【連載】有村知恵のCHIE TALK(第1回・前編) JLPGAツアー通算14勝をあげ、米国ツアーに挑戦した経験もあるプロゴルファーの有村智恵の連載がスタート。2022年オフに、妊活に専念するためツアーの一時休養を発表し、現在は双子の男児の…

【連載】有村知恵のCHIE TALK(第1回・前編)

 JLPGAツアー通算14勝をあげ、米国ツアーに挑戦した経験もあるプロゴルファーの有村智恵の連載がスタート。2022年オフに、妊活に専念するためツアーの一時休養を発表し、現在は双子の男児の母として奮闘しながら、30歳以上の女性プロゴルファーのためのツアー外競技「LADY GO CUP」を主宰するなど精力的な活動も続けている。
 有村プロに、今季のJLPGAツアー前半戦を振り返ってもらった。



北海道 meiji カップで今季4勝目をあげた竹田麗央 photo by Getty Images

【2024年の女子ツアー前半戦を振り返って】

――有村プロは現在ツアーをお休みされていますが、今年のJLPGAツアーはご覧になっていますか?

 今もツアーは見ています。結果しか見られないこともありますけど、時間があれば配信されている試合は見ています。

――近年、4日間競技が増えてきています。選手にとってはどうですか?

 選手は大変だとは思います。ですが、(LPGAの)会長が4日間大会を増やしたかったのは、海外メジャーに行って活躍する日本人選手を増やしたいという想いもあったと思うんです。実際に今、海外メジャーで日本人選手が何人もトップ10入りをして、毎試合のように優勝争いをしているのは、そういう取り組みの賜物だと思います。

 ただ、特に今みたいな夏場に4日間の試合が続くんですよね。6月の末ぐらいから4日間競技の試合が増えてくるので、体力的にはかなりキツかったですね。

――やはり、3日間競技と4日間競技では選手の負担も違うものなんですね。

 違いますね。試合自体は4日間とはいっても、試合の前日(水曜日)にプロアマ戦があって、大会によってはその前の日に前夜祭もあります。前夜祭があると、火曜日の夕方4時ぐらいから準備をしなければいけないので、それまでに練習ラウンド終わらせる必要があります。そうなると、火曜日の朝、場合によっては月曜日から練習ラウンドをしなきゃいけないんです。日曜日に前の試合が終わって、試合会場への移動もあるので、練習ラウンドを回るのであれば、ほとんど休む暇もありません。休むか、練習する時間を取るかの二択になってきて、一昨年くらい前から周りの選手たちと「最近はいい準備ができて試合に挑むってことができなくなってきているよね」っていう話はしていました。

「また試合、また試合」みたいな感じで、この反省があるからこういう練習をして次の試合に臨もうと思っても、その準備の時間がないっていうのは増えてきていますね。

――外側からご覧になっていて、今年のJLPGAツアーはいかがですか?

 今年だけじゃなく、最近は選手のレベルがどんどん上がってきていて、私自身、昔との違いとして感じているのは、昔はショットかパットのどちらかの調子がよかったら、どちらかの調子が悪くてもそこそこの順位にいられたんです。今はショットもパットもどちらも調子がよくないと上位に行けなくて、どちらかの調子がちょっとでも悪かっただけで予選落ちします。優勝した翌週の試合で予選落ちしてしまう選手もいますけど、前週の優勝がマグレだったとかではなく、ちょっとパターが入らなかっただけで予選落ちする、そんなレベルの時代になってきています。

【みんなやめていたらいつでもやめられたのに(笑)】

――若手の台頭も目立ちますが、ベテランと若手では戦い方も変わりますか?

