今週末は、第58回スプリンターズS(GI、中山芝1200m)が行われる。

昨年の同レース覇者のクロフネ産駒ママコチャ、今年の高松宮記念を制したダークエンジェル産駒マッドクール、目下3連勝中のロードカナロア産駒サトノレーヴなど、多彩な血統構成の馬が集結。

ここでは、馬券検討のヒントとなる「血統」で本競走を攻略する。

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■スプリンターズSで注目のポカホンタスの血

スプリンターズSは距離短縮馬が狙い目になることが多い。中山開催近10回における前走距離別の成績を見ると、前走で1200mを使っていた馬が複勝率17.0%に対し、距離短縮組の複勝率は31.8%。複勝回収率も同距離組が65%に対し、短縮組は130%なので狙いとしてはこちら。

そんな距離短縮で好走した馬の血統表を眺めていてふと思ったのが、「トムロルフ&チーフテン兄弟の血を引く馬多くね?」という点。トムロルフとチーフテンの両方を引いていたレッドファルクスを筆頭に、レッツゴードンキやワンスインナムーン、シヴァージがこの条件に当てはまっていた。

ということで、中山開催近10回の当レースにおける距離短縮組のうち、トムロルフ&チーフテン兄弟の母ポカホンタスの血を引く馬の成績を調べてみると以下のとおりに。

ポカホンタス有【2-1-2-7】  勝率16.7% 連対率25.0% 複勝率41.7% ポカホンタス無【0-1-1-8】  勝率0.0% 連対率10.0% 複勝率20.0%

綺麗に明暗が分かれる格好。明らかにポカホンタスの血を有する群の方が成績が良い。

■勢いのある馬に素直に乗るのも有効

このポカホンタス、かつて「繁殖牝馬の皇后」と呼ばれた名牝とは別の馬なのだが、こちらも優秀な繁殖牝馬。プリークネスS勝ち馬のトムロルフや種牡馬チーフテン、アルザオの母レディレベッカなどを送り出した。

ポカホンタスの父ローマンは北米屈指のパワーを伝える馬力血統。とにかく脚の回転が速くて短い距離をワーッと走り切ってしまうようなイメージの血で、そういった血を薄くても良いから引いておくことが、1200mへの短縮にも対応できる素地となるのだろう。

また1200mを直前のステップにここへ挑んだ馬でも、春先に長めの距離を使っていた組からの好走事例は少なくない。

あわせて格下のレースから勢いをつけて臨む馬が好成績を残すことも多く、例えば13年のこのレースで15人気ながら3着に突っ込んだマヤノリュウジンは春先まで条件馬だったうえ、勝った3勝クラスは阪神芝1400mが舞台。

15年9人気3着のウキヨノカゼも春先まではマイルの条件戦でうだつが上がらない成績を続けていたが、夏の函館で初めて1200mを使うと、3勝クラス→キーンランドCと連勝し、スプリンターズSでも好走した。

短距離GIは勢いが大事。鮮度、フレッシュさと言い換えられるかもしれないが、1200mのGIや重賞で勝ったり負けたりを繰り返している馬よりも、フレッシュですり減ってない別路線組、実績で見劣るものの勢いに乗る馬を狙うのが奏功することも少なくない。

昨年のママコチャはまさにそれで、1400mのリステッド安土城S勝ち、初の1200m北九州記念2着を経由して挑んだ初の1200mGIスプリンターズSをいきなり持っていった。

格を気にせず勢いのある馬に素直に乗るのも有効な馬券戦術になりそうだ。

■ローテの妙を感じるウインマーベル

今回注目したいのは、ポカホンタス持ちの馬。ここでは該当馬のウインマーベルをピックアップする。

父はケンタッキーダービーなどを制したアイルハヴアナザー。母コスモマーベラスは紫苑SやターコイズSなど中山コースを中心にJRAで7勝を挙げた活躍馬だった。

アイルハヴアナザー×フジキセキの組み合わせは、芝ではウインマーベル、ダートではアナザートゥルースというアイルハヴアナザーの代表産駒を送り出す好相性の組み合わせ。アイルハヴアナザー自身がダンジグ4×4、ミスプロ4×4などクロスがうるさい種牡馬なので、母父に強いクロスを持たないフジキセキを持ってくるのが配合のリズムとしてプラスということだろう。

OP特別2勝で重賞でも馬券になったオメガレインボーも母父はアグネスタキオンで、強いクロスを持たない母父という共通点があった。

昨年末の阪神Cを制して以降は1400mを主戦場にしており、今年1200mを使ったのは高松宮記念のみ。前走の京王杯SCも1400mで強いレースを見せた。

アイルハヴアナザーがトムロルフの血を引くので、注目ポイントとした距離短縮のポカホンタス持ちという点に合致するうえ、今年は1200m重賞でヘンに消耗しなかったのがかえって良い方に出るのでは?

叩き良化のイメージもあるが、あえて1200mの前哨戦を使わなかったのが奏功する可能性を考えておきたい。

あとは枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論に至りたい。

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著者プロフィール

ドクトル井上 【重賞深掘りプロジェクト】血統サイエンティスト。在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。