悲願の初優勝から約4カ月、広島ドラゴンフライズの新章が幕を開ける。 昨シーズンは終盤の快進撃で2年連続のチャンピオンシップに…

 悲願の初優勝から約4カ月、広島ドラゴンフライズの新章が幕を開ける。

 昨シーズンは終盤の快進撃で2年連続のチャンピオンシップに進出し、勢いそのままに上位チームをなぎ倒して下剋上を達成。クラブ創設10年目、B1昇格4年目で初のチャンピオンに輝いた。優勝に導いたカイル・ミリングヘッドコーチはこの夏で退団し、昨シーズンかぎりで現役を引退したクラブレジェンドの朝山正悟が新たに指揮官に就任。新体制で連覇を目指す。

 まずは昨シーズン優勝を手繰り寄せた粘り強く強固なディフェンスを継続できるかがカギになる。それをベースに、速いトランジションやアグレッシブなプレーの追求を掲げ、オフェンス面の改善にも挑む。岡崎修司ゼネラルマネージャーの言葉を借りると、「継承」と「革新」のシーズン。朝山新HCが築き上げていくスタイルに期待がかかる。

 ロースターはほぼ継続だが、優勝メンバーからは引退した朝山の他にアイザイア・マーフィーと船生誠也が退団。要所で攻守に活躍した2人の抜けた穴は大きい。その一方で、3Pシュートを得意とする日本人ビッグマンの市川真人と3年ぶりの復帰となった左利きスコアラーの渡部琉が加入。新たな競争とオプションをもたらすはずだ。

 シーズン序盤のスタメンは昨シーズン終盤と同様に中村拓人、ドウェイン・エバンス、ニック・メイヨ、山崎稜、三谷桂司朗の布陣が軸になりそうだ。新キャプテンには26歳の上澤俊喜が就任。新戦力の2人を含めて成長著しい若手も多く、チームの伸びしろは大きい。

 9月のプレシーズンマッチ2試合はどちらも20点差以上をつけられて完敗。不安な結果を残して開幕を迎えるが、ここからシーズンを通して成長を遂げるのが王者広島の姿だろう。今シーズンはB1と天皇杯に加えて、EASLにも初参戦。広島らしく日本一のチャレンジャーとして、3冠を目指して新章を突き進む。

■KEY PLAYER/PG #0 寺嶋良


 昨シーズン優勝の要因のひとつは「チームの一体感」。今シーズンも全員がキーマンとして一丸で戦ってこそ広島の強みが出てくる。その中で1人だけ挙げるのであれば、復帰に期待がかかる寺嶋良だ。昨シーズンは39試合に先発出場し、1試合平均10.6得点3.6アシストなどでチームをけん引していたが、シーズン途中の3月に大怪我を負って戦線離脱。松葉杖をついたまま優勝の瞬間を見守った。

 今シーズンは寺嶋にとって再起の年。復帰時期はまだ不透明だが、鋭いドライブと高い得点能力を誇るエースガードの完全復活がチームに勢いをもたらすのは間違いない。急成長した中村など伸び盛りのPGたちとの競争も楽しみなポイントだ。立てなかった大舞台に忘れ物を取りに行くために、チームを勝利に導くエースを誰もが待っている。

文=湊昂大