産声をあげた1993シーズンから32年目を迎えたJ1リーグの長い歴史のなかで、3試合連続でマルチゴールを決めた選手は過…

 産声をあげた1993シーズンから32年目を迎えたJ1リーグの長い歴史のなかで、3試合連続でマルチゴールを決めた選手は過去に8人しかいない。

 そして、11日のFC東京戦で、柏レイソル戦、ヴィッセル神戸戦に続いて2ゴールを決めた川崎フロンターレのFW山田新は、史上9人目の選手になった。

 直近では昨年6月に、横浜F・マリノスのFWアンデルソン・ロペスが達成している偉業を知らされた山田は、苦笑しながらちょっぴり意外な反応をみせた。

「そうなんですか。意外にいるんですね」

 もっとも、ロペスとは間接的な“縁”がある。後半途中からの出場が続いていた今シーズンの途中から、戸田光洋コーチとの居残り練習をスタートさせた。

 テーマはヘディングからのシュート。マンツーマンの特訓はピッチ上だけにとどまらず、一流と呼ばれるストライカーのヘディングシュートを映像で研究した。

「左右からのクロスに全身を連動させる動きを意識して、戸田コーチと一緒にいろいろな選手の映像を見ました。体の動きやインパクトの瞬間、体の重心のもっていき方を見て、それらを踏まえたうえでトレーニングを積んできました」

■「みんなが自然と自分を見てくれるようになった」

 居残り練習の内容を明かした山田は、さらにこう続けている。

「Jリーグでは大迫(勇也)選手をはじめ、レオ・セアラ選手やアンデルソン・ロペス選手、大橋(祐紀)選手、あとはピエロス・ソリティウ選手がヘディングシュートを放つ映像を、ときにはスローで見ながらいろいろと学びました」

 実は中断前の柏戦を迎えるまで、身長175cmの山田が頭で決めたゴールは「0」だった。一転して柏戦の10分に、右サイドからFW家長昭博があげたクロスに、ファーサイドへ飛び込んだ山田がリードを2点に広げるヘディング弾を決めた。

 神戸戦の71分には、左サイドからDF三浦颯太があげたクロスが相手に当たり、落下点がファーに変わった状況にとっさに反応。体の強さを生かしながら飛び込み、最後は身長188cmの菊池流帆に頭で競り勝ってゴールネットを揺らした。

 迎えたFC東京戦の15分。左サイドからFWマルシーニョがあげた、緩やかなクロスに山田は戻りながら対応して、最後は上半身を強く振って頭を合わせた。5分後には右サイドからDFファンウェルメスケルケン際が放ったクロスに、身長186cmのDF岡哲平との競り合いを制し、頭をかすめさせる技ありの一撃を決めた。

「チームが相手ゴール前まで攻め込む回数が増えているし、自分も自信をもって、ポジショニングなども整理してプレーできている。自分が点を取りはじめて、みんなが自然と自分を見てくれるようになったのも、得点につながっていると思う」

■「1人になりたい」

 多彩な形からのヘディングシュートという武器を搭載し、ゴール量産につながっていると語る山田へ、J1リーグ歴代7位の通算140ゴールをマークしている36歳のベテラン、FW小林悠も「もっともっと伸びていくと思う」と目を細める。

「ゴールへの欲があるし、自分が決めてやる、という気持ちが前面に出ている。技術ではなく気持ちの部分で強さを見せている姿は、僕の若いときにすごく似ているというか、同じようなものを感じる。もちろんパワーやスピードは新の方がはるかにうえだし、今後は代表入りするような選手になってほしいと思いっています」

 過去に3試合連続でマルチゴールを決めた8人のなかで、日本人選手は1998シーズンに4試合連続ハットトリック達成のギネス記録を樹立したジュビロ磐田のFW中山雅史、セレッソ大阪時代の2003シーズンのFW大久保嘉人しかいない。

「嬉しいけど、1人になりたいというか、自分だけのものがあればいいかなと」

 偉大なストライカーたちに続いた状況を喜んだ山田はオンリーワンに、つまり5試合連続マルチゴールの新記録を樹立する壮大な夢も語った。標的にすえるのはマリノスの次節と、埼玉スタジアムに乗り込む第28節。川崎を5連勝に導くマルチゴールを決めたとき、山田はJ1の得点王争いにも加わっているかもしれない。

(取材・文/藤江直人)

いま一番読まれている記事を読む