独創的なダンスで世界の注目を集めた(C)Getty Images 今回のパリ五輪では多くの選手がSNSによる批判に悩まされる中、新競技のブレイキンでも厳しい批判にさらされている選手がいた。 日本のファンの間では「クロネコヤマトのような衣装」…

独創的なダンスで世界の注目を集めた(C)Getty Images

 今回のパリ五輪では多くの選手がSNSによる批判に悩まされる中、新競技のブレイキンでも厳しい批判にさらされている選手がいた。

 日本のファンの間では「クロネコヤマトのような衣装」と評判を呼んだ豪州代表のレイチェル・ガン(ダンサー名・Raygun)がその人。「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」と5つの要素から採点される同競技でガンは全体最下位となった。

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 自身は競技後に「創造性が何より大事だった」と胸を張ったが、最下位だったことも影響してか、SNS上でも「とてもAはつけられない」「酔っ払いのようだ」「オリンピックに出るべきじゃなかった」など特に、海外ファンの間から厳しい意見が相次いだ。
   
 ガン自身は競技後、自身のインスタグラムを通じて「違っていることを恐れないでください。外に出て自分を表してください。それがあなたをどこに連れて行くかわかりません」と前向きなメッセージを発したが、そんなガンを擁護したのが同じく豪州出身のレジェンドOGだった。

 2012年のロンドン五輪女子100メートルハードルで金メダルを獲得するなど、陸上界で功績を残したサリー・ピアソン氏は、オーストラリアのメディア『news.com.au』の自身のコラムでガンについて言及している。

 「現在、オリンピック競技とは何か、ハイパフォーマンスとは何かなど、多くの議論が交わされています」としながら、SNS上でガンについて厳しい意見が飛び交っていることに踏み込んでいく。

 自身も参加した五輪に関して「すべてのアスリートの目標が金メダルを獲得することではありません」としながら、近代オリンピックの父として知られるピエール・ド・クーベルタン男爵の「オリンピックで最も重要なことは勝つことではなく、参加することである」という有名な言葉を引用。

 続けて「それこそがガンがやったことであり、彼女の活躍をきっかけに誰もが見落としていた点だ」とまずは参加することに大きな意義があるとした。

 今回の騒動ではガンに向け、SNS上でし烈な批判が続いていることを受け、豪選手団の団長も「本当に残念でした」とコメントしているが、ピアソン氏も「完全に同意します、私はとにかく誰かをいじめたり荒らしたりすることを容認しませんし、人々が彼女について言っていることは恐ろしいと思います」とSNS上で批判している人々を断罪した。

 「あなたが知らない人々から世界中で笑われることを想像してみてください」と人の立場に立つことが重要としながら、今回のガンのパフォーマンスに嘲笑コメントがついていることで、「アスリートに対するこの反発は、スポーツが将来の世代にブレークインするのを助けることは決してありません」とばっさり。五輪の大きな目的であるスポーツの持つ力を伝え、若い世代への競技普及につながらないと危惧する。

 さらに続けて、「私はオリンピックという伝統的なスポーツが大好きですが、前進し、進歩するためには、あらゆる種類のスポーツを通じて人々を巻き込む必要があります」と多種多様な競技に理解を示すことがスポーツ界にとっても大事とした。

 ガンはその点では「そのスポーツでおそらく他の誰よりも多くの目をブレイキンに向け」たことに成功したとして、話題を集めたカンガルーダンスなども真似する人が現れると見る。ひいてはそのような行動がスポーツの魅力を伝え、健全な発展につながっていくと結んだ。

 ブレイキンをめぐっては、すでに次回のロス五輪では不採用が決まっている。今大会ではダンスの新たな魅力を伝えたとされる中、またも選手をめぐってくり広げられた誹謗中傷問題。ピアソン氏が訴えるように「もし自分が言われたら」の観点がどの場でも必要なことは言うまでもない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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