壮絶な減量をこなすも、制限を超えてしまったビネシュ。彼女の騒動に対する波紋は広まり続けている。(C)Getty Images 世界を騒然とさせる“アクシデント”だった。現地時間8月7日にパリ五輪・レスリング女子フリースタイル50キロ…

壮絶な減量をこなすも、制限を超えてしまったビネシュ。彼女の騒動に対する波紋は広まり続けている。(C)Getty Images

 世界を騒然とさせる“アクシデント”だった。現地時間8月7日にパリ五輪・レスリング女子フリースタイル50キロ級で決勝に進出しながら体重超過で失格となったビネシュ・フォガト(インド)のそれだ。

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 ビネシュは前日の1回戦で、東京五輪金メダリストで同階級の優勝候補の一角だった須崎優衣を撃破。見事なアップセットで勢いに乗った29歳は決勝まで駒を進めていた。しかし、その晩に事態は急変する。消費したエネルギーを取り戻すために摂取した食事の影響か、体重が規定から2キロも増加していたのだ。

 体重増加に焦った本人と陣営は一夜を通して減量を実行。水も取らない激しいサウナセッションに加え、コーチの提案で頭髪も一部をカット。それでも体重が落ちなかったために、汗が出なくなったところで採血も行ったが、決勝当日の計量ではリミットを100グラムオーバー。問答無用で失格処分を命じられた。

 計量後に極度の脱水症状に陥ったという。56キロという彼女の通常体重を考えてもビネシュが敢行した減量は心身の両面にとってあまりに壮絶だった。

 結局は本人の決断という意見もある。だが、必死の覚悟で臨んだ陣営を含め、最後までメダルへの望みを捨てなかったビネシュの心情を慮る声もある。世界選手権6度優勝のジョーダン・バローズ(米国)は自身のXで「ビネシュに銀メダルを与えるべきだ!」と擁護した。

「恐らく今回のような話がIOC(国際オリンピック連盟)の目を覚まさせるだろう。レスリングには6つ以上の階級が必要なんだ! ワールドクラスの相手に厳しい3試合をこなした後、金メダルのためにこのようなやり方で夜通し準備する必要はないんだ」

 ロンドン五輪の金メダリストでもあるバローズは、文字通りレスリングの酸いも甘いも熟知する。だからこそ、男女ともに6階級で実施されている現在の階級制をより細分化するべきというアイデアを提唱する。

 さらに「なんとしてでも決勝に出場するために、ビネシュの体重を少しでも落とそうとインドチームは死に物狂いだったんだ」と理解を示したレジェンドは、「UWW(世界レスリング連合)への即時ルール変更提案」として以下の案も投げかけている。

(1)2日目は1キロまでの増量が許可される
(2)計量は8:30から10:30まで
(3)今後の決勝戦では、対戦相手が計量失敗した際には、棄権試合とする
(4)準決勝に勝利後、たとえ2日目の計量を失敗したとしても、決勝進出者2名のメダルは担保される。金メダルを獲得できるのは、2日目の計量に成功したレスラーのみ
(5)ビネシュに銀メダルを与える

 失格処分決定後に自身のSNSで「私の勇気はすっかり折れてしまいました。今の私にはこれ以上の力はありません」と悲壮なコメントを並べ、「さようならレスリング 2001-2024」と現役引退を示唆したビネシュ。彼女のような“悲劇のヒロイン”を救うためにも、レジェンドの金言は一考の余地があると言えよう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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