現役時代に4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が指摘■巨人 6ー0 DeNA(19日・東京ドーム) 巨人は19日、本拠地・東京ドームで行われたDeNA戦に6-0で快勝し、4年ぶりのリーグ優勝へのマジックを「8」に減らした。先発の…

現役時代に4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が指摘

■巨人 6ー0 DeNA(19日・東京ドーム)

 巨人は19日、本拠地・東京ドームで行われたDeNA戦に6-0で快勝し、4年ぶりのリーグ優勝へのマジックを「8」に減らした。先発の戸郷翔征投手が8回118球4安打無失点の快投で、自己最多に並ぶ12勝目(7敗)をマーク。勝負の9月に入ってから3戦3勝、21イニング無失点を誇っている。

 現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、この日の戸郷を「全てにおいて完璧」と称賛した。「コントロールの間違いが少なかったですし、いとも簡単に有利なカウントを作れていました。相手が真っすぐ狙いだと思えば、フォークやスライダーでいなして、仮に狙われていたとしても球威で上回れるケースでは、真っすぐを投げ込んでファウルを稼いでいた。大城(卓三捕手)との共同作業でもあるのですが、相手打者のことがしっかり見えていて、本当にうまいと思いました」とバッテリーを褒めた。

 初回に早々と3点の援護をもらった戸郷はこの日、最速で150キロを計測したストレートを軸に、フォーク、スライダー、時にはカーブもまじえてDeNAの強力打線を翻弄。4番のタイラー・オースティン内野手は、3打席3三振に仕留めた。

 巨人は前日の同カードで、8投手の継投で延長12回を引き分けに持ち込んでいた。なるべくリリーフ陣を休ませたいチーム事情の中で、戸郷は期待に応えた。点差が開いたこともあって9回だけは、前日に登板していなかった堀田賢慎投手にマウンドを譲った。

 巨人では今季、プロ12年目の34歳・菅野智之投手が復活を果たし、ハーラートップの14勝(2敗)をマーク。防御率1.73はリーグ4位だ。一方、6年目の24歳・戸郷は、菅野が過去に8度務めた開幕投手を初めて任され、これまで12勝7敗、防御率1.98(リーグ5位)。リーグ最多の173イニングを投げ、奪三振数「152」はリーグ断トツ。4完投と3完封はいずれも、阪神の才木浩人投手とリーグトップに並んでいる。

「何よりも最後まで投げ切れるところがチームにとってありがたい」

 あえてどちらか1人を選ぶとすれば、今季の「エース」と呼ぶにふさわしいのは、菅野なのか、戸郷なのか。野口氏は「見解が分かれるところだとは思いますが、僕は戸郷だと思います」と言い切る。

「何よりも最後まで投げ切れるところが、チームにとってありがたい。菅野も完投能力はありますが、これまでの故障歴や次の登板のことを考えると、早めに代えたくなります。一方、今回もそうであったように、チームは翌日の先発が戸郷となると、リリーフ投手を出し惜しみせずにたくさん使うことができる。そう思わせる投手が、エースだと思います」と圧倒的なタフネスを理由に挙げる。その上で「1人で“貯金12”を稼いでいる菅野に比べると、負け数が多いですが、勝敗は味方打線との兼ね合いもありますから」と付け加えた。

「戸郷はこれで3年連続12勝に到達しましたが、防御率、被打率などのスタッツは年々よくなっている。これでもまだ進化の途中です。素晴らしいですよ」と野口氏。2位・阪神などと予断を許さない優勝争いが続くシーズン最終盤、その後のポストシーズン……。戸郷が“エースの資格”を問われる局面はまだまだ先にある。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)