フランス領ポリネシア・タヒチ島のチョープーポイントで行われたパリオリンピック。波の状況を考慮し8月5日(日本時間)に決勝が行われた。初日からフランス代表のジョアン・ディフェイが転倒した際に海底に打ち付けられて顔を負傷してしまったり、試合中に…

フランス領ポリネシア・タヒチ島のチョープーポイントで行われたパリオリンピック。波の状況を考慮し8月5日(日本時間)に決勝が行われた。

初日からフランス代表のジョアン・ディフェイが転倒した際に海底に打ち付けられて顔を負傷してしまったり、試合中にサーフボードが折れてしまうアクシデントに見舞われた。

パリオリンピック期間中のチョープーは覚醒した波が押し寄せ、チョープーの波に挑むことが選手にとってどれだけ危険と隣り合わせの中で戦っているのかと痛感した試合となった。

日本からはカノア五十嵐、コナー・カラサワ・オレアリー、稲葉玲王、松田詩野の4選手が代表として選出され大健闘をするもメダルには届かなかった。今回のパリ2024オリンピックを振り返る。

勇敢に攻め続けたNAMINORI JAPAN


ISA / Pablo Jimenez

前回の東京オリンピック銀メダルに輝いたカノア五十嵐はランウド3で敗退となり、予選から波乱の予感となった今大会。
その相手は東京オリンピックでメダル争いをしたブラジル代表のガブリエル・メディナ。
8-10ftの波が押し寄せるコンディションの中、終始リードしていたガブリエル・メディナが2本目に9.9を出し、合計17.4と素晴らしいスコアで東京オリンピックのリベンジを果たした。

そしてもう1人のCT選手、コナー・カラサワ・オレアリーはオーストラリア代表イーサン・ユーイングと対戦。先に8.0を出し終始試合をリード。バックアップとなる2本目のスコアを探していたが、その波を見つけることができずイーサン・ユーイングが後半に8. 67得点し逆転される。残り時間が迫る中、特大セットが入りコーチ、そして日本チームがコナーに合図を出す。反りたった10ft級の波に果敢に挑むもテイクオフで転倒してしまい逆転することができずラウンド3で敗退。

東京オリンピックが行われた千葉県一宮町がホームの稲葉玲王は、ラウンド3で2度世界チャンピオンを獲得しているブラジル代表のフィリペ・トレドと対戦。
お互いサーフボードが折れてしまい、チョープの波のパワーを感じるハードな戦いとなったが見事、稲葉玲王が勝利し準々決勝へ。ラウンド4ではペルー代表のアロンソ・コレアと対戦。稲葉玲王が素晴らしいチューブライディングを決め7.33のスコアを出し、田中樹コーチも次の波が来ることを願う中、バックアップの波を掴むことができず敗退。今大会、日本代表最高位5位となった。

オリンピック代表を決めてから足繁くパリオリンピック会場のチョープーに通い、練習してきた唯一の女子日本代表の松田詩野。
ラウンド1では東京オリンピック金メダリストのアメリカ代表カリッサムーアと同じヒートの中で8.33と高得点のチューブライディングを決め、2位でラウンド2へ。
ラウンド2では残り僅かの中で掴んだ最後の1本で7.67をスコアし大逆転を果たした。
ラウンド3は当初のスケジュールから波の状況を考慮し2日空いて試合が行われた。風が入り、今までとは異なった波の状況の中、果敢に攻めるものの惜しくもここで敗退となった。

CT選手が日本チームを引っ張る


ISA / Juani Gayol

結果を期待されていたCT選手のカノア五十嵐、コナー・カラサワ・オレアリーがラウンド3で敗退してしまい本人達も悔しい思いをしている中、勝ち上がっていた稲葉玲王と松田詩野のサポートに周り全力で日本チームとして戦っていた。
世界トップの選手がチームを引っ張るという状況は、勝ち上がっていた選手にとって心強いチームとなっていたに違いない。

