今大会ではトライアスロン競技が行われてきたセーヌ川。しかし、水質に対する懸念は常に付きまとっている。(C)Getty Images 水質汚染が問題視されているセーヌ川を舞台にしたパリ五輪のレースに抵抗感を示すスイマーは少なくない。現…

今大会ではトライアスロン競技が行われてきたセーヌ川。しかし、水質に対する懸念は常に付きまとっている。(C)Getty Images

 水質汚染が問題視されているセーヌ川を舞台にしたパリ五輪のレースに抵抗感を示すスイマーは少なくない。現地時間8月8日には、翌日に実施される水泳のオープンウォーター(OWS)男子10キロに出場予定だったスウェーデン代表のヴィクトル・ヨハンソンが水質への懸念から辞退を発表した。

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 セーヌ川での競技実施を巡っては、開幕直後から大腸菌などの細菌濃度が高く、健康面を問題する声が噴出。実際、トライアスロンやオープンウォーターの公式練習のほか、男子トライアスロンが延期となった。それでも大会組織委員会は、水質が国際トライアスロン連盟の設ける基準値を「下回った」として競技を強行開催してきた。

 ただ、実際に泳いだ選手たちからはセーヌ川の状況に対する懸念を示す声は絶えなかった。現地時間7月31日に行われた女子トライアスロンに出場していたベルギー代表のヨリアン・フェルメイレンは、「橋の下を泳ぎながら、良くない匂いを嗅いだし、あまり考えたり感じたりするべきではないものも見た。セーヌ川は100年以上も汚れていたわけでしょ? アスリートの安全が最優先されていたとは到底思えない」と苦言。生々しい言葉は、環境改善の不完全さを物語った。

 いまだ安全面での不安は拭いきれていない。そうした状況でのレースが選手にとって大きな負担となるのは想像に難くない。ヨハンソンも母国の日刊紙『Svenska Dagbladet』などの取材で「スタートする気になれないんだ」と明かしている。

 競泳自由形400、800、1500メートルのスウェーデン記録保持者である25歳は、今大会も同3種目に出場済み。OWSも出場をギリギリまで考えていたが、「僕のところにも様々な情報が飛び込んできている。そして、確かなことは、病気になった人がいるということ」と主張。セーヌ川の水質汚染との因果関係は明らかになっていないが、トライアスロン競技後に体調不良者が複数人出たことで、健康を優先する決意を固めた。

「あらゆる勧告と存在するすべてのリスクを考慮し、棄権するのが僕にとって最善の決断だと感じた。だから、僕はセーヌ川で泳がないことに決めた。たとえ大腸菌の数値が下がったとしても、スタートしようという気にはなれなかった」

 今五輪開催に向け、フランス政府が約14億ユーロ(約2250億円)という大金を投じて改善に取り組んできたセーヌ川。大会後には一般市民向けに遊泳開放を予定しているが、選手たちからクレームが相次ぐ現状ではアピールは成功したとは言い難い。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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