 私たちもベテランだからすべてを知っているとかではなく、今は若い選手たちがすごくいいゴルフを見せてくれるので、「自分たちもああいう風にゴルフするにはどうすればいいんだろう?」と思いながら、探り探りでやっています。

 若手とベテランで違いがあるかっていわれたら、いちばんの違いは練習量ですかね。"どれだけ球を打てる体力があるか"っていうところだと思います。ベテラン選手は、たくさん球を打っていればいい結果につながるかといえばそうじゃありません。どうしてもコンディショニング、ケアやリカバリーに割く時間が増えてくるので。

――全米女子オープンで優勝争いを演じた渋野日向子プロをはじめ、今年は黄金世代の活躍が目立ちます。

 そうですね、今年は"黄金世代復活の年"ですね。私もそうだったんですけど、同じ世代の選手が頑張っていると、自分の調子が悪くてもやっぱりあきらめられないんです。「あの子たちも頑張っているし、私も頑張らなきゃ」って。やめるきっかけもないというか。みんながみんなやめていたら、いつでもやめられるんですけど(笑)。

 黄金世代は人数も多いので、その分自分も頑張らなきゃという思いも強いんじゃないでしょうか。今年は(大里桃子選手、新垣比菜選手のように)復活した選手もたくさんいて、彼女たちが今のゴルフツアーをずっと引っ張っていてくれているんだろうな、と感じています。しかも、みんな可愛くて、みんないろんなキャラクターがあって、いろんな強さがあって。こんなに魅力的な選手が揃っている世代ってなかなかないよなって思うんです。

 だから今、ツアーを客観的に見ていると、誰を応援していいかわからないくらいです。「この子も可愛い、この子もいい子」みたいな(笑)。もう誰を選んでいいかわからないんです。

――有村プロの同期といえば......?

 私の場合、同期っていうくくりが難しいんですよ。私と同じ年のプロテスト合格者だと、今もツアーにいるのは笠りつ子選手くらいしかいないのかな。同級生っていうくくりだと、りつ子もそうだし、原江里菜選手もそうだし、穴江詩選手、吉田弓美子選手、服部真優選手とか、(現役ツアー選手が)結構多いですね。

――そうですね。同級生というイメージがあまりないかもしれません。

 私たちの時代は、プロデビューのタイミングがバラバラで、みんなが一気に出てきた世代じゃないので、同い年と思われてないんですよ。今は同い年の選手たちが毎年一気にプロテストを受けるので、「〇〇世代」って呼びやすいですよね。「ダイヤモンド世代」(※)の次は何世代なんだろう?(笑)。
※2003年度生まれの女子プロゴルファーの総称。主なプロに桑木志帆選手、神谷そら選手、竹田麗央選手、尾関彩美悠選手、川崎春花選手など

【有村プロから見た竹田麗央の強さ】

――ツアーの話に戻らせてもらうと、有村プロから見て今いちばん勢いのある選手は誰でしょうか。

 よくいるじゃないですか、「前からこの人に注目してたんだよね」とか言っている人(笑)。でも、私は本当に竹田麗央選手にずっと前から注目しています。(出身が同じ)熊本県というのもあって、一昨年のオフですかね、堀琴音選手と原江里菜選手が熊本で合宿をしていて、竹田麗央選手もたぶん熊本にいるからということで、麗央ちゃんも誘って4人で一緒にラウンドしたんです。一緒に回ってすごく魅力的だなと思ったのは、彼女のフェードボールです。あれだけのハイフェードで飛ばせる選手って日本にはなかなかいないんですよ。飛ばし屋といわれる選手は、強めのドローボールを打つ選手が多いんですけど、強めのドローボールって、ちょっと力が入っただけでも曲がりやすかったりする難しさがあるんです。ですが、彼女のハイフェードは曲がり具合も安定していて、ショットにあまり危うさがありません。これは小技がついてきたら相当すごいところまで行くぞって、なんかもうワクワクしちゃって。

 昨年は何度か勝利を逃すこともありましたけど、今年の(竹田選手が優勝争いをした)ヤマハ(ヤマハレディースオープン葛城)を見ていて、すごく悔しそうだな、と思った翌々週の熊本(KKT杯バンテリンレディスオープン)で優勝しました。彼女の場合、今年から花が開いたというよりは、勝つべくして勝った、もともとそれだけの実力があった選手なので、あとは海外メジャーでもすごい成績を残してほしいなって思っています。

(つづく)

【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院2年時に日本ジュニア12~14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。16年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。

YouTubeでインタビュー動画を公開中!!

https://youtu.be/4SQ3RoGwec0?si=pHZSN64SZS5jDWzM