アメフト・品川CCブルザイズ(以下ブルザイズ)が積極的なコラボレーションに取り組んでいる。従来にない画期的な取り組みもあり、スローガン「CHANGE」が進みつつあることを感じさせる。 「X1AREA所属チームを知っている人は少ないと思います…
アメフト・品川CCブルザイズ(以下ブルザイズ)が積極的なコラボレーションに取り組んでいる。従来にない画期的な取り組みもあり、スローガン「CHANGE」が進みつつあることを感じさせる。
「X1AREA所属チームを知っている人は少ないと思います」とブルザイズGM・岸原直人氏は、現実を踏まえて語り始めた。
「ブルザイズというチームの存在を知ってもらうことが大事。少しでも興味を持っていただき支援してもらえるようにする。そのためには既成概念を打ち壊したコラボにも積極的に取り組んでいます」
国内アメフト・XリーグではX1SUPERが最高峰で、その下にX1AREAがある。ブルザイズが目指すはX1SUPER昇格であり、本拠地とする品川駅港南口を中心とした「グレーター品川エリア」へのさらなる浸透だ。
「アメフト人気が下がっている中、いわゆるアメフト界のプラットフォームだけに乗っているだけではダメ。他業種とのコラボをすることで、ブルザイズの知名度を広げることに取り組んでいます。」
「ブルザイズ・ファミリーの一員になってもらうと共に、先方に少しでもプラスになってくれればと考えています。手探りで始めたところなので、今は縁がある方々とのコラボが多いです。こうしたコラボの輪をどんどん広げていきたいです」
~ブルザイズ・ファミリーが身体のコンディションを良好に維持するためのコラボ
ブルザイズの理念に共感しているOBたちは、コラボに喜んで賛同してくれたという。
チームの1990年代を支えた外山裕之氏は、「お世話になったチームに何もできていなかったので、お役に立てる機会が来ました」と語る。
「ワークアウト前に摂取することで効果が高まるプロテインを開発しました。恵まれた環境にある他チームに対抗するためには同じことをやっていてもダメ。少しでも効率を高めて欲しいですから」
プロテインはワークアウト後の摂取が常識。これまでの定説を覆す世界初のトレーニング前専用プロテインの開発は各方面から注目が集まった。「チーム強化に繋げて欲しい」と外山氏は大きな期待を寄せている。
「最後まで勝ちに対する思いを持ち続けるためにも、健康でアクティブな身体を作り上げて欲しい」と力を込めるのは、米国留学でフィットネスを学び、2020年代にチームへ加入した持田祥太氏。
「トレーニングや栄養学などのフィットネスを多角的に学び、クロスフィットのコーチ・トレーナーになりました。ブルザイズのために何かをしたいとずっと思っていました」
「現役選手のパフォーマンス向上はもちろん、多くの方にクロスフィットやウエイトリフティングの魅力が伝わり、健康でアクティブになって欲しい」とも付け加えてくれた。
ブルザイズ時代は、恵まれない環境で勝利を目指すタフさを経験した。コンディション維持の重要性を熟知している男たちとの共闘は大きな力になるはずだ。
~より良い人生を作り出すためのコラボ
フィールド上のみでなく、「ブルザイズを通じて人生やビジネスを豊かにする」(岸原氏)ことを目指すコラボもある。
「アメフトは体力やパワーだけでなくデータと頭の勝負の部分も大きい。アメフトから統計へ興味をもってもらえたらうれしいです」と笑うのは、ブルザイズがX1昇格を決めた2000年代後半から10年代に副将を務めた表孝憲氏。
「現役時代は多くの仲間と共に仕事をやりくりしながら過ごし、大変でしたが充実したものでした。現役の皆さんが活躍されているのに刺激をいただいてます。グレーター品川を本拠地として、市民チームとして活動の幅を広げているブルザイズを応援しています」
起業家としても著名な表氏は、統計に関する書籍も書き上げているプロフェッショナルだ。
チームOBとはいえアメフトと統計学では何の親和性もなさそうに思えるが、「ブルザイズが大事にしていることがそこにはある」と岸原氏は付け加えてくれる。
