日本のサッカー界は、着実に成長している。ワールドカップやオリンピックなど大舞台での活躍はもちろん、その進化は日々の活動…
日本のサッカー界は、着実に成長している。ワールドカップやオリンピックなど大舞台での活躍はもちろん、その進化は日々の活動にも表れている。数多くの選手たちを世界の舞台へと送り出す日本サッカー界の「育成力」について、サッカージャーナリスト後藤健生がリポートする。
■昨年、一昨年の「チャンピオン」が激突
9月1日の日曜日。僕は千葉県鴨川市で行われた日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)1部第16節のオルカ鴨川FC対スフィーダ世田谷FCの試合を観戦に行った。
「なでしこリーグ」は、かつては日本の女子サッカー界のトップリーグだったが、2021年にWEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)がスタートしてからは、いわば2部リーグ的な存在となっている。
鴨川は、昨年のなでしこリーグの優勝チーム。一方、世田谷は一昨年のチャンピオンチーム。今シーズンは現在、鴨川が5位、世田谷が6位ではあるが、なでしこリーグの強豪同士の一戦であることに間違いない。
台風10号の影響で、東京都内や千葉県西部は激しい雨に祟られていたようだが、太平洋に面した鴨川市は一面の雲に覆われてはいたものの、前半の最後の時間帯に激しい雨に見舞われただけで、曇りの時間が長かった(16時キックオフの試合で、空が曇っていたため、後半はかなり暗くなってしまったが……)。
■ホームチームに訪れた「4度の大チャンス」
前半の立ち上がりはホームの鴨川が連続してチャンスをつかんだ。
世田谷のDFとDFの間のギャップを衝いて、トップの齊藤彩花や右サイドの松尾美月が守備ラインの裏に走り、それにタイミングを合わせて縦パスが通った。前半給水タイムの前までに、オフサイドを取られた場面も含めて4度ほどビッグチャンスをつかんでいた。
ところが、給水タイムの後は裏に抜けるランニングが見られなくなり、アーリークロスを入れるだけの攻撃になってしまった。
すると、35分に世田谷がカウンター気味の形から先制ゴールを奪う。右サイドからのサイドチェンジのパスを受けた左サイドハーフの藤原愛里が持ち込んで、そのままシュートを突き刺した。
1点を追う鴨川は後半に入って、前線の選手の並びを変えたり、選手交代を使って攻撃を試みるが、前半立ち上がりのようなきれいな攻撃パターンは作れなかった。ただ、左サイドからのドリブル突破が効果的で、何度か決定機を作っていた。
逆に言えば、世田谷が自分たちから見て右サイドの守備を補強して、このサイドさえ止めてしまえば勝利に近づけたはずだったのだが、そのサイドからの崩しから同点にされてしまう。83分に鴨川の左サイドに顔を出した松尾のクロスに齊藤が合わせて同点とし、そのまま引き分けて両チームが勝点1ずつを拾って終了した。
見ていて、「ああ、もう少し、ここをこうすればなぁ……」といった点が多く、とてももどかしいような内容だった。
鴨川でいえば、同点ゴールに絡んだ2人はパワーがある良いFWだったし、CBの位置から巧みにロングボールを使った松尾菜月や中盤で運動量豊富に広い範囲をカバーしたキャプテンの高塚綾音などが目立っていたし、世田谷の2トップの一角、新堀華波の相手のマークを外してから動き直してパスを受けるテクニックなど見るべき選手は何人もいた。
だが、もう少し補強したいポジションも散見され、また、交代カードも限られるといった印象を受けた。
■大きく開いた2つのリーグの「実力差」
2021年にWEリーグがスタートしたが、当初はWEリーグとなでしこリーグの実力差はそれほど大きくなかった。実際、当時の皇后杯全日本選手権のリザルトを見ると、なでしこリーグ勢がWEリーグ勢に勝利することも珍しくなかった。
だが、WEリーグは2シーズン目くらいから、急速に強化が進んだ。テクニックの部分もそうだが、勝負へのこだわりやプレー強度といった面で、なでしこリーグとの差は大きく開いていった。
かつて、2011年に日本の女子代表チーム「なでしこジャパン」がワールドカップ優勝を決めた頃は、当時のトップリーグであるなでしこリーグ1部でも、チーム間格差が大きく、下位チームでは選手のレベルのバラつきも大きかった。
だが、今ではWEリーグのチームなら、下位チームも含めて選手層はかなり厚くなっているし、上位との実力差はあるものの、下位チームも上位に対して頑強に抵抗できるようになっており、上位チームも楽に勝てる試合は減っている。
つまり、過去10年ほどの間で女子サッカーの選手層はかなり厚くなっているのだ。
だが、その波は現在のなでしこリーグ、つまり2部リーグにまでは及んでいないようなのだ。
鴨川での観戦の帰りに、いつも女子サッカーを熱心に取材している同僚記者が「なでしこリーグのレベルは下がっているのだろうか」とつぶやいた。僕は「WEリーグのレベルアップのせいで、相対的にそのように見えるんじゃないか」と返答しておいたのだが、いずれにしてもなでしこリーグはWEリーグの急成長に、まだついていけていないように見えた。