斎藤佑樹氏、清宮幸太郎らを育てた和泉監督「僕が見てきた中でトップ級」 高校通算63本塁打を誇る早実の主将、宇野真仁朗内野手(3年)は第106回全国高校野球選手権大会第5日の11日、鳴戸渦潮(徳島)との1回戦に「2番・遊撃」で出場し、満塁で走…

斎藤佑樹氏、清宮幸太郎らを育てた和泉監督「僕が見てきた中でトップ級」

 高校通算63本塁打を誇る早実の主将、宇野真仁朗内野手(3年)は第106回全国高校野球選手権大会第5日の11日、鳴戸渦潮(徳島)との1回戦に「2番・遊撃」で出場し、満塁で走者一掃の逆転3点二塁打を放つなど5打数3安打3打点と活躍。チームの初戦突破に貢献した。ネット裏のプロのスカウト陣も高く評価しており、今後さらに急上昇する可能性もある。

 2点ビハインドで迎えた2回。2死満塁の好機に、カウント3-2から真ん中やや低めのスライダーをとらえた宇野の打球はレフトフェンスを直撃し、起死回生の逆転3点二塁打となった。スタンドインしていれば今大会第1号本塁打だったが、あと一息足りず「力が足りなかったと思いました」と苦笑した。

 西武の潮崎哲也スカウトディレクターは「63本もホームランを打っているということは、飛ばす力が優れているということ。その一端が見えました」と評価。今年から高校野球の金属バットが低反発の新基準に移行し、春の選抜で大会中の本塁打がわずか3本(うち1本はランニングホームラン)に終わった中、この長打力は希少価値が高い。

 一方、ロッテの榎康弘アマスカウトディレクターは「パワーのある打撃が魅力だと思います」とした上で、「伝統の“WASEDA”のユニホームを身にまとっているせいもあってか、非常にスター性を感じます」と指摘する。もともと小学6年生だった2018年、侍ジャパンU-12代表に外野手として選出され、元巨人内野手の仁志敏久監督の下、8月に台湾で開催された「U12アジア選手権」に出場した。読売ジャイアンツジュニアにも内野手として選ばれ、同年12月に札幌ドームで行われた「NPB12球団ジュニアトーナメント」に出場している“サラブレッド”だ。

 これまでに元日本ハムの斎藤佑樹氏、現日本ハムの清宮幸太郎内野手らをプロへ輩出してきた和泉実監督をして、「僕が見てきた中でトップ級の選手」と言わしめる素材。今夏の西東京大会序盤には不振にあえいでいたのだが、徐々に調子を上げ、日大三との決勝戦では先制適時打を放ち、チームを9年ぶりの夏の甲子園に導いた。そして初めての甲子園で、この夏最高の仕事をやってのけるあたりは、スター性のなせる業だろう。

花咲徳栄・石塚は初戦敗退…宇野に残る評価上昇のチャンス

 今年から低反発となった金属バットではなく、思い切って木製のバットを使っていることも、宇野の特徴の1つだ。かつて高校球界でスラッガーとして鳴らしながら、プロ入り後に木製バットへの順応に苦しみ、大成できずに終わった例は枚挙にいとまがない。その点、宇野の場合は仮に来年からプロの世界に飛び込んだとしても、バットが変わることはない。

 DeNAの木塚敦志アマスカウトは「バット以外にも、プロの投手の球威、変化球のキレなど、対応しなければならないものはたくさんあります。ただ、バットをうまく扱えることがアドバンテージにつながる可能性はありますね」と見る。前出の潮崎ディレクターは「(木製バットで打っていることは)順応性が高い現れでしょう」と評価する。

 この日の試合では、遊撃守備でもイレギュラーした痛烈な打球を咄嗟にさばくなど、いいところを見せた。だが、西東京大会で背番号「5」を付けていた(今大会は「6」)ことが示すように、当初は三塁を守っていた。「どうしてもバランスが悪い」と感じた和泉監督が、西東京大会途中に三塁を守っていた高崎亘内野手(3年)とポジションを入れ替えた経緯がある。その分、ショートとしてのスローイングの部分では、高校生内野手としてトップ評価を受ける花咲徳栄・石塚裕惺内野手(3年)らの後塵を拝している現実もある。

 もっとも、石塚を擁する花咲徳栄は初戦で敗退したが、早実にはまだ先がある。評価を上げるチャンスは残されているとも言える。宇野は「今日は、ホームランを打ちたいという意識は全くありませんでした。チームの勝ちに貢献できる1打を打ちたいと思っていました」と強調したが、次戦でプロのスカウトやファンが見たいのは、最大の魅力の“一発”かもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)