女子オールスター競輪で完全優勝を果たした、佐藤水菜 photo by Takahashi Manabu【オリンピアン佐藤、完全優勝】 真夏の祭典で見せた世界の脚。その強さは圧巻だった。 8月13日から15日にかけて平塚競輪場で開催された女子…
女子オールスター競輪で完全優勝を果たした、佐藤水菜
photo by Takahashi Manabu
【オリンピアン佐藤、完全優勝】
真夏の祭典で見せた世界の脚。その強さは圧巻だった。
8月13日から15日にかけて平塚競輪場で開催された女子オールスター競輪は、ファン投票上位者のみ出場できるレース。人気・実力を兼ね備えた選手たちのなかにあって、パリ五輪自転車競技トラック日本代表の佐藤水菜が、初日にファン投票上位7選手で行なわれたガールズドリームレースからの3連勝で完全優勝を果たした。
「パリオリンピックまでほとんどガールズケイリンに出場せずに、ひたすら代表の練習に集中できたおかげで今回のオールスターでもいい結果が出せたと思います。みなさんに(ガールズケイリンでの)姿を見せられていない間にどれだけ進化できるかが課題だったんですが、すごくいい形で戻って来られたんじゃないかと思います」
パリ五輪までは自転車競技トラックの代表としての活動が中心だったため、ガールズケイリンの出走は昨年12月のガールズグランプリ以来、実に8カ月ぶり。姿を見せる機会は少なかったが、ファン投票3位で選出された事実が示すとおり、誰もがその走りを待ちわびていた。
「決勝はファンへの恩返しの意味でも強いレースを見せたいと思っていました。全力で行ききるレースで優勝できてうれしかったです」
GP、GⅠを含む特別レースでの優勝はこれで8回目となる。昨年のグランプリ女王は久しぶりの国内のレースで貫禄を示した。
【ファンの声援を力に】
パリ五輪では200mフライングタイムトライアルで争われた女子スプリント予選で日本記録、アジア記録となる10秒257をマーク。直後に更新されたものの、これはオリンピック記録でもあった。期待されたメダルには手が届かなかったが、「やり切ることはできたので納得している」と結果をしっかり受け止めたうえで、今開催に臨んだ。
しかし、パリからの帰国は開催初日の13日朝というハードスケジュール。厳しい条件であることは間違いなかったはずだが、初日のガールズドリームレースから疲れを感じさせない走りを見せた。残り1周を迎える直前のホームストレッチから一気に追い上げて先頭に立ち、後続の選手に迫られることなくフィニッシュ。2日目の予選は最終周回のバックストレッチから踏み込んでトップに出ると、そこからも加速を続け、後続に9車身差の大差をつける豪脚ぶりを発揮した。
そして迎えた決勝。残り1周半となった第3コーナーで坂口楓華が最後尾7番手から仕掛けると、5番手にいた佐藤が反応し、一気にポジションを上げていく。残り1周を先頭で入ると、そこから他の選手の追随を許さずゴールまで駆け抜けた。
「1コーナーからすごく声援は聞こえました。自分でも調子いいなと思いながら、バックストレッチでもすごく声援が聞こえて、さらに加速できて。ゴール前のきついなって思ったところも声援があり、踏ん張りきることができました」
ファンの声が後押しになったと記者会見場で笑顔をのぞかせた。
ゴール後、大きく手を広げ喜びを表現
photo by Takahashi Manabu
【それぞれのオールスター】
2着はこちらもオリンピアンの太田りゆ。残り1周で佐藤の後ろにつき、「追い込みにいくタイミングは、自分ではバッチリだと思ったんですけど」と狙いどおりの動きだったが、その背中には届かなかった。プロデビュー直後から自転車競技に軸足を置いていたが、今後はガールズケイリンに絞って活動していく予定だ。
「仕掛けも下手だし、気持ちの上げ下げもあるので、ファンのみなさんにたくさん応援していただいて、盛り上げてもらいながら頑張りたいです」と前を見据えた。
3着は日野未来。「つき切れなかったです。ちぎれました(笑)。すごいトルクとスピードでした」と同期の佐藤の強さに白旗をあげた。ただそのスピードに対応できないと見ると、上がってきた太田の背後につくレース巧者ぶりを発揮しての3着は見事。初日のドリームレースで佐藤、太田のオリンピアンふたりに割って入る2着、2日目も3着と3日間を通じてすべて3着以内にまとめた。「成長を実感できました。公営競技を代表する選手になれたと思います。今はまた帰って練習しなきゃって気持ちです」と笑顔で手応えを口にした。
また8年連続ファン投票1位で、かねてから自転車競技の日本代表勢への対抗心を見せていた児玉碧衣は5着に終わった。「真後ろにサトミナ(佐藤水菜)がいたのが気になってしまいました。そこで自分が仕掛けたら、サトミナの展開になってしまうし、難しかった。打倒ナショチ(ナショナルチーム)と言っていましたが、おこがましいです」と悔しげな表情を見せた。
3日間のレースを終え、佐藤は今後について問われると、「(ナショナルチームでの)競技も、ガールズケイリンも、まだ何も考えていません。少しオフを挟むのでそこでゆっくり考えたいです。しっかり勝ち続けることは今後も大事にしていきます」と方向性を決めるのはこれからだとの考えを示した。
しかしすでに「佐藤一強時代の到来」という声も聞こえてくる。この真夏の祭典での勝ち方を見る限り、今後もガールズケイリンの絶対的な存在であり続けることだけは間違いないだろう。
佐藤水菜の強さを証明したレースとなった
photo by Takahashi Manabu