体重超過で失格処分となったビネシュ。(C)Getty Images 文字通りの大一番を前にした、まさかの失格騒動に波紋が広まった。 現地時間8月7日に行なわれるパリ五輪・女子レスリングのフリースタイル50キロ級決勝で、サラ・ヒルダー…

体重超過で失格処分となったビネシュ。(C)Getty Images

 文字通りの大一番を前にした、まさかの失格騒動に波紋が広まった。

 現地時間8月7日に行なわれるパリ五輪・女子レスリングのフリースタイル50キロ級決勝で、サラ・ヒルダーブラント(米国)と対戦予定だったビネシュ・フォガト(インド)が、当日に体重超過が判明。100グラムのオーバーで失格となった。

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 インド・レスリング連盟(WFI)は、同日中に統括団体である世界レスリング連合(UWW)に異議申し立てを行ったが、見直される可能性はまずないと見られている。

 3度目の五輪出場を果たしたビネシュは、パリで文字通りの快進撃を見せていた。1回戦では、東京五輪金メダリストで、外国勢には94連勝と圧倒的強さを誇っていた須崎優衣を撃破。世界に衝撃を与える番狂わせを起こしていた。

 思わぬ形で散ったビネシュの金メダルへの夢。これには期待を寄せていたインド国内でも衝撃が広まった。そして、本人はもちろん、体調管理を徹底させられなかったWFIをはじめとするスタッフ陣に厳しい目が向けられている。

 インドのニュース局『Aaj Tak』は、ビネシュの試合前日の夜に計測された体重が52キロであったと報道。さらに「我々は彼女に個人的にコーチ、理学療法士、そして栄養士もつけていた。その担当者たち全員が責任を追うべきだ」というWFIのサンジェイ・シン会長のコメントを紹介し、「たった1日で体重が2キロも増えた理由はさまざまに考えられるが、主にストレスや睡眠不足が主な原因と考えられている。そうした問題に応えられるのは特別に用意されたスタッフたちだけだ」と断言。管理能力の低さを断じている。

 また、そもそもとして、50キロがビネシュにとって「適正体重」ではないという指摘も飛んでいる。インドの日刊紙『Dainik Jagran』は、当人の通常時の体重が55から56キロであり、以前は53キロ級が敵階級であった報道。その上で50キロ級での出場を強いた関係者たちを次のように断じている。

「あくまで最終的な決定は『家でオリンピックを見ることになれば、後悔していた』というビネシュ自身によるものだ。しかし、彼女の通常体重は多くても56キロとされている。50キロ以下にまで落とし、維持するのは健康上で大きな危険が伴う。医者たちは彼女に怪我のリスクがあるからと注意をしていた。本人も『久しぶりに体重をここまで落とした。死ぬかもしれない』と語っていたことがある」

 通常時から6キロ以上も落とし、維持しなければいけないという過酷さが、ビネシュにとって相当なストレスになっていたのは想像に難くない。そうした環境が短期間での体重増加に繋がった可能性も十分に考えられる。

 危険なリスクを承知で追い求めた五輪の夢。しかし、その結果は、関係者たちにとってあまりに残酷な形で幕切れとなった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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