アメフト・X1AREA所属の品川CCブルザイズ(以下ブルザイズ)が新たなフェーズへ突入した。今季は「CHANGE」をスローガンに掲げ、チーム強化と共に、品川駅港南口を中心としたグレーター品川エリアへのさらなる浸透を図る。「X1SUPER昇格…

アメフト・X1AREA所属の品川CCブルザイズ(以下ブルザイズ)が新たなフェーズへ突入した。今季は「CHANGE」をスローガンに掲げ、チーム強化と共に、品川駅港南口を中心としたグレーター品川エリアへのさらなる浸透を図る。「X1SUPER昇格」という大目標へ向け、今まで以上に着実な歩みを進め始めた。

「X1SUPER昇格」と「グレーター品川エリアへのさらなる浸透」の両立を進める。

「会社組織に近い、計画・戦略的なチーム運営が始まった感じがします」

 

チームのヘッドコーチ(以下HC)経験もある運営委員・竹本和弘氏が感じるブルザイズの変化を語ってくれた。

 

「ブルザイズは同好会の延長というか、まさにクラブチームの形態で長年やっていました。そのために認知度が低く、お金も集まらなくて運営が厳しい状態でした。品川CCの一員となったことで、少しずつ好転し始めました」

 

ブルザイズは1993年に松下電器産業(株)(当時)の関東地区メンバーを中心に発足。94年に日本社会人アメリカンフットボール協会(当時)へ準加盟、翌95年に4部へ正式加盟を果たした。98年からはXリーグ参入、2019年からは現在のX1AREAが主戦場となった。

品川CCへの参加で組織も変わりつつあり、選手のモチベーションも高まっている。

~品川 CCへの参加が「 CHANGE」を加速させた

チーム発足時の活動拠点は横浜市戸塚だったが諸事情で使用できなくなり、縁もあって2001年から品川エリアへ移った。2022年からは同エリアでサッカー、3×3 バスケ、チアの活動をしている地域総合スポーツクラブ「株式会社品川カルチャークラブ(品川CC)」に、そのアメフト部門として合流した。

 

「品川CCに参加したことでアメフトだけでなく、他競技の関係者やファンの方々まで裾野を広げられます。同じグループにいることでブルザイズをサポートしてもらえるし、その逆もあります」

 

「目に見える変化が起きつつあります。『地域に対するスポーツ全体の価値』に関して常に話し合っています。また経営面では、『どこに投資すれば効果的なのか?』というような話し合いもできるようになりました」

 

竹本氏は2003年から2005年まで選手としてブルザイズでプレー。その後しばらくはクラブから離れていたが、前GMから現体制への引き継ぎとなった2020年頃に復帰。チーム事情から2021年はHCを務め、その後は運営側でチームを支えている。

 

「HCは毎回練習に出たり、戦術の分析をしたりで大変な時間がかかる。本業との兼ね合いでそこは無理なので、運営の方を手伝おうと思っています。品川CCに参加してから、多くのことが日に日に充実し始めているのがわかる。やりがいがあります」

 

「何でもそうですが、大事なのは積み重ねと継続です。特に地域との関わりの部分は、単年でおしまいでは何も変わりませんから」と強調する。品川CCに参加しただけでなく、何を続けられるかを考えている。

長年チームを見続ける運営委員・竹本和弘氏は「目に見える変化が起きている」と語る。

~1つずつ積み重ねればどこかで大きな「CHANGE」が生じる

「地域活動も増えてきてオーガニックのブルザイズ・ファンも出始めました。彼らを大事にしつつ規模を広げていきたい」

 

品川CC取締役・長谷川洋氏はチームマネージメントに関わるだけでなく、試合中はスタンドに立って最前線で応援を繰り広げる。

 

「観客動員増加に関しては1歩ずつやっているところです。重要だと思うのは、まず選手や関係者が身近な人々を呼ぶこと。そのためにもアメフトと普段の生活の両方を一生懸命やらないと周囲も応援してくれない。もう1つはファンサービスやマーケティングなどを組織立ててやるということです」

 

「競技、仕事、私生活をバランス良くこなすのは難しいと思います。しかし、そこは個々が意識を高く持つしかない。そして、ファンの方々が来場しやすく、来た時に心地良くて再び足を運びたくなる環境を作るのは私たちの仕事。少しずつですが体系的にやり始めています」

 

