国内では3回目のX Gamesとなる「X Games Chiba 2024」が幕張メッセ(千葉県千葉市幕張)にて2024年9月20日(金)~22日(日)に開催され、BMX競技からはフリースタイルの「パーク」、「パーク・ベストトリック」、「ス…

国内では3回目のX Gamesとなる「X Games Chiba 2024」が幕張メッセ(千葉県千葉市幕張)にて2024年9月20日(金)~22日(日)に開催され、BMX競技からはフリースタイルの「パーク」、「パーク・ベストトリック」、「ストリート」の3種目により日本人の活躍はもちろんのこと、X Gamesの歴史に新たな1ページを刻む快挙も成し遂げられた一戦が繰り広げられた。なお日本人選手最高位はX Gamesでは自身5年ぶりの銀メダル獲得となった中村輪夢選手(所属:ウィングアーク1st)の準優勝となった。

今回のX Games Chiba 2024にて大きな変わった点は、会場を前回のZOZOマリンスタジアムから幕張メッセに移したことであり、観客は天候に左右されない環境の中、より間近で世界最高峰のトップアスリートの走りを見られる会場づくりに大熱狂の中で各競技は進んでいった。

さらに今大会の各種目はベストトリックを除いて、通常の世界大会と同様にラン終了後にスコアがリアルタイムで表示されるシステムであり、高難度トリックやセクションの使い方でどう配点が変わるのかが選手たちや観客にもイメージしやすくなる中、まさに「X Games」というような各々のスタイルと大技が光るBMXが持つカルチャーがふんだんに表現された戦いが見られた。

そして何より忘れてはいけないX Gamesのもう一つの魅力は、大会ごとにその国を象徴した特徴的なセクションが用意されること。今回も日本開催ということから、パークコースでは開催時期の秋をイメージした色合いの中に寺社を模したセクションも用意され、一方でストリートのコースでは所々に盆栽もあしらわれて全体的に緑をモチーフにした中に大小様々なセクションが設置されるなど、両コースにてどのようにライダーたちがセクションを活用して観客に魅せるライディングするのかが注目された。

本記事では今大会各種目での注目選手と日本人選手の活躍をまとめた大会レポートを紹介する。

パーク種目はパリ五輪後初戦となった中村輪夢が5年ぶりに銀メダルを獲得し、幸先良い新たなスタートを切った。

パーク決勝当日の21日は前日の予選を勝ち上がった8名により争われ、40秒間のランを3本走行しその中で最も良い得点のランが採用されるベストランフォーマットでの戦いとなった。


ローガン・マーティン ©Brett Wilhelm/X Games

今回見事金メダルを獲得したのは、通称「ミスターパーフェクト」のローガン・マーティン(オーストラリア)。「X Games Chiba 2022」の勝者であり、今までに8個のX Games金メダルを獲得していた彼は、3本のランを通して「バックフリップテールウィップ」、「トリプルテールウィップ」、「720・バースピン」、「ダブルフレア」などの高難度トリックはもちろんのことハイエアーとスタイルを織り交ぜた見事なクリーンランで、2本目では92.33ptをマーク。

ラン3本目ではアップデートできずも2本目の得点を守り切り、自身9個目のX Games金メダルを獲得し、レジェンドBMXライダーであるスコッティ・クラマーとデイブ・ミラに並び過去最多のBMXパークメダリストとなった。パリオリンピックではミスが続きメダルを逃すなど、最近なかなか勝てていない時期を過ごしていただけに今回の金メダル獲得は、非常に嬉しい結果だったはずに違いない。復調した今後の彼のライディングにも注目だ。


