五輪のブレイキンで批判を受けたガン。そのパフォーマンスに対する論争は世界的なものとなった。(C)Getty Images 世界的な物議を醸し、シーンを騒然とさせた“カンガルーダンス”の余波は今も広まっている。 おそらく本人が意図せず、大衆の…
五輪のブレイキンで批判を受けたガン。そのパフォーマンスに対する論争は世界的なものとなった。(C)Getty Images
世界的な物議を醸し、シーンを騒然とさせた“カンガルーダンス”の余波は今も広まっている。
おそらく本人が意図せず、大衆の議論の的となったのは、パリ五輪の女子ブレイキンに出場したオーストラリア代表のレイチェル・ガン(ダンサー名:Raygun)が披露したダンスパフォーマンスだ。
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「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」と5つの要素から採点される中で、ガンが披露したのは、「独創性」を重視した奇抜な振りを織り交ぜた、じつにゆったりとしたムーブ。パワフルかつクイックネスな動きを期待した視聴者には到底受け入れられるものではなく、実際の採点もすべて0点。全体最下位で大会を終えた。
ガンのパフォーマンスは大会後にオーストラリア国内でも批判が集中し、代表選出の是非を問う事態となった。そんな異例の展開となった理由は、そもそもパリ大会で五輪初採用となったブレイキン自体への関心が異様に高まっていた点は考えられる。
注目度が高まったからこそ、異彩を放ったガンのパフォーマンスだけが切り取られた。しかし、金メダルに輝いた湯浅亜実(ダンサー名:Ami)など実力派のパフォーマンスがないがしろにされたのは、業界全体にとってもマイナスになった感は否めない。
業界関係者も五輪の影響、そしてガンの騒動には苛立ちを隠さない。中東のニュース局『Al Jazeera』の取材に応じた米ニューヨークのブレイクダンサーで、指導者も務めているアナ・ガルシアは「できる限り公平かつオープンマインドでいようと最善を尽くしてきた。けど、オリンピックのメダリストこそが盛り上がるべきなのに、そうではないような気がしている。だから今の状況は間違いなくイライラさせられたし、侮辱的で、不快」と訴える。
長年、“ブレイクダンスの源流がある”とも言われるニューヨークで活動してきたガルシアは、ガンのパフォーマンスを「カンガルーダンスには驚かされた」とした上で、女子ブレイキンの実情を語っている。
「ただ、私が言いたいのは、女子のバトルでは、たまに、いや、それ以上の場合で、技術レベルが高くないダンサーが出てくるということ。とにかく精神的にも、肉体的にも、多くの違いが業界にはある。だから彼女を批判するのは違うような気がする」
4年後のロサンゼルス大会では不採用となっているブレイキン。その競技性が五輪という舞台にふさわしいものだったのかは、今しばらく議論が続きそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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