敵地・フクダ電子アリーナへ乗り込んだ、ジェフユナイテッド千葉とのJ2リーグ第28節で、ベガルタ仙台は両サイドバックが負…

 敵地・フクダ電子アリーナへ乗り込んだ、ジェフユナイテッド千葉とのJ2リーグ第28節で、ベガルタ仙台は両サイドバックが負傷退場する事態に見舞われた。

 開始10分で右サイドバックの髙田椋汰に代わって真瀬拓海が投入された。ベンチにDF登録の選手が皆無になった状況で、J1のFC町田ゼルビアから今夏に加入し、左サイドバックで初先発していた奥山政幸も56分に交代を余儀なくされた。

 奥山に代わって左サイドバックに入ったのは工藤蒼生。千葉戦を最後に海外移籍へ向けてチーム離脱が決まっていた長澤和輝が、ベンチへ下がった80分以降は主戦場のボランチへ回った24歳は、2-4で逆転負けした直後にこう語っている。

「この試合に勝って、和輝くんがいなくても『安心してください』という思いを込めて送り出したかったので残念です。ただ、試合後には『自分が頑張ります』といった話を和輝くんにしたので、あとは自分が頑張るだけだと思っています」

 ジュニアからジュニアユース、ユースと仙台のアカデミーで育った工藤は阪南大をへて仙台へ加入。ルーキーイヤーの昨シーズンは0試合に終わったJ2リーグ戦の出場が、今シーズンはすでに16試合、1009分へと増えている。

■「なかなか勝てず、チームが分裂してしまうかも」の危機

 開幕直後は森山佳郎新監督のもとで7試合続けて先発を射止め、長澤とダブルボランチを形成して3勝4分けの無敗スタートをけん引した。昨夏に名古屋グランパスから完全移籍で加入した長澤から得たものを、工藤はこう語っている。

「声を出して味方を動かすプレーにすごく長けている。自分もそうしてボールを取りやすくしたいし、攻撃の部分でも動かして、そこにパスを出せるようにしたい」

 昨シーズンは12勝12分け18敗の16位にあえいだ。年代別の日本代表で実績を残した森山監督のもとで変貌を遂げて、残り10試合となった今シーズンは13勝8分け7敗の5位につけてきた軌跡を長澤はこう振り返っている。

「選手が常に自分自身へ矢印を向けるように導いてくれるゴリさん(森山監督)という存在は、僕自身、選手として一緒にプレーできたのはすごく幸せでした。昨シーズンは厳しい試合でなかなか勝てず、チームが分裂してしまうかもしれない、といった状況もあったなかで、今シーズンは全員でそういう形を作れてきた」

 長澤が言及した「そういう形」とは、昨シーズンの「1」から「4」に増えている逆転勝ちに象徴されるように、気持ちを含めた細かい部分で勝ち点を積み重ねてきた点にある。だからこそ、連勝を3で止められた次が大事になってくる。

■長澤の離脱を触媒とした仙台の化学変化を

 31日の次節は現時点で7位と、J1昇格プレーオフに進出できる6位以内を狙っているいわきFCを、ホームのユアテックスタジアム仙台に迎える。

「試合後は『左の頬を殴られたら、次は右の頬を突き出していく。そういった気持ちがない選手とは一緒に戦いたくない』とみんなに話しました。和輝と一緒に築いた順位にいる状況に感謝しながら、ここから先、僕たちが上がっていくのか、落ちていくのかも僕たち次第。ちょっとでも下を向いているようでは話にならない」

 海外へ旅立つ長澤を欠いて迎えるいわき戦へ向けて、気持ちの部分がとりわけ大切になってくると檄を飛ばした指揮官に、工藤も思いをシンクロさせた。

「和輝くんがいなくなるのは、自分たちにとってマイナスな部分もありますけど、和輝くんに頼りすぎるのもよくない。これを機に自分で何かと変えなきゃいけないと考えているし、和輝くんがいなくなったいまがチャンスだと思っているので、しっかりと声を出しながらチームの中心になれたら……なりたいと思っています」

 言葉をふと途切れさせ、言い換えた後に工藤の決意が凝縮されている。精神的な支柱も兼ねていた長澤の代役は、そう簡単には見つからない。それでも、思いを託して旅立つ長澤を不安にさせるわけにもいかない。長澤の離脱を触媒とした仙台の化学変化は、工藤に象徴されるようにすでにはじまっている

(取材・文/藤江直人)

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