中村輪夢 ©Brett Wilhelm/X Games

銀メダルは今回日本人唯一の招待選手として参加した中村輪夢。前日の予選を1位で通過して絶好調で決勝へ駒を進めた彼は、ラン2本目でハイエアーを活かした豪快な「フレアダブルバースピン to レイトターンダウン」や「トリプルバースピン」をメイク。その後も各セクションでトリックを入れるトリックアフタートリックでランを進め、最後はブザーと同時にボックスジャンプで「360・テールウィップ to ダウンサイドテールウィップ」をメイクし91.33ptをマークし2位まで浮上。しかし3本目ではミスもありスコアを伸ばせなかったが、2019年の「X Games Minneapolis 2019」以来5年ぶり自身2度目の銀メダルとなった。

中村も前回の「X Games Chiba 2023」で7位、パリオリンピックでは5位となかなか結果に繋げられていない時期が続いていたため今回のメダル獲得は悔しい反面、今後に弾みをつけるに違いない。

銅メダルには「X Games Chiba」にて2度目の出場となり、「X Games Ventura 2024」では金メダルを獲得したアメリカ合衆国のマーカス・クリストファー(アメリカ合衆国)。スピーディーのライディングの中で繰り出す豪快なトリックが特徴な彼は、得意技でもある「トリプルダウンサイドテールウィップ」や、ディープエンドでの「フレアタックノーハンド to レイトダウンサイドテールウィップ」、ラストトリックには「540・フレア」もメイクし、ラン1本目で90.33ptをマーク。暫定1位の位置からラン2本目、3本目では得点を伸ばせずも表彰台の座を守り切り、見事銅メダルを獲得した。

パーク・ベストトリックは各選手が異次元のトリックに挑戦し、時間内に見事にメイクしたダニエル・サントバルが金メダルを獲得


ダニエル・サンドバル ©Brett Wilhelm/X Games

大会最終日に開催された同競技のベストトリック。前日に行われた通常のラン種目とは違い、一発のトリックの難易度が競われるこの種目ではまたBMXフリースタイル史に新たな歴史の1ページが刻まれた世紀の一戦となった。

今大会の競技フォーマットは20分のジャムセッションの中でのベストトリック採用方式で8名の招待選手が出場。本種目には3大会連続のベストトリック金メダルを狙うビックスマイルが素敵な日本で大人気のケビン・ペラザ(メキシコ)や、本種目だけの出場となった世界初のトリックを生み出し続けるライアン・ウィリアムス(オーストラリア)らが参加した。

以下は入賞者3名が魅せた特に印象に残ったベストトリックを紹介。


ダニエル・サンドバル ©Brett Wilhelm/X Games

まずはラストトリックで今回一の会場の盛り上がりを起こしたダニエル・サンドバル(アメリカ合衆国)の「フレアダブルテールウィップ to レイトバースピン」を紹介。このトリックはクオーターでバックフリップに180度回転を入れた中で、2回テールウィップを決めてその後にバースピンを入れる4コンボの超大技。これはサンドバルが過去に見せた「フレアダブルテールウィップ」をさらにアップデートしたトリックであり、特にハイエアーでの滞空時間とバランスがモノを言う彼だからメイクできたトリックだろう。このトリックをラストトリックで決めきれるそのメンタルとスキルの高さに脱帽だ。このトリックで前回の千葉大会では銀色だったメダルを見事金色に塗り替えてみせた。


ジェレミー・マロット ©Brett Wilhelm/X Games

そして本種目で銀メダルを獲得したのは時間ギリギリのラストトリックでジェレミー・マロット(アメリカ合衆国)がボックスジャンプのバックワーズでメイクした「180・ダブルテールウィップ to バースピン」だ。180度回転という背中側で着地面が見えない状態で降りるためそもそもダブルテールウィップを決め切る時点で超高難度な大技なのだが、さらに着地直前にバースピンを加えてそのまま着地後すぐターンという完全メイクで決めきった。まさにバランス、タイミング、恐怖心に勝つことなど全てがぴったり噛み合わないこのトリック。サンドバルに逆転される直前まで暫定1位となる見事なトリックだった。

