「純粋にマシンの速さが足りなかったと言うしかないと思います」 第15戦オランダGP予選を13位で終えた角田裕毅は、憮然とした表情で言った。 金曜の走りはじめは7番手につけて「マシンは調子がいい」という状態だったにもかかわらず、土曜にはQ1突…

「純粋にマシンの速さが足りなかったと言うしかないと思います」

 第15戦オランダGP予選を13位で終えた角田裕毅は、憮然とした表情で言った。

 金曜の走りはじめは7番手につけて「マシンは調子がいい」という状態だったにもかかわらず、土曜にはQ1突破すら厳しい状況に追い込まれてしまった。

 Q2では果敢にアタックを決めて、マシンのポテンシャルを最大限に引き出せたという感触があった。だからこそ、13位という結果には愕然とさせられ、これが今のVCARB 01の実力なのだと受け入れるしかなかった。


角田裕毅は11番グリッドから入賞を目指すも...

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「手応え的にはQ3に行けたかなと思いました。だから、逆に13位だったというのはビックリでした。あと0.1秒でQ3に行けたとはいえ、その0.1秒というのは僕的にはけっこう大きいなと思いましたし」

 それでもウイリアムズの失格やルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)の降格ペナルティによって、角田は11番グリッドから決勝に臨むことになった。

 とはいえ、そのハミルトンに先行されるのは避けられない状況下で、入賞するには2台を抜く必要がある。それも、トップ5チームの10台と好調のピエール・ガスリー(アルピーヌ/予選9位)のなかで2台だ。背後にはストレートの速いニコ・ヒュルケンベルグ(ハース/予選12位)もいる。

 多くのマシンが1ストップ作戦を視野に入れていることが明らかな状況のなか、抜けないザントフォールトで2台を交わすのは現実的に考えて不可能だ。

 だから角田は、チームと相談のうえで2ストップ作戦を選択した。ギャンブルをしなければ、「入賞」はできないからだ。それ自体は理に適った選択だったと言える。

「2ストップ戦略がうまくいくかどうかは50%・50%かなと思っていましたけど、僕の戦略はうまく機能しませんでした」

 ソフトタイヤを履いたにもかかわらず、スタートでやや出遅れてヒュルケンベルグの先行を許し、2周目にはハミルトンにも早々に抜かれてしまった。

【チャンスがなかったわけではない】

「僕のほうの問題なのか、技術的な問題なのかはわかりませんが、蹴り出しのあとに完全にパワーがなくなり、失速するような感じでスピードが落ちてしまって。だいたいいつもこんな感じではありながら、なんとかポジションを守りきってはいるんですけど、今回はポジションを落としてしまいました」(角田)

 第7戦エミリア・ロマーニャGPでも大きなスタートミスがあり、夏休みの間にも対策に取り組んできたRBだったが、ここでも問題が起きてしまった。

 ポールポジションのランド・ノリス(マクラーレン)も似たような事象に見舞われていたが、クラッチをミートした瞬間にエンジン回転が落ち、加速が鈍ってしまったのだ。


角田裕毅がスタートで出遅れた原因は?

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 ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは次のように説明する。

「エンジンの回転数が落ちるのは、いくつか原因があります。クラッチをつなぎすぎるとか、スロットルペダルの踏み込みが足りないとか、タイヤのグリップを読み違えて想定よりグリップが強すぎたなど、いくつか要因は考えられます。

 データを見たかぎりでは、エンジンとして問題はなく、ドライバーが(スロットルペダルで)要求しているトルクをデリバリーしていましたので、なぜああいうことが起きたのか。チームと話し合っていますが、改良できるところはありそうだったので、次に向けてやっていく予定です」

 それでもまだ、チャンスがなかったわけではない。

 しかし、12周目というかなり早い段階で動いたヒュルケンベルグと同じ周にピットインすることになり、それ以降もヒュルケンベルグに抑え込まれ続けた。

 これに対して、角田は2ストップ作戦でフレッシュタイヤに履き替えて逆転を期したものの、逆にローガン・サージェント(ウイリアムズ)に30周以上にわたって抑え込まれたまま、レースを終えることになってしまった。

 ヒュルケンベルグが1ストップ作戦でステイアウトして9位を走り、最後までガスリーやフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)と入賞圏を争ったのとは、あまりにも明暗が分かれてしまった。

【1ストップ作戦を採っていれば...】

「ピットストップのタイミングもすべて間違っていた。ピットインするたびにポジションを落とし、遅いクルマにスタックしてダーティエアのなかで走ることになり、正直に言って理想的な戦略ではなかったと思います。タイヤ選択というよりも、ピットアウト後に遅いクルマにスタックしてしまったことが問題だったと思います」(角田)

 1ストップ作戦を選んだダニエル・リカルドは13番グリッドからひとつポジションを上げて、ヒュルケンベルグの背後でフィニッシュしていた。それだけに角田も1ストップ作戦を採っていれば、という思いもないわけではない。

 しかしそれで「入賞」を果たすには、自力に優るガスリーかアロンソを抜かなければならなかったわけで、このオランダGPでRBが戦略でどうにかできる範疇は超えていた。

 だから、ギャンブルに敗れたことは問題ではない。ただそれでも、戦略としてうまく機能させられなかったことはしっかりと見詰め直し、次以降のレースに生かさなければならない。

「1ストップか2ストップか、どんな戦略がよかったのか。間違いなく戦略については、しっかりと振り返って話し合う必要があると思います。2ストップ作戦を採ったとしても、もっとうまくやれたところもあったと思うので、これからしっかりと見直す必要があります」

 そしてなにより、マシンの開発を進め、純粋なポテンシャルを引き伸ばすこと。ウイリアムズが大きなアップデートで躍進し、アルピーヌも着実に改善を進めてきているなかで、開発が停滞しているRBが後退を余儀なくされるのは当たり前のことだ。

 RBにとって有利だと思われていたザントフォールトで突きつけられた厳しい現実。シーズン後半戦の残り9戦に向けて、正念場を迎えている。