パリ五輪で異彩を放つリン・ユーチン。(C)Getty Images 正直な告白は興味深いものがある。 現地時間8月7日に行われたパリ五輪・女子ボクシング57キロ級準決勝で、リン・ユーチン(台湾)は、エシュラ・ユルドゥズカフラマン(ト…

パリ五輪で異彩を放つリン・ユーチン。(C)Getty Images

 正直な告白は興味深いものがある。

 現地時間8月7日に行われたパリ五輪・女子ボクシング57キロ級準決勝で、リン・ユーチン(台湾)は、エシュラ・ユルドゥズカフラマン(トルコ)と対戦。フルマークでの判定勝ちを収め、銀メダル以上を確定させた。

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 開幕前にリン・ユーチンは、昨年にIBA(国際ボクシング協会)が主催した世界選手権で実施された性別適格性検査で不合格となったと判明。一般的に男性が持つ「XY」染色体が検出されたとして、性別騒動に揺れた。

 波紋が広がり、SNSや一部メディアでは「男だ」と批判も受けた。それでも「知らない人たちやヘイターたちから何を言われようとも、私は本当に気にしてません」と台湾メディア『Focus Taiwan』のインタビューで語るリン・ユーチンは、仰天のエピソードも披露する。

「たぶん騒がれるのは私の外見のせいだと思います。時々トイレに行くと『え?そっちでいいの?』と聞かれる時もありますから。でも、そういう時は『私は女性です』と答えるようにしているんです。こういう問題も身長やヘアスタイルのせいもあるかもしれない。けど、私はいつもありのままの自分でいることを心掛けているんです。

 結局のところ、私はボクサーなんです。何よりも良い結果、そして良い実績を追求したいんです。自分のパフォーマンスを向上させることに集中したい。だから、髪を長くしていたら、直すのに多くの時間を費やさなければならなかっただろうし、午前と午後のルーティンの間に休む時間もなかったかもしれないとも思います」

 実生活でも男性であると間違われるというリン・ユーチン。そういった経験の多さから性別騒動で世間から批判を受けようとも「私たちは自由で、民主的な社会に住んでいるんです。誰もが言論の自由を持っているから」と断言。周囲の喧騒も意に介していないという。

「言いたいことを言うのは自由です。でも、同じように自分のやりたいことを決めることも自由です。誰かの固定観念に合わせる必要はないんです。もちろん諦めたくなる時もあります。試合に負けたときや、パフォーマンスが悪くて叱られた時は嫌になります。でも、やめるのは簡単だけど、一生懸命働き続けることの方が難しい。だから簡単にはやめない。やめれば、長年の努力をすべて放棄することになるんです」

 逆境も持ち前の胆力で乗り越えてきた。現地時間8月10日には、金メダルを懸けて、ユリア・セレメタ(ポーランド)と対戦するが、「夢を追い求めることが私を強くしてくれる」と胸を張るリン・ユーチンがいかなるパフォーマンスを見せるか注目だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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