ドヘニーに何もさせずに圧倒した井上。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext  去る9月3日に東京・有明アリーナで行われたテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)戦は、ボクシングの世界スーパ…

 

ドヘニーに何もさせずに圧倒した井上。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 

 去る9月3日に東京・有明アリーナで行われたテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)戦は、ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)にとって消化不良だったのかもしれない。

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 最終的には7回TKOで勝負を決した。だが、試合開始から守戦を貫いたドヘニーが自ら棄権を申し出ての決着は、どこか盛り上がりに欠けた感はあった。それは井上本人が「自分が理想としていた終わり方ではないので、たぶん見に来てくれたファンの方もやっぱりそうだと思う。ちょっと中途半端な終わり方になってしまったかな」と認めるところでもある。

 そもそも37歳になるドヘニーの下馬評は高くはなかった。そうした中でベテラン戦士は、何とか勝機を見出そうとガードを固める戦術を選択したわけだが、キャリア28戦無敗25KOの「モンスター」の牙城は崩せなかった。

 ただ、ドヘニーとの試合展開には国内外で様々な意見が巻き起こった。そうした中で、挑戦者の選択、さらに井上の慎重かつ丁寧な戦いぶりに理解を示したのは、元WBO世界スーパーライト級王者のクリス・アルジェリ氏だ。

 米ボクシング専門YouTubeチャンネル『Inside Boxing Live』に出演したアルジェリ氏は「ドヘニーは色々な戦術を試みようとはしていた」と指摘。そして、よりアグレッシブな戦いを望む世間に苦言を呈するように、持論を展開した。

「問題はファンの期待が高すぎることだ。イノウエは『モンスター』と呼ばれ、神話的な存在になってしまっているから、どんな相手とも好戦的に戦うことを求められる。挙句の果てに、『さぁ、126ポンド(フェザー級)に上げろ』なんて勝手に言われるんだ。でも、彼も人間なんだよ」

 階級制のスポーツであるボクシングの難しさは熟知する。だからこそ、アルジェリ氏は「イノウエはすでに4つの階級に挑んでいる。時間をかけて階級を上げながら、経験豊富で、体格的に自分よりも大きな相手と戦ってきている」と熱弁を振るう。

「122ポンド(スーパーバンタム級)では、ドヘニー戦もそうだったが、明らかに体格の大きな相手と戦っているんだ。そんなイノウエを『試合内容がつまらない』と批判しているファンは、彼が人間であるという事実を見落としている。本当にクレイジーだ。より厳しい挑戦者や、上の階級で戦うことで、彼が期待に応えていることを理解すべきだ」

 元世界王者も認める井上の“異彩”さ。そんなモンスターの挑戦は、今後も大きな注目を集めるのは間違いない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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