「観客が一気に増えないのはジレンマを感じます。しかし1つずつ積み重ねれば、どこかでレバレッジも効いてくると思います」と自らに言い聞かせるように語る。かつてプロ野球のパ・リーグもスタンドに閑古鳥が鳴くような日々だったが、球界再編騒動を経て大きく様変わりした。同様の「CHANGE」はブルザイズでもできるはずだ。

品川CC取締役・長谷川洋氏は「観客動員増のため、1つずつできることからやる」と笑顔を見せる。

~笑顔があふれ、また来たくなるスタンドが理想

スポーツビジネスに特化した仕掛けを先頭に立って行う長谷川氏だが、試合中には別の役割がある。チアリーダーや音響担当と連携を取りつつスタンドを動き回り、大声で選手を後押しし続けること。

 

「応援はもちろん、アメフトはルールが複雑なので簡単な解説もします。僕自身はアメフトのプレー経験はないので、采配や選手に対して何も言えません。だからスタンドを精一杯に盛り上げ、笑顔があふれる空間にすることを考えています」

 

慶應大学応援指導部OBで、在学中は東京六大学野球を中心に数々の大舞台を経験した応援のエキスパート。「ブルザイズの試合を見て自然と惹き込まれ、頼まれもしないのに応援活動をするようになっていた」という。

 

「最近は関西学院大や法政大といった、大学時代に勝利を知る選手が加入しました。そういう選手がチームを変えてくれる予感もします。僕の役割はスタンドの雰囲気を良くして、1人でも多くのお客さんを増やすこと。『この人たちを喜ばせたい』と選手に思ってもらえるようになりたい」

試合中の長谷川洋氏はスタンドを動き回って、選手を応援し続ける。

~チームの本気の「CHANGE」によって周囲への説得力が出る

ブルザイズが、今シーズン掲げた「CHANGE」について竹本氏、長谷川氏がそれぞれ感じていることもあるという。

 

「試合に勝つこと、お金を集めること…。全てに対して本気でコミットメントする。そこでのCHANGEが大事になるはずです。覚悟を持って本気で動いている集団だから、周囲の人々が受け入れてくれる。応援してもらえるはず。ブルザイズに関わる誰もがCHANGEしたことが伝われば、『見たい』と思ってくれるはずです」(竹本氏)

 

「『周囲からどう見られているか?何を伝えたいのか?』を常に考える。特に試合時のフィールドは舞台だと思います。選手、スタッフを含めたブルザイズに関わる人全てが『やり切る』ことを意識する。舞台にいる限りは最後まで堂々と振る舞いヒーローになることを目指す。そしてこの先もずっとブルザイズに関わっていきたくなる、素敵な組織へCHANGEしていきたいです」(長谷川氏)

試合後、スタンドへ来てくれた観客と交流を図るのがブルザイズ・スタイル。

見据えるのは組織の充実と共にX1SUPERの舞台。「X1SUPERで戦うための活動費は最低3000万円、できるなら5000万円以上が必要です」(竹本氏)という現実問題も抱える。解決へ向けてのイチ手段として、昨年に続いてのクラウドファンディング(以下クラファン)も行っている。

 

「ブルザイズの知名度を高めることが重要ですし、何よりもチームが勝てば数字も伸びます。昨年は負け続けていたのに、みなさんがクラファンへ協力してくれて本当に感謝しました。今年は勝ち続けるので、さらに応援してください」(竹本氏)

 

2023年秋季リーグ戦(X1AREA)は1勝6敗の成績に終わったものの、クラファンでは1,303,000円(目標額1,200,000)が集まった。そして迎えた今季初戦、9月7日の警視庁イーグルス戦(富士通スタジアム川崎)は「7-0」では勝利を収めて最高のスタートをきった。

「勝ったら泣けるチーム」をできるだけ多くの人に体感して欲しい。

「ブルザイズにはスポンサーも付いていますが、選手自身も部費負担をしています。(アメフトを)好きでやっているとはいえ多くのものを賭けています。そういうチームが恵まれた環境のチームを倒す。勝ったら、結構、泣けるチームなんです」(竹本氏)

 

多くのものを費やし本気でアメフトに向き合うブルザイズは、勝敗以上のものを感じさせてくれる。グレーター品川エリアから発信する、多くの人の心を動かす極上エンタメになる日は意外と早く来るかもしれない。

 

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・品川CCブルザイズ)