男子金メダルはチョープーを知り尽くしたフランス代表カウリ・ヴァースト


ISA / Pablo Jimenez

決勝はフランス代表カウリ・ヴァーストとオーストラリア代表ジャック・ロビンソンのマッチアップ。カウリ・ヴァーストが1本目に9.5をスコアし2本目には8.17を出し、開始早々に合計17.67とし試合をリード。対するジャック・ロビンソンは1本目で7.87をスコアしここでリズム良く波に乗り巻き返して行きたいものの、後半に入り波が来なくなってしまい、ここで試合終了。
このまま地元フランス代表のカウリ・ヴァーストが金メダルを獲得した。

女子の金メダルはアメリカ代表キャロライン・マークス


ISA / Beatriz Ryder

女子の決勝はアメリカ代表キャロライン・マークスとブラジル代表タティアナ・ウェストン・ウェブが対戦。
試合序盤から波が来ない状況が続き後半へ。後半に入ったところでキャロライン・マークスが7.5をスコアし試合をリード、タティアナ・ウェストン・ウェブも最後まで諦めず追い上げるも、このままキャロライン・マークスが逃げ切り金メダルを獲得。
キャロライン・マークスは前回の東京オリンピックでは3位決定戦で日本代表の都筑有夢路に敗れメダルを逃し悔しい思いをしていたが、今大会、悲願の金メダルを獲得となった。

メダルを獲得することの難しさ


ISA / Pablo Jimenez

オリンピック競技として2回目の開催となったパリオリンピック。
東京オリンピックでメダルを獲得した選手で今大会出場していたのは日本代表のカノア五十嵐とアメリカ代表のカリッサ・ムーアの2名のみ。カノア五十嵐はラウンド3、カリッサ・ムーアは準々決勝で敗退と2大会連続メダルの夢は惜しくも叶わなかった。
どの競技も2大会連続でメダルを獲得することは非常に難しいことだが、サーフィンは大会が行われる会場によって波の特性が異なり、更にその日、自分の試合時間の中でも波の状況が変わるので相手以外にも波の状況に合わせる対応力を身につけることや、サーフボードの調整など考慮しなくてはいけない要素が多い。それがサーフィンの魅力でもあるが、連続して勝ち続けることの難しさを感じた。今回のパリオリンピックのメダリストが次回のロサンゼルスオリンピックでメダルを獲得することができるのかも注目していきたい。

チョープーの脅威的な波に果敢に挑戦する姿に感動した人は多いだろう。
サーフィンのシーズンは真っ只中。日本代表として出場していたカノア五十嵐は8月6日から8月11日までアメリカ合衆国カリフォルニア ハンティントンビーチで行われるLexus US Open of Surfingに出場。東京オリンピックに出場した大原洋人や銅メダリストの都筑有夢路も出場する。
サーフィンの大会は1年を通じて世界各国で開催されている。生配信で放送される大会も多く、シーズンは始まったばかり。ここから続く激戦にも注目したい。

パリ2024オリンピック結果


ISA / Pablo Franco

〈男子〉
優勝:カウリ・ヴァースト(フランス)
準優勝:ジャック・ロビンソン(オーストラリア)
第3位:ガブリエル・メディーナ(ブラジル)

5位:稲葉玲王(日本)
9位:カノア五十嵐 / コナー・カラサワ・オレアリー(日本)


ISA / Pablo Franco

〈女子〉
優勝:キャロライン・マークス(アメリカ)
準優勝:タティアナ・ウェストン・ウェブ(ブラジル)
第3位:ジョアン・ディフェイ(フランス)

9位:松田詩野(日本) 

執筆者:水野 亜彩子/ Asako Mizuno

幼少期からサーフィンを初め、当時女子最年少15歳でプロサーファーへ。国内外のツアーに参戦。日本代表として世界大会には4度出場。高校生の時にJPSA初優勝。21歳でJPSAツアーランキング2位に輝いた。現在はサーフィンの大会の解説者、選手時代にコンディショニングとして行っていたピラティスのインストラクターの資格を取得してもインストラクターとしても活動。サーフィンの魅力を発信し続けている。

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