盛り上がりを見せる、2024パリオリンピック。柔道をはじめ、卓球、バレー、フェンシングとさまざまな競技で日本人選手が活躍してきました。今回は、日本人選手の強さの秘訣について、メンタルの面から考えてみました。キーワードは「感謝」です。 *この…

盛り上がりを見せる、2024パリオリンピック。柔道をはじめ、卓球、バレー、フェンシングとさまざまな競技で日本人選手が活躍してきました。

今回は、日本人選手の強さの秘訣について、メンタルの面から考えてみました。キーワードは「感謝」です。 

*この記事は2024年08月06日に原稿を書いています。 

日本人選手が見せる「感謝の思い」に注目

競技が終了後、インタビューを受ける場面を思い出してみてください。ほとんどの選手が「感謝」を口にしていませんか?

チームメイトやお世話になっているスタッフ、さらに日本から届く声援などに対しての思いです。欧米の場合、神への感謝を述べる選手が多いです。

つねづね私は、「気持ちが分岐点」と考えています。これは、どのような気持ちを持つのか、ここが分岐点となり、行動も左右されるということです。

具体的には、次の2点にまとめることができます。 

プラスの気持ちのときには、自然とプラスの行動を取ることマイナスの気持ちのときには、どれほど頭で「○○をやろう」と思っても、結果的にマイナスの行動を取ってしまうこと

スポーツジムに通う場面で考えてみましょう。

楽しい、うれしいなどのプラスの気持ちのときは、自然とジムに足が向きます。多少厳しいトレーニングであっても、十分に耐えることができます。

しかし、つらい、悲しいなどのマイナスの気持ちを抱えているときは、結果的に休みがちになります。 

この「気持ちが分岐点」が理解できると、オリンピックという大舞台で良いパフォーマンスを発揮するためには、日頃の練習なども含め、プラスの気持ちでいることが大事ということがわかります。

そして、この感謝の思いを口にすることは、たとえマイナスの思いになっていたとしても、一瞬でプラスに切り替えることができる魔法の方法でもあります。

感謝の場面を思い出してください。自然とプラスの気持ちが溢れてきませんか? 

感謝をするときに覚えておきたい注意点

感謝の思いを持つことが、良いパフォーマンスには必要とお伝えしました。この際の注意点があります。 

(1)無理やりの感謝にしない 

マイナスの場面を思い出し、無理やり感謝することではありません。この場合、本人の本当の思いにフタをしてしまうことになり、かえって逆効果となります。

あくまでも、自然と感謝できる場面を思い出すことです。 

(2)「なぜ」ではなく「どうしたら」 と考える

ときどき「過去はマイナスの記憶ばかりで感謝できません」と語る方がいらっしゃいます。幼少期に辛い経験をお持ちの方が多いです。

ただ、この発言をする人の場合、「なぜ?」と、過去の原因を追究することが多いです。この発想だと、なかなか感謝の思いは出てきません。

それこそ、上記の(1)のように無理やり「感謝すべき」となると、かえって苦しくなってしまいます。 

そこで、「どうしたら?」と考えてみてはいかがでしょう。原因究明型の問いかけ「なぜ?」に対して、解決志向型の「どうしたら?」です。

「この先、どうしたら感謝できるのだろう?」と考えてみてください。案外、見落としていることにも気づけます。なぜならば「感謝」とは「当たり前」の中にもあるからです。

たとえば以下です。

食べられること呼吸ができること生活ができること 

日々の暮らしの中で、当然と思っていることの中に「おかげ様」と思えることはありませんか。 

(3)謝罪の場以外では「すみません」を多用しない 

「すみません」が口ぐせの方も多いです。もちろん、謝罪が求められる場面では、謝ることが大事です。ただそうではなく、感謝の表明として「すみません」を多用するケースです。

スポーツジムに通うAさんとBさん。二人とも、一日も休まずに通っています。ジムのトレーナーCさんが「頑張っていますね」と褒めてくれました。 

Aさんは「ありがとうございます。トレーナーのCさんはじめ、皆さんのおかげです」と応えます。Bさんは「すみません。私なんか、どうせダメですよね」と返事をしました。

どちらも内心、感謝の思いを伝えたと考えています。しかし、感謝の気持ちがトレーナーに伝わるのは、どちらですか?明らかにAさんですよね。

対するBさんは自己卑下とも言えるからです。 

●謙虚と自己卑下は異なる

近年、謙虚と自己卑下を混同しているケースを見かけます。

どちらも自分を下げる言葉遣いを用います。しかし、この違いは、自分の価値まで下げているかどうか、です。謙虚はあくまでも言葉遣いなんですね。

ところが自己卑下の場合は、自分の価値までも下げています。だから、「すみません」「自分なんか」「どうせ」などの言葉が多くなります。

ここでオリンピックの選手を思い出してみましょう。同じような発言をしているでしょうか? 

