「パリ2024オリンピック(下記:パリオリンピック)」のBMXレーシング種目が現地時間2024年8月1日(木)~8月2日(金)の2日間にわたって開催され、2日(金)に決勝が行われた。男子はフランスのヨリス・ドデー、女子はオーストラリアの榊原…

「パリ2024オリンピック(下記:パリオリンピック)」のBMXレーシング種目が現地時間2024年8月1日(木)~8月2日(金)の2日間にわたって開催され、2日(金)に決勝が行われた。男子はフランスのヨリス・ドデー、女子はオーストラリアの榊原爽が金メダル獲得。なお日本人唯一の出場となった畠山紗英選手は準決勝敗退となり全体16位で大会を終えた。

2008年の北京オリンピックから採用され今回で5回目となる本種目。東京大会ではレーシング種目の醍醐味である現地観戦が行えず無観客となったこともあり、今回のパリ大会ではそんな難しい時期も乗り越えた念願の有観客開催に過去最大級の盛り上がりを感じられた大会となった。

なお今大会の会場はパリ市内から車で40分ほどの距離にある「スタッドBMXサン・カンタン・アン・イヴリーヌ」。普段からワールドカップも開催される国内でも最高峰のBMXコースをオリンピック仕様に改修した。オリンピック大会としたは初の屋根付きの全天候型の会場であり、初日には雨天に見舞われることもあったが滞りなく大会が行われた。

そしてオリンピックで特別なのが競技フォーマット。本来は予選から決勝まで1本ずつ走って勝ち上がる形ではあるが、オリンピックでは敗者復活戦と決勝以外の準々決勝と準決勝は3本という特殊なフォーマットで、この3本ではほぼ各選手総当たりで競った上で合計の順位の和が小さい順に勝ち上がるスタイルとなり普段とは異なる戦い方が強いられた。

本記事では歴史的な一戦となった決勝レースの模様と畠山紗英選手のライディングについて振り返る。

自国開催フランス人選手が強さを見せ、史上初の表彰台独占。パリオリンピックにふさわしい幕切れに

男子カテゴリーは24名が出場し準々決勝、敗者復活戦、準決勝と熾烈な戦いを勝ち上がった8名によって決勝にて金メダルをかけて争う形となった。今回は準々決勝から拮抗したレース展開を見せており、準決勝では東京オリンピックの銀メダリストのカイ・ワイトが転倒し決勝進出を逃すなど実力者が苦戦を強いられる戦いになった。

そんな中、決勝に勝ち上がったのは、ヨリス・ドデー(フランス)、シルバイン・アンドレ (フランス)、ロメイン・マユー (フランス)、セドリック・ブッチ (スイス) 、キャメロン・ウッド (アメリカ合衆国)、マテオ・カルモナ (コロンビア)、サイモン・マーカート (スイス)、アイザック・ケネディ (オーストラリア)の8名。

見事好スタートを切り第一コーナーへトップで進入したのは、長年世界最高峰に君臨し様々なタイトルを残している現世界チャンピオンでベテランライダーのヨリス・ドデー、そしてドデーと共に同じく長年世界で活躍しているシルバイン・アンドレ、そして昨年の世界チャンピオンでここ最近のワールドカップで幾度も優勝しているロメイン・マユーというフランス最高戦力である3名と、オーストラリアのエースであるアイザック・ケネディ。

しかし唯一アウト側にいたケネディは弾かれてコーナーから外れ転倒し戦線離脱。第1コーナーを抜けた時点ではメンズセクションをドデー、アンドレ、マユーの順でリードしこなしていく。その後、先頭の3名を追うべく猛チャージをかけてきたのはスイスのセドリック・ブッチ。第2コーナーで3番手のマユーをインコースから追走、そのブッチにアメリカのキャメロン・ウッドが続く展開となるもマユーにはわずか届かず、マユーが最後まで逃げ切りフランスのパリで開催されたこのオリンピックは史上初のフランス人選手がメダルを独占するという幕切れを迎えた。最終的には第1コーナー後の順位で変わらず、そのまま1位にドデー、2位にアンドレ、3位にマユーという着順となった。 

やはり自国の地の利もあるのかフランス人選手が大会全体を通して圧倒的な強さを見せた。元々世界中でも強豪国であったフランスだが、今大会でさらにBMXレーシングのレベルを一段階引き上げるレースを見せたように思う。今回の経験から改めて各国が彼らの強さの秘訣を研究してさらにそのレベルに追いつくべく力を付けてくることだろう。まさにBMXレーシングシーンの歴史の1ページを刻んだ瞬間となった。

