ワールドカップ(W杯)・アジア最終予選を戦っているサッカー日本代表。初戦の中国戦7-0、第2戦のバーレーン戦5-0と、計12得点を奪う2戦連続の圧勝だった。だが、いまだ「今後は難しい戦いになる」と、警戒論を述べる人が多い。どこに「問題」や…

 ワールドカップ(W杯)・アジア最終予選を戦っているサッカー日本代表。初戦の中国戦7-0、第2戦のバーレーン戦5-0と、計12得点を奪う2戦連続の圧勝だった。だが、いまだ「今後は難しい戦いになる」と、警戒論を述べる人が多い。どこに「問題」や「落とし穴」があるのか。サッカージャーナリスト後藤健生が分析する。

■ドイツ大会で「逆転負け」した強豪国と…

 10月に入ると、再び代表ウィークが始まり、日本代表はワールドカップ・アジア最終予選でサウジアラビア、オーストラリアと対戦する。ともにカタール大会に出場し、グループリーグを勝ち抜いたアジアの強豪国である。

 9月シリーズでは中国とバーレーンに圧勝した日本代表だが、今回の対戦国は毎回のように最終予選でワールドカップ出場権を懸けて争い続けてきたライバル国だ。

 歴史的に見ても、サウジアラビアはかつてのアジア最強国。中東諸国の先陣を切って強化してきた。1980年代には、日本代表にとって、到底かなう相手ではなかった。

 1992年の広島アジアカップ決勝で、サウジアラビアを下して日本が優勝したときには、ピッチ上に崩れ落ちたサウジアラビアの選手たちの姿を見て、夢のように感じたものだ。

 一方、オーストラリアはラグビー系フットボール(13人制リーグ・ラグビー、15人制ユニオン・ラグビー、オーストラリアン・フットボール)が盛んな国で、サッカーは日本と同じく、いわば新興スポーツだった。日本とは1960年代から何度も対戦があったが、常にオーストラリアが一歩先行しており、日本にとってワールドカップ出場がまだ夢のまた夢だった1974年に、オーストラリアは西ドイツ大会で初出場を実現していた。

 21世紀に入っても、オーストラリアは常に日本の前に立ちはだかる強豪国で、2006年のドイツ・ワールドカップ初戦でジーコ監督の日本が逆転負けを喫したのは記憶に新しい。

 だが、前回のカタール大会予選で、日本はサウジアラビアとは1勝1敗だったが、オーストラリアには2連勝。アウェーのオーストラリア戦では、途中出場した三笘薫の2ゴールで競り勝って予選突破を決めることになった。

 この両国と対戦する10月の2試合は、今回のアジア最終予選最大のヤマ場と言うことができる(オーストラリアとの再戦は来年の6月だが、すでに「消化試合」になっている可能性が高い)。

■前回、前々回は「ホーム初戦」で敗戦

 僕は、今回の最終予選の日程が決まったときに、「最初の3試合が難関だろう」と思った。

 9月は、ヨーロッパのシーズン開幕直後で日本の選手たちのコンディションが上がり切っていない状態での戦いとなり、選手はクラブの試合を終えてから集合し、2日程度のトレーニングで初戦に臨まなければならない。それに対して、初戦の対戦相手国(今回は中国)は万全の準備をして挑んでくる。

 実際、前回、前々回の最終予選では、ホームでの初戦で日本は敗れていたのだ。

 2戦目のバーレーンとのアウェー戦は、気象コンディションが最大の難関だった。9月のバーレーン戦は35度を超える高温多湿のコンディションの中での試合となる。バーレーンにとってもオーストラリア遠征後の戦いなので万全からはほど遠いだろうが、それにしても難しい試合になると思われた。

 そして、最後が10月のアウェーでのサウジアラビア戦。

 サウジアラビアはこのグループでの最強のライバルだ。ほとんどの選手が国内組というサウジアラビアは、国際試合の多くを中東地域で行うことが多いので長距離移動には慣れていないが、ホームではやはり強いはず。さらに、10月になっても、サウジアラビアは相当の高温に見舞われることは間違いない。

 だから、「最初の3試合が難しいだろう」と思っていたのだ。

 逆に言えば、この3試合を無敗で乗り切り、最低でも勝点5(1勝2分)くらいを取ることができれば、予選突破はほぼ確実になるだろうと思っていた。

■9月シリーズ「期待を超える」結果

 ところが、フタを開けてみると、9月シリーズは日本代表が開幕2連勝。しかも、7対0、5対0という圧勝に終わったのだ。

「最初の3試合は難しそう」と思ってはいたが、僕はかなり楽観的ではあった。

 日本のチーム力は、3年前のカタール大会予選の頃に比べれば、かなり上がっているはずだ。森保一監督の下で、ワールドカップ本大会など数多くのゲームを重ねてコンビネーションは確立され、3バックと4バックを使い分けられるようになっていたし、選手たちの多くは3年前よりワンランク上の、ヨーロッパ5大リーグのトップクラスのチームで主力として活躍するようになっていた。

 だから、9月の2試合も2対0とか、3対0といったスコアで完勝できると期待していた。だが、そんな僕の楽観的な期待よりはるかに上のスコアで日本代表は好発進を切った。

 そこで、これからはワールドカップ予選を巡っても「楽観論」が支配的になることだろうと思っていたのだが、どうやら今でもまだ「ワールドカップ予選に楽な試合はない」といった「警戒論」を述べる人が多いようだ。

 これは、いったい、どうしてなのだろうか?

いま一番読まれている記事を読む