なおサンドバルとは親友でトレーニング仲間であるマロット。とても嬉しいワンツーフィニッシュになったことだろう。


マーカス・クリストファー ©Brett Wilhelm/X Games

最後は今回パーク種目に加え、同じく2個目のX Games銅メダルを獲得した、マーカス・クリストファー(アメリカ合衆国)がメイクした「クアッドテールウィップ」。このバイクを4回転回すのが超高難度トリックをディープエンド部分でハイエアーと共にメイクしたことで余裕を持ってペダルキャッチして見せた。なお同トリックは昨年の「X Games Chiba 2023」でキーラン・ライリー(イギリス)が銅メダルを獲得した際に決めたトリックと一緒で偶然ではあるもののこのトリックの難易度を示した。

もちろん入賞争いに加わらなかっただけで、他5名の選手のトリックも個性と難易度が掛け算になったカッコいいトリックをメイクしていた。またライアン・ウィリアムス(オーストラリア)がトライした決まれば世界初のクオーターでの「ダブルバックフリップ to フェイキー」など、メイクしていればメダル争いに加わるトリックも多く、改めてBMXフリースタイルのトリックレベルの進化を実感させられた。実況もまるでビデオゲームのようだと形容するほど異次元のレベルに突入していた。

X Gamesの歴史を塗り替える。過去最高金メダル獲得数を更新したレイノルズと日本人初のストリート種目出場を果たした溝垣丈司


ギャレット・レイノルズ ©Brett Wilhelm/X Games

大会最終日に開催されたBMXストリートの決勝ではスケートボードストリート種目と同じ、階段や手すりなど街中の人工物を模したセクションが用意されたストリートのコースを使用。招待選手8名により45秒間のランを2本走行した後、良い得点のランが採用されるベストラン方式で争われた。

今回の金メダルは、今までにX Gamesで15個の金メダルを獲得し、過去4回のX Gamesで歴代最多金メダル記録の更新を試みてきた絶対王者ギャレット・レイノルズが念願の獲得。
ラン1本目ではトリックに失敗しサドルが真っ二つに折れるアクシデントもあったが、優勝をかけて臨んだラン3本目では「ダブルペグアップレール・ハード180ダブルバースピン」、「360オーバーレール」、「ダブルバースピン・オポジットトゥースピックハンガーグラインド」などの技を決め87.66ptをマークすると一気にデボン・スマイリーを追い越し優勝。ついに自身が追い求めてきたX Games歴代最多金メダル記録である16個目を獲得し記録を更新した。


デボン・スマイリー ©Brett Wilhelm/X Games

銀メダルはマニュアルを使ったトランジションから繰り出すトリックに定評のあるデボン・スマイリー。今回も細かいマニュアルを駆使した中に様々なレールでのグラインドトリックを魅せると随所に細かく「バースピン」などのトリックを加えていく。特にハイレベルだったのはバンクへマニュアルで侵入するとそのままフェイキーマニュアルで後退しバンクに入り、そこからもフェイキーで平地で進むとバンクに上がりも「フェイキースイッチバースピン」を見事に自身のスタイルを見せるフルメイクランで、ラン2本目を得点85.66ptをマークし、3本目も得点を守り切ると銀メダル獲得となった。


コウレッジ・アダムス ©Brett Wilhelm/X Games

銅メダルはナイジェリアのコウレッジ・アダムス。彼の得意とする「ノーズマニュアル」と「マニュアル」をベースし、マニュアルからバニーホップで「バースピン」を決めてハンドレールへ「アイスピック」を決めたり、他のレールでの「180バックワーズクルックドグラインド to 180アウト」も印象的だったが途中で足をついたことで減点され83.66ptをマーク。足をついてなければ金メダルに迫るランだったのが悔やまれるが銅メダルを獲得した。

