと思います。短期決戦でもきっと力を発揮してくれるでしょう。ここまで来ると、最低でも僕らのイメージどおりの活躍をして、結果的にその想像を軽々と超えていくのではないかと思っています。
【夢の対決の実現なるか?】
── 一方のア・リーグですが、ヒューストン・アストロズに移籍した菊池雄星投手がチームにしっかりハマりましたよね。
五十嵐 強いチームに入って、キャッチャーのリードもあるのか、カーブの割合が増えた印象があります。それがうまくハマったのかもしれません。アストロズは毎年のように勝ち上がってきますし、これはドジャースにも言えることですが、選手のよさを引き出す何かを持っていますよね。それに菊地選手も、プレッシャーのかかる場面だからこそ、力を発揮できたというのはあったかもしれません。
── 大谷選手が出場することになり、また日本人選手が多く出場することで、日本国内でも観戦する人が圧倒的に増えると思います。
五十嵐 めちゃくちゃ増えますよね。だって、絶対に面白いじゃないですか。
── ちなみに、ドジャースがワールドシリーズに進出できる確率って、どれくらいだと思いますか?
五十嵐 正直、高くはないと思います。今の投手陣を踏まえると、50%くらいでしょうか。でも、大谷選手がひとりいるだけでプラス35%、つまり85%になるのではないでしょうか。ひとりで35%分ぐらいの活躍をしそうじゃないですか(笑)。我々の想像をはるかに超えていく。それが大谷選手なんだと思います。
── たとえば、いきなり先頭打者ホームランを打って、一気にチームが乗るということも......。
五十嵐 ポストシーズンで一番怖いのは、三振でも、フォアボールでもなく、ホームランですから、その可能性はおおいにあると思います。ドジャースは比較的、つながる打線です。いい流れをいかに続けていけるかにかかっていますよね。大谷選手、ベッツ選手、フレディ・フリーマン選手のMVPトリオがカギになりそうです。とくにベッツ選手の働きが大きいような気がしています。
── ほかにポストシーズンで注目するチーム、選手はいますか?
五十嵐 前田健太投手が所属するデトロイト・タイガースが一気に来ましたよね。ボルチモア・オリオールズもいい野球をしています。とはいえ、やっぱりニューヨーク・ヤンキースじゃないですか。アーロン・ジャッジもまた打ち始めましたし。ドジャースとヤンキースのワールドシリーズ、見たいなぁ。このマッチアップになれば、めちゃくちゃ楽しみですよね。
五十嵐亮太氏とオカモト
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道生まれ。千葉・敬愛学園から97年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ2年目の99年にリリーフとして頭角を現し、一軍に定着。04年はクローザーとして37セーブを挙げ、最優秀救援投手賞のタイトルを獲得。09年オフにメジャー挑戦を表明し、メッツと契約。12年はブルージェイズ、ヤンキースでプレーし、13年にソフトバンクと契約し日本球界復帰。18年オフに戦力外となるも、ヤクルトと契約。19年は45試合に登板したが、20年10月に現役引退を表明。現在は解説者として活躍している。
オカモト"MOBY"タクヤ/ロックバンドSCOOBIE DOのドラマー。J SPORTS・SPOTV NOW・ABEMAにて試合解説を担当。NHK「ミュージックMLB」ナレーション。FMおだわら「ベースボールは歌う」MC。著書に『ベースボール・イズ・ミュージック!』(左右社)。MLB観戦歴は35年以上。カブスの大ファン。
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