その日、埼玉スタジアムは日本中から注目を浴びていた。2022年7月30日のピッチの上で行われたのは、浦和レッズと川崎フ…
その日、埼玉スタジアムは日本中から注目を浴びていた。2022年7月30日のピッチの上で行われたのは、浦和レッズと川崎フロンターレの一戦。言ってしまえば通常のJ1リーグの1試合に過ぎないが、視線を集めた理由は、アウェイチームにあった。そして、そのゲームでプロとして初めてベンチ入りしたのが早坂勇希だ。
この試合で、川崎フロンターレは苦境に立たされていた。チーム内でコロナがまん延したことで、ベンチ入りした選手は5人のみ。本来は7人いるはずの控え選手が、2人も足りなかった。
そればかりか、その5人のうちの3人がGKだった。丹野研太、安藤駿介、早坂勇希がそろってベンチ入り。先発したチョン・ソンリョンも含めれば、この試合に登録した川崎の16人中4人がGKという、異例の構成となった。
そのため、まさかの姿もあった。安藤と早坂はフィールドプレイヤーのアウェイユニフォームを着用したのだ。GKではない立場での途中出場の可能性を秘めていたためで、試合前のウォーミングアップで2人は他のフィールドプレイヤーとともに体を動かした。本来はする必要のないスローインやヘディングの練習をして、有事に備えた。この試合が注目を集めたのは、コロナによるいびつな選手構成と、それでも立ち向かう川崎フロンターレのファイティングスピリットがあったからだった。
■早坂が「縁のある場所」と語るワケ
それから2年――。早坂は、8月24日に埼玉スタジアムで行われる試合にGKとして挑む可能性がある。24年8月17日に行われた横浜F・マリノス戦でプロデビューしたばかりで、仮に出場すれば浦和戦がプロ2試合目となる。横浜FM戦後に鬼木達監督はコンディション不良でチョン・ソンリョンがベンチ外になったことを明かしていた。
早坂勇希と埼玉スタジアム、その巡り合わせを本人はどう感じているのか、20日の練習後にアウェイでのプレーの可能性について聞いてみると、次のように言葉を紡ぐ。
「プロで一番最初にベンチに入った場所なので縁のある場所だなとは感じますし、逆にそこでプロ初勝利をつかめるチャンスなので、いつも通りいい準備をして、自分らしく、自信を持ってやっていきたい」
さらに、「白い幻のユニフォームで……。あの日が一番多分プロとしてきつかった」とも口にした。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)