トライアスロンなどの競技が実施されているセーヌ川。(C)Getty Images パリ五輪の“象徴”とも言える舞台に対する議論は尽きない。トライアスロンやオープンウォーター(10キロレース)が行われたセーヌ川だ。【関連記事】「日本人の組織力…
トライアスロンなどの競技が実施されているセーヌ川。(C)Getty Images
パリ五輪の“象徴”とも言える舞台に対する議論は尽きない。トライアスロンやオープンウォーター(10キロレース)が行われたセーヌ川だ。
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開幕前から問題は噴出していた。フランス政府が総額14億ユーロ(約2400億円)という大規模な予算を投じて水質改善を図ってきたセーヌ川だが、大腸菌などの細菌濃度が高く、識者や各競技関係者たちから汚染状態への不安が相次いだ。
開幕式から続いた雨天の影響もあり、トライアスロンやオープンウォーターの公式練習のほか、男子トライアスロンが延期に。それでも大会組織委員会は水質が国際トライアスロン連盟の設ける基準値を下回ったとして競技を強行的に実施した。
だが、やはり「良くない匂いを嗅いだし、あまり考えたり感じたりするべきではないものも見た」(ベルギー女子代表のヨリアン・フェルメイレン談)という実際に泳いだ選手の証言にあるように、セーヌ川のコンディションは芳しくなかった。
問題を世間に晒すリポートが物議を醸している。現地時間8月8日にフランスの調査ウェブサイト『Mediapart』は、セーヌ川の水質が競技実施に適していたのは、開幕から8月5日の間で、わずか2日間のみだったと伝えた。
「水道公社オー・ド・パリの分析結果は、セーヌ川の水質が五輪開幕以来、ほとんど不十分だったことが明らかになった。開幕日の7月26日以降、国際トライアスロン連盟が設定した基準内で泳げた日は、わずか20パーセント。つまり10日のうち2日だけだった」
そう検査結果を明るみにした『Mediapart』は、男女トライアスロン競技が行なわれた31日は水質基準を満たしていたとしつつ、トライアスロン混合リレーが行なわれた8月5日は基準以下であったと報告。
さらにサンプリングポイントの一つとなったグロ・カイユ港で100ミリリットルあたり436コロニー形成単位(CFU)の腸球菌(糞便の存在を示す細菌)を測定したという。ちなみにこの数値は、国際トライアスロン連盟が設定した『400CFU/100mL』という限界値を大幅に超えるものである。
この報告を受け、海外メディアも危機感を募らせる。
トライアスロン男子代表のタイラー・ミスラウチュクが嘔吐する事態となっていたカナダの日刊紙『Journal de quebec』は「セーヌ川で泳いだアスリートたちは胃に問題を抱える危険がある」と指摘。『Mediapart』のリポートを伝えた上で「誰もが何か怪しいことが起こっているのではないかと疑っていた。一連の騒動で何よりも恥ずべきはパリ大会委員会の危機管理だ。完全に馬鹿げた秘密文化がそこにはある」と厳しく論じた。
パリ市長のアンヌ・イダルゴは、5日に行われた混合リレー終了後に「これだけ馬鹿にされ、論争があったのに、セーヌ川の汚染がなくなり、人が泳げるようになった」「除染されたセーヌ川が私たちの生活を変えることを認めるべき。もう誰かを安心させる必要はない」と誇らしげに語っていたが、“泳げる綺麗な川”とするには、不安要素がありすぎる。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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