金メダルを手にできず、涙した阿部詩。彼女の下にも誹謗中傷は相次いだ。(C)Getty Images 現地時間8月11日に行われる閉会式をもって、いよいよ幕を閉じるパリ五輪。「花の都」で100年ぶりに実現した今大会は、日本のメダルラッ…

金メダルを手にできず、涙した阿部詩。彼女の下にも誹謗中傷は相次いだ。(C)Getty Images

 現地時間8月11日に行われる閉会式をもって、いよいよ幕を閉じるパリ五輪。「花の都」で100年ぶりに実現した今大会は、日本のメダルラッシュをはじめ、各国アスリートのドラマチックなパフォーマンスの数々で小さくない話題を生んだ。

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 そうした中で、期間中に物議を醸し続けたのが、アスリートに対する誹謗中傷だ。日本でも選手たちは複雑な想いを打ち明けるほど被害は深刻化した。

 バレーボール男子日本代表の小野寺太志は、イタリア代表との準々決勝で痛恨のサーブミスを犯したことで差別的発言まで寄せられ、自身のXで「一部の方からの誹謗中傷もコメントやDMに届いていますが、僕があの場面でミスをしてしまったのも事実ですし、そのような意見があるのも仕方のない事だと思います」と投稿した。

 また、陸上女子競歩の個人の出場を辞退し、混合団体に専念することを発表した柳井綾音が、Xで「たくさんの方から厳しい言葉に傷つきました。試合前は余計神経質になり、繊細な心になります。批判ではなく応援が私たち選手にとって力になります。批判は選手を傷つけます。このようなことが少しでも減って欲しいと願っています」と発信していた。

 相次ぐ訴えを受けてもなお、改善の兆しは見えない。現地時間8月1日には、日本オリンピック委員会(JOC)が「侮辱や脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討する」と声明を発表。「心ない誹謗中傷、批判などに心を痛めるとともに不安や恐怖を感じることもある」と厳しく訴えた。

 そんなアスリートに対する“心無い攻撃”の膨大さが浮き彫りになるデータが明らかになった。

 フランスのラジオ局『RMC Sport』は「オリンピックは、普段はあまり注目されていないアスリートや種目にスポットライトを当てる機会を提供する一方で、残念なことにネット上の憎悪の惨禍も伴っている」と指摘。今大会の役員たちが講じた独自のAI機能による解析で、SNS上で合計150万件以上の投稿がフィルタリングされた事実を公表した。

 驚くべきは、約9万7000通が「虐待」「差別的」と判断され、警察の調査対象になったという点。さらに「35か国語で書かれていた」という誹謗中傷メッセージは、最も多くの被害を受けたのは英代表の選手たちだったという。

 SNSの発展によって、マイナー競技も含めたあらゆるスポーツが日の目を見る機会が増えたのは間違いない。一方で今大会のようにアスリートやチームスタッフたちが過剰な攻撃を受けているのも事実だ。こうした被害から当事者たちをどう守るかは、今後の国際イベントの課題と言えそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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