●「すみません」より「ありがとう」がおすすめ

自己卑下の解消は極めて簡単です。「ありがとう」と感謝した方が良い場面で、「すみません」を使わないこと、これだけです。 

「すみません」と口に出てしまった場面、「しまった!だから私はダメなんだ」と自己否定しないでくださいね。自己否定も卑下に通じます。

口にした際は、「普段の口ぐせが出た。これも私」と受け止めてみてください。 

自己肯定感、「低いとダメで、高めるべき」なのか【心理専門家が回答】

マイナスな気持ちを切り替えるワーク 

ここまで「感謝」がメンタルを強くすることをお伝えしてきました。それでも、なかなか引き摺ってしまうケースもあります。

そこで、「自分の気持ちを切り替えるワーク」を2つご紹介します。 

1.マイナスの思いを切り替えるワーク 

(1)マイナスの気持ちになる場面をひとつ思い出してください

(2)その際、自分の身体に意識を向けて、モヤモヤなどを感じる箇所を見つけてください。もっとも感じる箇所に手を当ててください

(3)手を当てた箇所、どのような感じがしますか? 感じる感覚の大きさ・重さなどです

(4)感じる感覚に名前を付けるとしたら、どのような名前がいいですか? 

(ここでは「モヤモヤ君」とします) 

(5)そのモヤモヤ君を、手のひらに取り出してください。難しい場合、「フゥ~」と息を吐き出し、その吐いた息を手のひらに溜めてください

(6)手のひらに乗っているモヤモヤ君を見てください。形・大きさ・色・重み・傷や凹みの有無・触れた感触などを確認してください

(7)モヤモヤ君に耳を当てて、彼が言いたいことなどをうかがってください

(8)モヤモヤ君がホッと安心できる言葉をかけてください。その際、手で優しくマッサージなどの仕草も添えてください

(9)モヤモヤ君の様子に変化はありましたか? もし、変化が見られない場合、上記の手順の(7)(8)を繰り返します 

(10)モヤモヤ君が、最初と較べて、傷や凹みがなくなり、色も白やピンクなどの優しい色に変り、重さが軽くなるなど、プラスの変化が見られたらOKです

(11)モヤモヤ君に「戻りたい箇所」を確認し、そこに戻してください

最初と同じ場合もあります。異なる場合もあります。また、外に居たいという場合もあります。モヤモヤ君の意向を尊重してください。 

次:もうひとつのワーク

2.感謝に気づける深呼吸

(1)深呼吸をします。息を吐くときは口から、ゆっくりと長めに吐きます。吸うときは鼻から、吐くときよりも短めに吸い込みます

(2)気持ちが穏やかになってきたら、手を自分の胸(肺のあたり)に当ててください。ゆっくりと動く、自分の肺の動きを感じ取ってください

(3)次に心臓です。心臓の辺りに手を当て、心臓の動きを感じてみましょう。さらに、自分の身体全体を循環する血液の流れも感じてください

(4)最後にお腹(丹田のあたり)に手を当ててください。あなたを取り巻く人やあなた自身の身体との繋がりを感じ取ってください

思いを胸に持ち続けることが大事

オリンピックで活躍する日本の選手から、自信に繋げるコツについて考えてきました。 

ポイントは「感謝」です。とってもシンプルな方法で、いつでも、どなたでもできます。ぜひ、取り組んでみてください。

最後に、ジョン・F・ケネディの言葉をご紹介します。 

「感謝の気持ちを表すときに忘れてはならないのは、最高の感謝とは、それを言葉にすることではなく、その気持ちを胸に生きていくことです」 (アメリカ合衆国第35代大統領 ジョン・F・ケネディ)

オリンピックは4年に一度です。勝った選手も負けた選手も、思いを胸に次回に臨むのでしょう。厳しい練習に耐えることができるのも、その思いです。

感謝とは「人生を前に進ませる大きなエネルギー」とも言えるのでしょう。 ガンバレ日本! 

著者プロフィール

佐藤城人(さとうしろと)

心理カウンセラー・心理セラピスト・気功師範。過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出会う。各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには摂食障害の悩みなど、これまで10年間で約5000名様の悩みをサポート。摂食障害の回復プログラムの中で「正しさよりも心地良いダイエット法」を提唱する。2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。現在はカウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。https://www.in-ct.org/

<Text:佐藤城人、Edit:編集部>