「ブルザイズを通じて良い環境と最高の人生を手に入れて欲しい。選手、関係者が統計学に興味を持つことで人生の大きなヒントを得られるかもしれない。ビジネスはもちろん、自分自身の成長にも繋がるとチームの存在価値もあるのではないか。自ら環境を作り出す、がチームコンセプトですから」
~サラダ、ビール、コーヒーなど、誰もが楽しめるコラボ
ブルザイズは選手だけではなく、関係者やファン、そしてグレーター品川エリアにいる多くの人たちのものだ。そういった全ての人たちに向けてのコラボも行っている。
「地域やご縁を大切にするチームに注目していますし頑張って欲しい」と大きな期待を込めるのは、米国で主流のパワーサラダ(主食になるサラダ)を日本で展開する水野裕嗣氏。
水野氏は日本テレビ系情報番組『ZIP!』ディレクターから飲食業界へ転職したことが話題となった。エンタメの最前線を知る男とブルザイズがコラボを組んだことがおもしろい。
「ブルサイズの選手、関係者には普段からパワーサラダを食べていただいています。ファンの皆さんを含め、チームに関するすべての人の健康と身体作りにお役立ちできれば嬉しいです。人生をより良くするために大事なのは食事です」
「社会人になっても夢中になってアメフトに打ち込む選手や関係者は、本当に素敵だなと思います。チーム運営も含め大変だと思いますがトップリーグまで駆け上がって行ってほしい
「スタジアムへ来ていただいたファンの方々に喜んでいただける、クラフトビールとのコラボもあります」と岸原氏は続ける。
「昨年からは横浜みなとみらいのクラフトビールブルワリーと縁があり、彼らのクラフトビールをコラボして販売させていただいています。ブルザイズとビールのイメージカラーが似ているという共通点がきっかけでした。チームの勝利を見届け美味しいビールを飲み干して欲しいです」
「グレーター品川エリアのカンパニーが作るコーヒーとのコラボもあります。ディップスタイル(ティーパック式)のものが1個から購入できるので、お子様連れの方などにも人気です」
ブルザイズは創部31年目の昨季2023年を新1年目と位置付けている。「グレーター品川のヒーロー」というチームスローガンを掲げ、今季からは「CHANGE」も新たに加わった。「今後についての明確なビジョンを持っています」(岸原氏)と説明してくれた。
「地元との関係を大切にすることが重要なのは変わりません。グレーター品川エリアで欠かせない存在になることが生命線。加えて知名度を高めていくことも必要なので、多くの方々に関心を持っていただけるようにコラボをやりたいです」
「グレーター品川エリアは多様性の場所です。長く住んでいる方、新たに移り住んできた方、そしてビジネスで訪れる方…。そういう多様な人々に幅広く知ってもらえるようにしたい。そのためには多種多様な越境コラボは大きな武器になると思います」
今季初戦となった9月7日、警視庁イーグルス戦(富士通スタジアム川崎)は「7-0」の大接戦を制した。観客席にいたファンは歓喜に沸き、試合後の選手と交流を交わす姿が印象に残った。
「勝てば会場へも足を運んでくれるし、支援もしてくれるはず」と岸原氏も満面の笑顔だった。しかし第2戦の9月23日、電通キャタピラーズ戦は「3-62」と惨敗を喫してしまった。
「会場へ来てくれた人たちに本当に申し訳ないと思っています。でも、下を向いている時間はありません。グラウンド内は選手たちに頑張ってもらい、我々はプレー環境改善のために動き続けます」
勝負事に絶対はない。この日のように奈落の底に落とされるような経験もするだろう。しかし、多くのコラボが生まれつつあり、支援の輪も少しずつ広がっている中で立ち止まっている暇はない。落ちてしまったら登れば良い。前進をやめないことこそ「CHANGE」ではないだろうか。
ブルザイズは正しい方向への強い力を持ったベクトルに沿って、これからも進み続ける。
(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力・品川CCブルザイズ、港南振興会)