滋賀学園の控え部員がアルプス席で全力で創作ダンスをする姿が、SNSで話題になった。目についたのは「ダンスするために野球部に入ったわけじゃないのに」と揶揄(やゆ)するようなコメントだ。 当然、彼らも試合で活躍することを目指していた。今大会、…

 滋賀学園の控え部員がアルプス席で全力で創作ダンスをする姿が、SNSで話題になった。目についたのは「ダンスするために野球部に入ったわけじゃないのに」と揶揄(やゆ)するようなコメントだ。

 当然、彼らも試合で活躍することを目指していた。今大会、主にベンチ外の選手を取材した。夏の大会前のメンバー発表後、トイレの個室ですすり泣いた選手の話には胸が苦しくなった。

 私も高校時代は野球部。公式戦でベンチ入りしたことはない。毎日朝練しても、柵越え本塁打を打てなかった。最後の夏はスタンドで大塚愛の「さくらんぼ」のリズムに乗って踊った。

 あれから10年。「できないことがある」と知ったから、できることを必死に探し続けた。今、目標だった記者として甲子園に立てている。

 今大会で優勝する一校をのぞき、ほぼすべての選手の高校野球は「負け」で終わる。その点でメンバーもメンバー外も、悔しさを知るのは同じだろう。

 滋賀学園の応援団長、荒井浩志はメンバー発表後、「ふてくされてはいけない」と仲間を後押しすることを決意した。「現時点」での負けを受け止め、役割を全うした経験は、救急救命士になる夢へとつながるはず。人生は長い。高校野球が終わってからが本番だ。(大宮慎次朗)