サッカーのU-20女子ワールドカップで、日本代表が準決勝へとコマを進めた。しかも、前回大会優勝のスペインを破ってのこと…

 サッカーのU-20女子ワールドカップで、日本代表が準決勝へとコマを進めた。しかも、前回大会優勝のスペインを破ってのことである。年代別でも、A代表でも、男女ともに圧倒的な実力を誇るスペインに、日本は堂々と勝利したのだ。ヤングなでしこの戦いぶりから、サッカージャーナリスト後藤健生が日本サッカーの「未来」を予見する。

■毎回の上位進出が証明した「成功」

 この大会で毎回のように上位に顔を出しているということは、日本の女子サッカーの育成が成功していることの証明となる。

 登録メンバー21人の内訳を見ると、海外クラブ所属が4人(スウェーデンのクラブが2人とアメリカの大学所属が2人。女子サッカー界ではアメリカの大学リーグのレベルは非常に高い)。男子と同様、女子でも若くして海を渡る傾向が強まっている。

 また、日テレ・東京ヴェルディベレーザまたは同メニーナ所属が最多の5人と、相変わらず育成ではベレーザが日本をリードしていることが分かる。その他では、セレッソ大阪ヤンマーレディース所属(および同出身)が4人。セレッソ大阪は、WEリーグ入り前のなでしこリーグ時代に育成で成功していたクラブである。

 また、20歳以下とはいっても、すでにトップリーグであるWEリーグで活躍している選手も多い。

 MFの小山史乃観は、スウェーデンのユールゴルデンIF所属だが、セレッソ大阪の下部組織出身。高校生時代からなでしこリーグで活躍していた選手だったので、メンバー発表のときに、僕は「小山はまだ20歳以下だったのか!」と驚いてしまった。

 WEリーグで活躍している選手も多い。

 MFの角田楓佳(角田涼太朗=コルトレイク=の実妹)は昨年、WEリーグを制覇した三菱重工浦和レッズレディースという選手層の厚いチームの中で、準レギュラーとしてボランチを務めていた選手。対人プレーに強く、またパスセンスもあり、攻守に活躍していた。

 今大会の日本代表でトップを務め、すでに5ゴールを決めている土方麻椰も、ベレーザ所属でWEリーグでも活躍している。とくに、ベレーザは主力選手が相次いで海外移籍して行ったため、昨シーズン以来、若い選手中心の編成となっているので、トップリーグでの経験も豊富な選手が多い。

■WEリーグ開幕節「黄金カード」実現

 日本がスペインと対戦した9月15日には、WEリーグ2024/25シーズンの開幕節があり、東京の味の素フィールド西が丘では日テレ・東京ベレーザ対浦和レッズレディースという黄金カードが組まれていた。

 昨シーズン優勝の浦和は、得点女王となった清家貴子が海外移籍(ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン)を果たし、猶本光が長期離脱中など一部に選手の入れ替えはあったものの、昨年度の優勝メンバーが中心で完成度が高い。

 一方のベレーザはやはり若手中心で戦ったが、U-20日本代表に招集されている選手が多く、影響は大きかった。

 新しくWEリーグの理事長就任が決まった野々村芳和Jリーグチェアマン宮本恒靖日本サッカー協会会長も観戦に訪れた優勝候補同士の激突だけに、両チーム選手の意地もあって激しい展開となったが、やはり完成度の高い浦和がプレスをかけてベレーザを圧倒。

 2トップの一角、シャドー的なポジションで起用された塩越柚歩の積極的な仕掛けから先制した浦和が、後半にも1点を追加して2対0で勝利した。

 浦和の2点目は、左サイドの伊藤美紀から、ファーサイドのポスト際への長いクロスに、17歳の藤崎智子が詰めて、いったんはGKの野田になにブロックされたが、すぐに反応して決めたもの。

 開幕戦で先発に抜擢された注目の17歳が結果を出したのだ。

 浦和の楠瀬直木監督は「点を取れる選手」と藤崎を評したが、ゴール前での落ち着きは、その特別な才能の片鱗を見せた形だ。

■「ボールを失わない」テクニックを披露

 一方、ベレーザで注目を集めたのも同じく17歳の眞城美春。この試合ではベンチスタートだったが、前半の41分に投入され、立ち上がりから浦和に押し込まれたベレーザの盛り返しを託された。

 そして、ピッチ上では相手に囲まれてもボールを失わないテクニックや類稀なパスセンスも披露した。

 後半開始早々、眞城が前のスペースに出したパスに鈴木陽が反応して抜け出して決定的なチャンスが生まれ、72分には右タッチライン沿いのポジションから、中央を上がってきた菅野奏音を見つけてさりげないパスを出してベレーザの攻撃を組み立てた。終了間際の88分にも、菅野からのパスをワンタッチで岩崎心南に落として最後のビッグチャンスも演出。

 ベレーザではさらに若い16歳の青木夕菜も登場した。

 WEリーグ開幕戦では、こうしてコロンビアの地で戦っているU-20日本代表よりさらに若い世代の選手も活躍したのだ。

 彼女たちが目指すU-17女子ワールドカップは、今年の10月から11月にかけてカリブ海の島国、ドミニカ共和国で開催される。

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