サッカーのW杯アジア最終予選が始まった。日本代表は初戦を中国代表と戦い、7-0と快勝。だが、他会場では、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之も驚く結果が続いた。 ■マンチーニを苦しめたインドネシア「欧州組」  日本、オーストラリアとと…

 サッカーのW杯アジア最終予選が始まった。日本代表は初戦を中国代表と戦い、7-0と快勝。だが、他会場では、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之も驚く結果が続いた。

■マンチーニを苦しめたインドネシア「欧州組」

 日本、オーストラリアとともにこのC組から出場権獲得の有力候補とみられているサウジアラビアも、初戦で勝点を落とした。アジアカップでは韓国とのラウンド16でPK戦負けを喫したサウジアラビアだったが、メディアとの不和にもかかわらずイタリア人のロベルト・マンチーニ監督は留任、自信満々でインドネシアとの初戦を迎えた。システムは3-4-2-1。エースのサレム・アルドサリと長身のモハメド・カノを「シャドー」に置く攻撃は強力だ。

 インドネシアは5-4-1に近いシステム。1月のアジアカップ以後も、「欧州組獲得」のプロジェクトは進行しており、現在はアメリカのダラスで活躍するオランダ生まれのGKマールテン・パエス、ベルギーで活躍するオランダ生まれのFWラグナ-・オラットマングーンなどが加入、韓国人の申台龍(シン・テヨン)監督は、1938年以来、実に88年ぶりのワールドカップ出場権獲得に手応えを感じている。

 10月には日本を迎えるジッダのキング・アブドゥラ-・スポーツシティ・スタジアム。観客は4万2385人。日中は40度近くになったものの、キックオフ時の19時には気温は32度まで下がった。だが、その分、猛烈な湿度が選手たちを襲う。インドネシアの「本国組」ならこうした気候にも慣れているが、チームの主体は「欧州組」。どこまで持ちこたえられるか―。

■代表デビュー戦の「国籍変更GK」が大活躍

 だが前半19分、インドネシアがホームチームにショックを与える。MFウィタム・スラエマンが右を突破。中央に戻し気味に送ったボールをオラットマングーンが受けると、混乱したサウジ守備陣をかわして左足シュート。オラットマングーンの内側を右ウイングバックのサンディ・ウォルシュ(ベルギー生まれ、メヘレンでプレー)が駆け上がっており、ウォルシュはシュートをよけようとジャンプしたのだが、その右足に当たったボールがサウジGKの動きの逆をついてゴール右に吸い込まれたのだ。

 サウジアラビアは猛攻をかけ、前半のアディショナルタイムに同点とする。ペナルティーエリア外正面からMFムサブ・アルジュワイルがシュート。これがインドネシアDFに当たり、コースが変わってゴール左に転がり込んだ。

 後半もサウジアラビアが試合を支配して攻め続ける。ここに立ちはだかったのは、8月に国籍変更が認められたばかり、インドネシア代表デビュー戦のGKパエスだった。後半34分、自身のミスからPKを与えるが、アルドサリのキックを見事セーブ。その後の決定的ピンチにも好セーブを連発し、1-1のまま試合を終わらせたのだ。

■「ボール支配率75%超え」の韓国も振るわず

 A組では、アジアカップ連覇のカタールがホームで前半1-0から後半に3点を連取されて1-3で敗れるという波乱があったが、残りの2試合ではウズベキスタンが1-0で北朝鮮に、そしてイランが同じく1-0でキルギスに手堅く勝利を収めた。

 B組では、イラクがオマーンに1-0で勝ち、ヨルダンとクウェートは1-1の引き分けに終わったが、韓国がホーム・ソウルの5万9579人のファンの前で勝点を落としたのは、大きな話題になった。

 アジアカップ準々決勝で延長の末オーストラリアに1-2で敗退後、ユルゲン・クリンスマン監督が解任されたものの、後継者が決まらず、長く混乱した韓国代表。7月にようやく洪明甫(ホン・ミョンボ)監督が就任し、臨んだ初戦である。前線には孫興民(ソン・フンミン)や李康仁(イ・ガンイン)といった欧州のトップクラブで活躍するエースも並んだが、ボール支配率75.3%と一方的に試合進めながら決定的チャンスを決めきれず、0-0で逃げ切られた。

 6チームずつ3組で行われているアジアの「3次予選」。ここで2位以内に入ればワールドカップの出場権を得られるため、日本では「最終予選」と呼ぶことが多いが、2位以内に入れなくても、3位、4位なら「4次予選」に、さらにそこで負けても大陸間プレーオフに出場する権利をかけての「5次予選」に進むことができる。

 ワールドカップ出場のチャンスはこれまでになく高く、どのチームも非常に高いモチベーションで臨んでいる。その結果が9月5日の第1節9試合に非常によく表れている。「日本×中国」を除く8試合は、「カタール×UAE」を含めいずれも「紙一重」の勝負であり、それは1月から2月のアジアカップで確認されたアジア諸国の急激なレベルアップを裏付けるものだった。

■「予断を許さない」森保ジャパンの戦い

 好コンディションで森保ジャパンを戦わせるべく、日本サッカー協会はできうる限りの準備をしている。中国戦が終わってからわずか5時間あまりの6日午前3時、日本代表は羽田空港からチャーター便でバーレーンに向かい、午前8時半には首都マナマに着いた。

 日本の30分前に試合が終了したバーレーンだが、ゴールドコーストからマナマへの移動は、6日いっぱいかかったのではないか。日本代表は6日を疲労回復にあてることができ、7日から3日間きっちりとトレーニングして10日の第2戦、バーレーン戦に臨むことができる。

 ただ、ここで気を抜くことは許されない。最終予選が予断を許さない戦いであることは、他の試合の結果で十二分にわかるはず。最善の準備をし、最高の力を発揮してバーレーンを下し、いい状況でこの戦いを進めていってほしいと思う。

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