2年後に迫ってきた2026年北中米ワールドカップ(W杯)で優勝という大目標を掲げている日本代表。9月5日の中国戦(埼玉…
2年後に迫ってきた2026年北中米ワールドカップ(W杯)で優勝という大目標を掲げている日本代表。9月5日の中国戦(埼玉)からスタートするアジア最終予選では圧倒的な実力を示して、早い段階で切符を勝ち取りたいところだ。
しかしながら、ご存じの通り、日本は2018年ロシア・2022年カタールの両W杯に向かう最終予選初戦でUAE、オマーンという相手に不覚を取っている。前者は本田圭佑が早々と先制点を奪ったが、そこからまさかの2失点。決まったかと思われた浅野拓磨(マジョルカ)の2点目も認められず、黒星発進を強いられた。後者はオマーンに徹底した対策を講じられ、攻めあぐねた末に、0-0で迎えた終盤に左サイドを割られ、クロスからスペースに飛び込まれ、1点を献上。そのまま0-1で敗れるという波乱の幕開けとなった。
奇しくも3年前、オマーンの指揮を執っていたのが、今回の中国代表指揮官、ブランコ・イバンコビッチ監督だ。
「(同じ監督というのは)すごく嫌。前回も1~2か月合宿をしてから来ましたよね。そのくらい気合を入れて日本対策をしてくると思う。前回、メチャメチャ守備されて、攻撃が何もできなかった部分もあった。相手のコンディションがすごく整っていたこともあって、後半カウンターで危ないシーンが沢山あった。厄介だった印象が強いですね」と生き証人・長友佑都(FC東京)は警戒心を募らせた。
■サイドの局面打開がカギに
日本は前回最終予選で中国とも戦っているが、その時も攻めあぐねた。特に9月のアウェー戦(ドーハ)はその傾向が顕著だった。相手は攻撃意識が乏しく、自陣に人数をかけて守るばかり。決勝点は伊東純也(スタッド・ランス)の右サイドでの突破から大迫勇也(神戸)が挙げているが、今回も相手はベタ引きできると目されるため、サイドでどれだけ局面打開できるかが重要なポイントになりそうだ。
となれば、やはり伊東を使わない手はない。1~2月のアジアカップ(カタール)期間中の週刊誌報道によって、代表を外れていた彼は、7か月ぶりに代表に戻ってきた。森保一監督にしてみれば、「2次予選は純也なしでも乗り切れるが、最終予選はそうはいかない」という思いがあるからだろう。実際、前回最終予選の全12得点を見ても、伊東はゴール4、アシスト2、PK奪取1と半数以上に絡んでいる。絶体絶命の危機を救ってくれた男に指揮官は”鬼門”も初戦を託すはずだ。
6月の2次予選2連戦(ミャンマー・シリア)では3バックにトライした森保監督だが、今回はベースの4バックからスタートするはずだ。左サイドバック(SB)の伊藤洋輝(バイエルン)不在は気がかりだが、守備陣はGK鈴木彩艶(パルマ)、DF(右から)菅原由勢(サウサンプトン)、板倉滉(ボルシアMG)、町田浩樹(サンジロワーズ)、中山雄太(町田)で行く公算が大だ。
■難しい2列目
中盤は遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング・リスボン)のボランチコンビが有力。判断が難しいのは2列目で、右に伊東を入れるのは既定路線として、左は守備力のある韋駄天・前田大然(セルティック)を起用するプランもあり得る。というのも、三笘薫(ブライトン)を頭から使ってしまうとイザという時に駒不足に陥ることも考えられるからだ。10日のバーレーン戦(リファー)も視野に入れると、慎重にならざるを得ない。そこは指揮官の悩みどころだ。
トップ下には得点力と推進力を兼ね備え、リスタートも蹴れる久保建英(レアル・ソシエダ)を置く形がベターかもしれない。そこに上田綺世(フェイエノールト)を絡めて、伊東に可能な限り、チャンスメークをさせるのが得策だ。
とにかく伊東は前回予選の中国との2試合で1ゴール・1アシスト・1PK奪取と特筆すべき働きを見せている。敵将も複数マークをつけて徹底的につぶしてくるだろうが、彼の長い距離をぶっちぎれるスピードはアジアレベルをはるかに超えている。そこが試合の大きなポイントになるのは間違いない。
(取材・文/元川悦子)
(後編へ続く)