アジアは広い。サッカーの試合を観戦するために移動するだけでも一苦労だ。だが、蹴球放浪家・後藤健生には楽しみでもある。分…

 アジアは広い。サッカーの試合を観戦するために移動するだけでも一苦労だ。だが、蹴球放浪家・後藤健生には楽しみでもある。分からない言葉を話す不慣れな国を旅するのも、コツさえつかめば、ラクになる。たとえば、耳で聞くだけでは言葉の理解が難解な、中国であっても…。

■中国本土より「もっと便利」な香港

 もっと便利なのが香港です。

 香港は中国人(主に広東人)の街ですから、バスの停留所でも店の看板でもすべて漢字で書いてあります。中国本土のような「簡体字」ではなく「繁体字」を使っているので、日本人には読みやすいはずです。

 しかも、香港は1997年に返還されるまでは英国の植民地でしたから、英語が公用語でした(その後、中国語も公用語となった)。ですから、必ず英語名があったり、英語表記が付いているのです。ですから、中国語の発音ができなくても、英語のほうを読めばいいわけです。

 香港島には「銅鑼湾」という地名がありますが、中国語(広東語)でどう読めばいいか、分かりません(正解は「トンローワン」)。しかし、「Causeway Bay」という英語の名前もあるので、英語式に「コーズウェイ・ベイ」と発音すれば通じるわけです。

■広東語と北京語は「英語とドイツ語」

 ですから、香港は中国本土以上の「日本人放浪家天国」ということになります。

 そもそも、「香港」という地名も日本語の音読みなら「こうこう」ですよね。それを、広東語の発音を元に英語で「Hong Kong」と呼ぶようになり、日本語でも「ホンコン」と読むわけです(ちなみに、中国本土の標準語=普通話では「香港」の発音は「シャンカン」)。

 広東語と普通話とではドイツ語と英語くらいに違っていて、互いの言葉でしゃべるとほとんど通じないそうです(飯田真紀『広東語の世界』中公新書)。

 たとえば、イタリア語とスペイン語だったらそのまま通じます。イタリア人のインタビュアーがイタリア語で質問して、アルゼンチン人選手がスペイン語で答えているといった場面をよく見かけます。時々「えっ?」といった感じで会話が止まりますが、テレビを見ている人はそのまま理解することができます。

■ユベントスでプレーも「話せない」

 スペイン語とポルトガル語、カタラン語などでも同じですし、イタリア語やスペイン語とルーマニア語でもある程度は通じます。フランス語とイタリア語ではなかなか会話することは難しいでしょうが、フローラン・ダバディ氏は「フランス人ならイタリア語はすぐに覚えられる」、「ユベントスでプレーしていたのにイタリア語を話せないディディエ・デシャンはおかしい」と豪語しています。

 まあ、ダバディ氏のほうがデシャン氏より語学の才があるのは事実でしょう。もっとも、サッカーはダバディ氏よりデシャン氏のほうがうまいようですが。

 ですから、普通話(北京語)と広東語は“方言”というよりも、別言語と考えたほうがいいようです(ただし、書き言葉は共通)。広東語だけでなく、福建語も、客家(ハッカ)語もすべて互いに通じ合えない言葉なのです。

 ちなみに、11月に日本代表が試合をする「厦門」という人口400万人の都市は普通話では「シャーメン」ですが、福建語の一部である閩南語の発音に基づいて、国際的には「アモイ」として知られています。

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