J1リーグでは先週末、多くのダービーが開催された。中でも注目されたのが、川崎フロンターレと横浜F・マリノスによる神奈川…

 J1リーグでは先週末、多くのダービーが開催された。中でも注目されたのが、川崎フロンターレと横浜F・マリノスによる神奈川ダービーだ。2017年からの6シーズン、J1タイトルを分け合ってきた2チームが激突したのだ。今季は苦戦が続いているが、このダービーでは復活の「兆し」が見えた。サッカージャーナリスト後藤健生が、両チームの変化の「胎動」に迫った!

■決定力不足と待ち受けていた「落とし穴」

 これだけ決定機をつかみながらも1ゴールも決まらなかったのは、明らかに決定力不足だった。だが、相手GKが当たっていて運にも見放されると、どれだけ攻めても点が入らないのがサッカーという競技の特性である。

 そして、そんなときに落とし穴が待ち受けているというのもサッカーではよくあることだ。

 55分。横浜FMはエドゥアルドからパスを受けた左サイドバックの永田勝也が中央に入れ、アンデルソン・ロペスがワンタッチで西村拓真に落とすと、西村が倒されてPKを獲得。アンデルソン・ロペスが決めて横浜FMが先制した。

 それまでの試合内容を考えれば、川崎にとって1点差を追いつき、逆転することは十分に可能だったはず。ところが、PKのわずか2分後に西村にスーパーなミドルシュートを決められ、連続失点を喫してしまったのだ。

 右サイドバックの松原健からアンデルソン・ロペスへのくさびのパスが入り、落としたボールを西村が決めたものだ。

 PKの場面もそうだが、くさびのパスが入った瞬間にもう少し厳しくチェックしておくべきだったし、シュートの場面でも寄せきれなかった。そして、先制を許したことで守備の集中が途切れたようにも見えた。

■将来性豊かなCBの「経験不足」によるミス

 川崎のCBは24歳の佐々木旭と19歳の高井幸大が務めている。

 パリ・オリンピックで大活躍した高井は試合ごとに安定感を増し、空中戦ではどんな相手とも互角以上に戦えるし、俊足を生かして広い範囲をカバーできるようになった。また、佐々木もこのところ安定感を増し、2人ともボールを持ちあがって攻撃の起点にもなれる。素晴らしい、将来性豊かなセンターバックだ。

 ただ、横浜FM戦での2連続失点の場面をみると、やはり経験不足によるミスが出たようだ。川崎は71分にセンターバックとして車屋紳太郎を入れ、佐々木を左サイドバックに移したが、やはりDFラインの一角には車屋のような経験豊富な選手を入れたほうが良いのかもしれない。

 ただ、3点を追う中で、終盤にも猛攻をかけて、川崎は89分には途中出場のエリソンが強烈なボレーシュートを決めて追いすがった。

 今シーズン前半戦で、川崎は良いところをまったく出せずに敗れるような試合が多かった。だが、この日の横浜FM戦は数多くのチャンスで決めきれなかったことと、守備の集中が切れたことが敗因だった。つまり、内容的にはけっして劣っていたわけではなく、同じ負けであっても、今シーズン前半戦の頃とは意味が違う。

 若いセンターバックも、一つ苦い経験をしたわけで、これも成長の糧となるはずだ。

■古典的なプレーメーカーがもたらした「リズム」

 川崎がここにきて、本来の攻撃力を取り戻したのは、大島僚太の復帰によるところが大きい。

 大島にボールが入れば、奪われることはほとんどない。大島と、ポジションを自由に変えてプレーする家長が組んだら簡単にはボールを奪えない。大島自身がボールを持ってゲームを落ち着かせ、そして、周囲がきちんとした位置取りを取ったところで、タイミングを見てボールを動かしてスイッチを入れるのだ。

 大島が欠場中は、中盤でボールを落ち着かせることができなかった。橘田健人脇坂泰斗もテクニックのある素晴らしいMFだし、今シーズンは遠野大弥も進境著しい。だが、ボールの動きを止めて落ち着かせるようなプレーはなかなかできないようだ。

 その点、大島が入ることで、強かった頃の川崎と同じように緩急のリズムが取り戻せた。

 そして、もちろん大島の戦術眼とテクニックによって、一発のパスでチャンスが生まれることもある。第26節のFC東京戦での先制ゴールの場面では、大島からマルシーニョの足元に、浮き球で、しかもコントロールしやすい素晴らしいパスが通った。そして、マルシーニョのクロスを山田がヘディングで決めたのだ。

 こうしたリズムの変化の中でプレーすることによって、橘田や脇坂のテクニックもさらに活用できるようになる。

 大島僚太という、今は希少な、古典的なプレーメーカーの存在が、川崎復活の鍵となる。横浜FM戦での大島は、マルシーニョが走った後の左サイドで守備の仕事もこなしていたが、大島にはもっと余裕を持たせるべきかもしれない。

 その他、1トップを任されることが多い山田が、そのフィジカル的な強さを生かして前線でボールを収めたり、自らゴールを狙ったりと大きく成長を続けてもいる。“川崎らしさ”を完全に取り戻す姿を早く見たいものである。

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