パリ五輪ゴルフ競技・女子が、7日からル・ゴルフ・ナショナルで開催される。日本代表は現時点(8月5日時点)の世界ランキング10位の笹生優花と同18位の山下美夢有。笹生はフィリピン代表として出場した東京五輪に続き2度目の出場、山下は五輪初出場と…

パリ五輪ゴルフ競技・女子が、7日からル・ゴルフ・ナショナルで開催される。日本代表は現時点(8月5日時点)の世界ランキング10位の笹生優花と同18位の山下美夢有。

笹生はフィリピン代表として出場した東京五輪に続き2度目の出場、山下は五輪初出場となる。

1日から開催された男子は、松山英樹が激闘の末、日本男子ゴルフ初の銅メダルを獲得。この勢いに乗り、女子ゴルフもメダル獲得なるか、注目が集まる。

◆パリ五輪女子ゴルフの組み合わせが発表 笹生優花は日本時間午後6時44分、山下美夢有は同7時6分に初日スタート

■ポイントはバック9でスコアを伸ばせるか

メダル獲得に向けては各ラウンド後半9ホールのプレーがポイントになる。前半9ホールよりも後半9ホールの難易度が高い。特に17番ホールは18ホール中2番目、18番ホールは1番難しく、男子ゴルフのコース統計を見ると、前半9ホールが-1.050であるのに対して、後半9ホールは-0.110だ。

しかし、男子ゴルフのメダリスト3名の内2名は、前半9ホール以上に、後半9ホールでスコアを伸ばした。メダル獲得のためには、前半9ホールだけでなく、後半9ホールでもスコアを伸ばす必要があるのではないだろうか。

リオ五輪、東京五輪の日本女子ゴルフ成績

パリ五輪男子ゴルフ、メダリストの前後半比較

■崩れない山下美夢有

五輪の各国代表が決まる週に開催されたメジャー、全米女子プロゴルフ選手権で2位タイに入ったことで、逆転で世界ランキング日本勢2番手となり、五輪の出場資格を獲得した。

今季の山下は優勝が無いものの、メルセデスランキング2位。出場試合数が他の選手よりも少ない中での2位が、際立つ安定感を表している。

4月の富士フィルム・スタジオアリス女子オープンから9試合連続でトップ10を継続中。その9試合の中で8回トップ5に入っている。

14試合に出場し、トップ10が10回。19位が最低の成績。

そして、その安定感をメジャーでも発揮。シェブロン選手権が17位タイ、全米女子オープンが12位タイ、全米女子プロが2位タイ、エビアン選手権が39位タイとなった。

この好成績は、グリーン周りからのアプローチショットとバンカーショットの進化によるものが大きいようだ。それはJLPGAのスタッツを見るとわかる。

2022年は90.4835%、23年は90.0585%だったパーセーブ率が今季現時点では91.3450%、22年は70.1863%、2023年は69.3920%だったリカバリー率が今季現時点では75.1092%、22年は39.4737%、23年は47.4576%だったサンドセーブ率が今季現時点では53.6585%、となっている。

今季の山下は、昨季まで以上に‟崩れない”。

JLPGA選手名鑑2024のインタビューでは「目標はたくさんありますが、やはり五輪は特別です。メジャー挑戦とあわせて、五輪に出場して金メダルを狙うことも大きな目標です。表彰台の中央に立ちたいので、しっかり準備をするつもりです」と語った。

このコメントは昨年末のもの。代表入りがどうなるかまったくわからない状況であるにも関わらず、出場できるものとして五輪を見据えていたとも感じさせるところに、2年連続年間女王の気持ちの強さを感じる。

■はまれば強い笹生優花

今季2回目の全米女子オープン優勝を飾った笹生は、全米女子オープンを初制覇した年に開催された東京五輪ではフィリピン代表として出場して9位。

東京五輪後、日本国籍となった。

笹生は安定感に欠ける。今季のトップ10は全米女子オープンを含めて2回。メジャーは、シェブロン選手権が30位タイ、全米女子プロが68位、エビアン選手権が予選落ち。今季は全米女子オープン以外に目立った成績が無い。

笹生の魅力は爆発力。全米女子オープン最終日の、短いパー4の16番ホールで1オンを狙い、見事グリーンをとらえたショットが象徴するように、攻めがはまり出すと他を圧倒する。

SG:オフザティーは、2022年が3位、2023年が7位、今季現時点で9位。

笹生本来のティーショットの飛距離と精度が発揮されれば、多くのバーディチャンスを得られるはずだ。

また、会場のル・ゴルフ・ナショナルのラフへの対応もポイントになるが、‟長いラフ”が代名詞の全米女子オープンを2回制している笹生にとって、他の選手ほどラフはプレッシャーにならないかもしれない。

ドライバーショットの飛距離だけでなく、高弾道高スピンでピンを攻める球筋、ラフの対応など、パワーがあるからこそ実現できるプレーがあるが、それらの武器を笹生は持っている。

今週、フランスで‟はまる”ことを期待したい。

■日本初の金なるか

盤石の安定感を誇る山下は、東京五輪銅メダリストのリディア・コ(ニュージーランド)、マヤ・スターク(スウェーデン)と、初日、2日目をプレーする。

抜群の攻撃力を武器に戦う笹生は、メジャー2勝のミンジー・リー(オーストラリア)、米ツアー通算3勝のアタヤ・ティティクルとの組み合わせとなった。

今季すでに日本の女子選手はメジャーを2勝している。全米女子オープンを笹生が、エビアン選手権を古江彩佳が制した。

パリ五輪は今季の日本女子の存在感を一層際立たせる舞台になるかもしれない。

◆「“私だけの体験”に感謝」笹生優花はフィリピン→日本代表で狙うメダル獲り

◆たばこ大国フランスだけど…英国女子代表も五輪ルール順守「今週は吸わない」

◆【最新】各国の代表選手は今何位……パリ五輪前に最新ロレックスランキングをチェック

著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。