篠塚和典が語る終盤戦の巨人 投手編(野手編:坂本勇人のベストな起用法は? リーグ優勝を狙う巨人打線のポイントを語った>>) 篠塚和典に聞くリーグ優勝を狙う巨人のポイント、投手編。14勝2敗、防御率1.73(9月15日時点、以下同)とチームを…

篠塚和典が語る終盤戦の巨人 投手編

(野手編:坂本勇人のベストな起用法は? リーグ優勝を狙う巨人打線のポイントを語った>>)

 篠塚和典に聞くリーグ優勝を狙う巨人のポイント、投手編。14勝2敗、防御率1.73(9月15日時点、以下同)とチームを牽引する菅野智之ら先発陣と、リリーフ陣の現状を分析してもらった。


小林誠司(右)とのバッテリーで14勝を挙げる菅野

 photo by Sankei Visual

【復活を遂げた菅野に見た意地】

――今季、見事な復活を果たした菅野投手をどう見ていますか?

篠塚和典(以下:篠塚) ピッチング内容はそれほど変わっていないと思うのですが、やっぱり気持ちだと思います。近年は戸郷翔征が「エース」と呼ばれることも多いですが、心の中で「まだまだ負けられない」という気持ちがあったはずです。

 持っている力をしっかりと発揮できれば、もともとこのぐらいは勝てるピッチャーです。残り試合が少ないなか、菅野があと何回登板するかはわかりませんが、菅野が投げる回数を1回でも増やしたいですね。小林誠司とのバッテリーも相変わらず相性抜群ですし、サインにはほとんど首を振りません。いい信頼関係を築いているんでしょう。

――現在ハーラートップの14勝。最多勝のタイトルも視界に捉えています。

篠塚 以前、巨人ファンの方々が参加するイベントにゲストで出演させてもらったのですが、その時に菅野と小林がいて。ファンの方から「今年は何勝ぐらいしますか?」と聞かれた菅野が「15勝します」と言っていたんです。そこで自分が、「17勝ぐらい勝つつもりじゃないと15勝はできないぞ」と発破をかけたこともありました(笑)。

 それはさておき、ここまできたら残りの登板を全部勝つつもりで投げてほしいですね。戸郷(11勝)や山﨑伊織(9勝)も頑張っていますが、いいと思えば次の試合で打たれたり、少し不安定な部分があるので......。やっぱり頼りになるのは菅野かなと。

【未勝利の赤星は「素直すぎる」】

――3人に続く勝ち星を挙げている井上温大投手(7勝)、フォスター・グリフィン投手(6勝)はいかがですか?

篠塚 井上もグリフィンも、ピッチングが安定してきましたよね。あとは、ローテーションの谷間で投げるピッチャーがしっかり投げてもらわないと。ヨアンデル・メンデスが(9月8日の)DeNA戦で先発して1回持たずに降板しましたが、谷間とはいえ、首脳陣も期待してマウンドに送り出していると思うんです。それでああいうやられ方をしてしまうと、どうしてもチームのテンションが下がってしまいますよ。

――未勝利(0勝7敗)の赤星優志投手はどう見ていますか?

篠塚 投げ方がちょっと素直すぎるかなと。150km以上(今季最速154km)の真っすぐを投げるので、もう少し抑えていてもおかしくないと思うのですが......投げ方がきれいすぎますよね。バッターからすると、タイミングが取りやすいんじゃないかと思います。

 時にはクイックで投げて、バッターのタイミングを外そうとするピッチャーもいますが、そういった工夫を泥臭くしていくべきです。あと、これは赤星に限ったことではないですが、ピッチャーにはバッターに向かっていく姿勢が必要だと思います。精神論を語るつもりはないのですが、やはり気持ちが入ったボールは違いますし、気持ちを入れて腕を強く振られると、バッターは手を出してしまったりしますからね。

 谷間の先発では、ファームにいるドラ1(2019年)の堀田賢慎、横川凱、又木鉄平らも含め、先発が上積みできていない。だから今いる先発がフル回転しないと勝ち星を積み上げていけません。

―― 一方でリリーフ陣はいかがですか? 今季はアルベルト・バルドナード投手、高梨雄平投手、船迫大雅投手、カイル・ケラー投手などが40試合以上登板しています。

篠塚 そのピッチャーたちの頑張りも大きいですし、リリーフ陣が安定しているからこそチームは今の位置にいると思います。それと、大勢が後ろにいてくれることが大きい。故障があったり、調子が上がらなくて一軍と二軍を行き来したりもしていましたが、彼が一番後ろにいることで、先発もセットアッパーも「何イニング投げればいいか」「どのイニングを任されるか」と、だいたいの心づもりができます。

 大勢がいない時期にバルドナードも頑張っていましたが、投げてみないとわからないところがありました。とにかく今季は先発もリリーフも、ピッチャー陣は全体的に安定していますね。

【ルーキーの西舘は「このまま先発に」】

――開幕当初はリリーフ陣が手薄だったこともあり、その一角を任されていたドラ1ルーキーの西舘勇陽投手が、8月23日の中日戦でプロ入り初の先発登板。しかし、5回6安打4失点と課題が残りましたね。

篠塚 大学の時は主に先発でしたね。チーム事情でリリーフからスタートしましたし、先発登板の時はあまり心の整理ができていなかったような気もします。再びファームで、緩急をつけるピッチングを課題に取り組んだり、フォームを調整したりしているようですが、西舘はこのまま先発に専念させたほうがいいと思います。開幕当初と違って今はリリーフの枚数が揃っていますし、ある程度安定してきていますから。

 今年だけのことではなく、来年以降を考えれば先発をしっかりやらせたほうがいいですし、本人にもはっきりとそう伝えて気持ちを整理しやすい状況にもっていったほうがいいかなと。

――優勝争いが佳境を迎えているなか、投げるほうでキーマンを挙げるとすれば?

篠塚 菅野は安定しているので崩れる心配はありません。そういう意味では戸郷と山﨑の出来がカギを握るんじゃないですか。いいピッチングをした次の試合で崩れることをなくしたいですね。

 菅野以外の先発が、それぞれあと何回投げるかはわかりませんが、勝ち星を先行させていかないと。残り試合を負け越すピッチャーが多いと苦しくなっていきますからね。今季はガンガン点が取れるチームではないですし、いかに最少失点に抑えていくかがポイントになるでしょう。

【プロフィール】

篠塚和典(しのづか・かずのり)

1957年7月16日、東京都豊島区生まれ、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。