欧州メディアをにぎわせた日本代表ディフェンダー(以降、DF)町田浩樹(27)の移籍話。結局、今夏の移籍はかなわなかった…
欧州メディアをにぎわせた日本代表ディフェンダー(以降、DF)町田浩樹(27)の移籍話。結局、今夏の移籍はかなわなかったが、町田本人は、どう考えていたのか。町田が所属するロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズが戦うベルギーリーグの現状を踏まえつつ、町田に聞いた。(インタビュー♯5)
■「次のステップに移りやすい」ベルギー
興味深いのは、町田が身を置いているベルギーリーグの特性だ。イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスといった「欧州5大リーグ」ではないが、過去を振り返ると、遠藤航(リバプール)や冨安健洋(アーセナル)、鎌田大地(クリスタルパレス)、橋岡大樹(ルートン)らがベルギーのシント=トロイデンに在籍。
ブライトンで活躍する三笘薫もサン=ジロワーズへのレンタル移籍を1年経験し、イングランドにやってきた。つまり、欧州で戦うベースをベルギーで作り、いわゆる5大リーグへと飛び出していく流れは、すでに出来上がっているのだ。
町田は、そんなベルギーリーグの特長についてこう説明する。
「ヨーロッパでのステップアップに関して言えば、ベルギーは本当に適しているリーグだと思っています。
ベルギーという国は、地理的に見てもヨーロッパのどの国にも近い。あとは、クラブとして、そこまで大規模なクラブがないので、選手が成長したら、すぐに売却する傾向がある。選手側からすると、それはメリットだと思っています。
たとえば、他のリーグの場合、高額な移籍金を設定されて出ていけないケースもあります。ですが、ベルギーの場合は比較的、次のステップに移りやすいんですね」
■「経験した人にしか分からない」激しさ
27歳のDFにとって大きな刺激になったのは、ベルギーから巣立ち、プレミアリーグや欧州5大リーグで活躍している選手たちの存在だ。
特に三笘は、2021−22シーズンにサン=ジロワーズのチームメートとして共闘した仲でもある。彼らの活躍について、町田はこう語る。
「カオル(三笘)に限らないことなんですけど、サン=ジロワーズからステップアップした選手はたくさんいます。ブライトンにいるFWシモン・アディングラ(コートジボワール代表)や、シュトゥットガルトのFWデニズ・ウンダフ(ドイツ代表)も、ここで一緒に戦いました。
彼らがプレミアリーグやブンデスリーガで活躍しているのを見ると、プレミアリーグも遠い存在ではないように感じますね。本当に、身近に感じます。彼らがその自信を与えてくれているので、早くそのレベルでプレーしたい気持ちはありますね」
町田のポジションであるディフェンダーにフォーカスすると、冨安がシント=トロイデンでプレーし、イタリアのボローニャを経由してアーセナルにたどり着いた。
「冨安選手からプレミアリーグについて話を聞いたりしますか?」と尋ねると、町田はこう答えた。
「今年4月にロンドンに行って、トミ(冨安)と橋岡と会って話をしました。
彼らから、プレミアリーグの激しさや難しさを聞いたりして。それは、たぶん経験した人にしか分からないのかなと。彼らがそうした凄さを日常で味わえているのは、本当に羨ましいです」
もうひとつ上のレベルでプレーしてみたい──。町田がそう考えるきっかけのひとつになったのは、昨シーズンの欧州リーグで相まみえたリバプールとの戦いだった。
町田浩樹(まちだ・こうき)プロフィール 1997年8月25日、茨城県生まれ。190センチ、80キロ。ポジションはセンターバック(CB)。長身を生かした空中戦の強さと、精度の高い左足のキックに定評がある。ジュニアユース時代から地元クラブの鹿島アントラーズの下部組織で育ち、2016年にトップ昇格。翌年、Jリーグデビューしたが、直後に全治6か月の大ケガを負う。復帰後、2019年シーズンはリーグ22試合に出場。2018年7月28日のガンバ大阪戦では、プロ入り初得点を決めた。2022年1月、ベルギー1部ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズへ1年半の期限付き移籍を発表。2月13日のシント=トロイデン戦で先発デビュー。その後、負傷で試合に出られない日々が続くも、2023年1月に復帰し、3月には同クラブへの完全移籍を発表。翌4月には、早稲田大学人間科学部を卒業したことを発表した。同5月9日、クロッキーカップ決勝で、ロイヤル・アントワープFC相手に決勝ゴールを挙げ、クラブを110年ぶりの優勝に導いた。日本代表としては、2016年、AFC U-19選手権のメンバーに選出され、準決勝のベトナム戦で初先発。2019年、AFC U-23選手権タイ2020予選に挑むU-22日本代表メンバーに選出され、世代別代表に復帰。その後、2021年の東京オリンピックでは、1試合に出場。2023年3月、キリンチャレンジカップ2023にA代表として初招集され、同年9月のトルコ代表との国際親善試合に先発出場。A代表デビューを果たした。今年6月、結婚を発表。また、サッカー少年たちを支援するプロジェクトにも携わっている。