兄・魁の思いも背負って悲願の金メダルを獲得した榊原爽。日本の畠山紗英は転倒に見舞われるも挽回し力強いライディングで全体16位

女子カテゴリーも男子と同様に24名が出場し準々決勝、敗者復活戦、準決勝と熾烈な戦いを勝ち上がった8名が決勝にて金メダルをかけて争った。女子も準々決勝では2022年世界チャンピオンのフェリシア・ステンシル(アメリカ)が敗退し、準決勝ではロンドン2012オリンピックとリオ2016オリンピック 金メダリストのマリアナ・パホン(コロンビア)が決勝進出を逃すといった稀に見る極めてハイレベルな戦いとなった。

なお決勝に勝ち上がったのは、榊原 爽 (オーストラリア) 、マノン・ヴィンストラ (オランダ)、ゾエ・クレーセン (スイス)、ローラ・スマルダー (オランダ) 、モリー・シンプソン (カナダ)、アリス・ウィロビー (アメリカ合衆国)、アクセル・エティエン (フランス)、べサニー・シュライバー (イギリス)の8名。

今大会の決勝レースまでの展開としては全てのレースで1位を残したオーストラリアの榊原爽と東京オリンピック金メダリストのべサニー・シュライバーが調子の良さを見せており金メダル争いはこの2人かと思われた。そんな中で始まった決勝ではまさかのシュライバーがスタート後のジャンプで加速できず金メダル争いから遠のく。一方で榊原は好スタートを切り1位で第1コーナーに進入するとリードを伸ばした。

そしてそんな榊原に続いて2番手に浮上したのはスタートで出遅れたもののコーナーをインサイドから切り込んだオランダのマノン・ヴィンストラ。しかし第2ストレートは混戦で、ゾエ・クレーセン (スイス)、モリー・シンプソン (カナダ)、アリス・ウィロビー (アメリカ合衆国)の3名が横並びになる瞬間もある中でクレーセンが抜け出すとヴィンストラを猛追。その後も最終ストレートまでもつれるもヴィンストラが逃げ切り、1位に榊原、2位にヴィンストラ、3位にクレーセンという着順となった。 

今回新オリンピックチャンピオンとなった榊原は、前回の東京大会の時にも優勝候補とメダルが期待されていたが転倒し脳震盪になりそのチャンスを逃していた。それから脳震盪を克服する苦しい期間も含めた3年の月日を経て、今年は全てのワールドカップの大会で優勝か準優勝するという万全な状態で今大会に出場し、全レース1度も他選手にトップを譲らず決勝も1位でフィニッシュし金メダルを勝ち取った。

会場で一緒に榊原の勝利を祝った兄・魁はかつて東京オリンピックを共に目指した世界最高峰の選手だったが、オリンピック選考中であった2020年2月に大怪我をして選手生命を絶たれた。共にオリンピックでの金メダル獲得を誓った2人だけに当時の絶望感や喪失感は計り知れないだろう。そんな兄の思いを共に獲得した金メダルへの喜びは格別に違いない。

一方で今回金メダルを獲った榊原と幼少から切磋琢磨してきたのが日本人唯一の出場となった畠山紗英。彼女も東京オリンピックでは自国開催ということもありメダル獲得が期待された選手の1人。ただその東京大会では1本目の転倒により鎖骨を骨折し棄権。怪我から復帰後も毎年骨折が続き苦しい3年間を過ごした。

なんとか過去最高のコンディションに復調して挑んだ今大会では、前回同様に1本目で転倒し過去の悲劇がフラッシュバックするほどの苦しい場面からのスタートとなったが、敗者復活戦ギリギリのボーダーラインの20位で通過。敗者復活戦では2位通過と1本目で転倒した選手とは思えない執念の走りで準決勝へ駒を進めた。

大会2日目に行われた準決勝では前日の転倒による怪我で身体が痛む中、レースに挑むもうまく3本を良い結果でまとめきれず惜しくも準決勝敗退となったが、確実に次のロスオリンピックで活かされる経験と悔しさを得た大会となった。今後の畠山のレースでの活躍に期待したい。

大会結果

<男子>
優勝: ヨリス・ドデー (フランス)
準優勝: シルバイン・アンドレ (フランス)
3位: ロメイン・マユー (フランス)

<女子>
優勝: 榊原 爽 (オーストラリア)
準優勝: マノン・ヴィンストラ (オランダ)
3位: ゾエ・クレーセン (スイス)
16位: 畠山 紗英 (ハタケヤマ・サエ) *準決勝敗退

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