今回、日本のX Gamesの歴史に新たな1ページを刻んだのは確実に溝垣丈司の出場だろう。本種目日本人初の出場選手となった彼は、パークを主戦場にするもストリートのテイストをスタイルに落とし込んでいるライダーだ。X Gamesではパークよりも先にストリートへの出場となったが見事なスタイリッシュなライディングを見せた。
結果としては転倒もあり望ましいかたちにはならなかったがインパクトのある900やフェイキーのコンビネーショントリックで爪痕を残した。ワールドカップなどの世界大会はもちろんのことX Gamesでの彼の今後の活躍にも期待したい。

今回は開催されなかったBMXフラットランドだが、トップライダーの内野洋平によるスペシャルショーケースが大会を彩った。


内野洋平 ©Jason Halayko/X Games

「X Games Chiba 2022」で19年ぶりの復活となり「X Games Chiba 2023」でも開催されたBMXフラットランド種目だったが、今回は諸事情に開催されなかったのものの、最終日にはスペシャルショーケースにて、日本人最多の11回の世界タイトルを保持しBMXフラットランドシーンを牽引する内野洋平のパフォーマンスで会場を盛り上げた。終盤ではゲストパフォーマーとして来場したブレイキンのShigekixとコラボしてパフォーマンスを見せると会場内は熱気で包まれた。


Shigekixと内野洋平のコラボレーション ©Jason Halayko/X Games

大会結果


左から中村、マーティン、クリストファーの順
©Brett Wilhelm/X Games

BMXパーク

優勝 ローガン・マーティン(オーストラリア)/ 92.33pt
準優勝 中村 輪夢(日本)/ 92.33pt
3位 マーカス・クリストファー(アメリカ合衆国)/ 90.33pt
4位 ダニエル・サンドバル(アメリカ合衆国)/ 89.00pt
5位 ジャスティン・ドーウェル(アメリカ合衆国)/ 86.00pt
6位 ブランドン・ルーポス(オーストラリア)/ 83.66pt
7位 ブレイディ・ベイカー(アメリカ合衆国)/ 81.66pt
8位 ケビン・ペラザ(メキシコ)/ 77.33pt


左からマロット、サンドバル、クリストファーの順
©Brett Wilhelm/X Games

BMXパーク・ベストトリック

優勝 ダニエル・サンドバル / アメリカ合衆国
準優勝 ジェレミー・マロット / アメリカ合衆国
3位 マーカス・クリストファー / アメリカ合衆国 
4位 ジャスティン・ドーウェル/ アメリカ合衆国
5位 マイク・バーガ / カナダ
6位 ブランドン・ルーポス / オーストラリア
7位 ケビン・ペラザ / メキシコ
8位 ライアン・ウィリアムス / オーストラリア 


左からスマイリー、レイノルズ、アダムスの順
©Brett Wilhelm/X Games

BMXストリート

優勝 ギャレット・レイノルズ(アメリカ合衆国)/ 87.66pt
準優勝 デボン・スマイリー(アメリカ合衆国)/ 85.66pt
3位 コウレッジ・アダムス(スペイン)/ 83.66pt 
4位 フェリックス・プランゲンバーグ(ドイツ)/ 83.00pt
5位 ボイド・ヒルダー(オーストラリア)/ 73.66pt
6位 ジョーダン・ゴッドウィン(ウェールズ)/ 68.66pt
7位 ケビン・ペラザ(メキシコ)/ 65.33pt
8位 溝垣 丈司(日本)/ 64.66pt

大会概要

⼤会名称 : X Games Chiba 2024
開催期間 : 2024年9月20日(金)~22日(日) – 3日間 (一般開場は21~22日の2日間)-※詳細は公式HPをご覧ください。
大会会場:幕張メッセ 国際展示場 展示ホール(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1) 
主催:X Games Japan 組織委員会
主管:千葉市 
協賛:Monster Energy、ムラサキスポーツ、スポーツくじ
後援:J-WAVE、BAYFM78
協力:X Games Japan 千葉後援会

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